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  各論
§13  エネルギー
II  電力
1.  火主水従方式の進展と発送電技術体系の変化


電力需要の増加は,昭和30〜35年度年率13.2%,34,35両年度は対前年比17%以上と加速度的である。供給の側では34,35両年度には年平均水力95万kW,火力160万kW,計255万kWと実に大正年代全体の開発量に匹敵する設備が1年間で作り出された。水力対火力の認可最大出力の比率は35年度末56:43,36年度末には,遂に火力が優勢になつた。電源開発方式の火主水従への移行が進展し,現在は,水力と火力が伯仲する過渡期に入り,発送電技術体系全体に,過渡期特有の問題を課している。

図13-3 エネルギー流動図


(1) 水火力供給力構成の変化とピーク対策

水力では週間または月間調整のできる大調整池式および貯水池式の構成比率(水力の最大出力)が昭和30年度13%から昭和35年度30%へ増加し,他方火力では昭和36年度には出現していなかつた運転熱効率(発電端)35%以上の最新鋭発電所の構成比率は,昭和35年度に40%を越えた。このような発電設備構成の変貌を反映して,水火力供給力構成方式も大きく変つた。 図13-4 および 図13-5 をみよう。

昭和30年の豊水期には,流れ込み式水力が供給力の大勢を占め,火力はまだピーク用が主体であつた。設備利用率も,30年度では火力32.O%で,水力の71.1%の半分にも達していない。35年度になると火力は,豊水期においてすら水力を上まわるベース負荷を分担し,ピーク用の貯水池式水力および他社受電と融通の増大が目立つている。設備利用率は火力が62.5%,水力51.4%と5年前と逆転している。

図13-4 水火力供給力構成の変化

倒13-5 電気事業の発電設備利用率の推移

昭和30年度には1.5%程度あつた水力余剰は,最近ではほとんどなくなり,貯水池式水力の運用方法も,渇水期用の貯水に重点をおいた季節調整方式から週間または月調整方式に変るものが現われ,ピーク水力を大きくする傾向が目立つてきた。

昭和31〜34年度にわたる第4次水力調査は,火主水従へ転換した開発方針の下で,貯水池,調整池を主体として行なわれ,包蔵水力は,3,537万kWと算定された。発電技術のめざましい進歩と開発方式の変化を反映して,第1次調査の343万kWに比し,10倍以上となつたが,昭和34年末までの既開発1,140万kW,工事中320万kWを除けば,未開発は2,080万kWである。このうち経済性の大きいA級便益地点(金利7%,燃料費1,000kcal当り90銭と想定した時の新鋭火力を基準とした便益と,計画水力の経費を算定し,便益が経費を上まわる地点)は,77.4%である。最近の年間100万kWのペースで開発しても十数年で開発しつくしてしまう。昼間ピーク需要を貯水池式と大調整池式だけで賄うことは,次第に困難になつてきている。

熱効率40%級の建設が進み,火力が圧倒的に優位に立つ時期になれば,現在新鋭火力といわれているものも旧式になり,これをピーク用にまわすといつた手も打てる。

現在は過渡期であるだけに却つて難かしい。起動,停止が容易で,ピーク用に向くガスタービン発電は,西欧でも現在4万KWが最高で,10万kW級までユニツト容量を拡大するまでには,まだかなりの年月を要する。

したがつて,近い将来新たなピーク供給力として期待できるのは揚水式発電である。

揚水式発電所はすでに数箇所で稼動しているが,その多くは余剰水力利用による渇水期補給用の季節調整方式として計画され,大容量貯水池の存在を前提としている。しかし,水力余剰はほとんどなくなり,代りに火力余剰が発生するようになつてきた。機器の保安上および経済上からみて連続高利用率運転が望ましい再熱式新鋭火力が大部分を占めるに至つたからである。この火力余剰で揚水電力を賄う日調整方式発電所という別の観点から揚水式の経済性が,次第に再認識されてきた。さらに原子力発電が本格化すれば(昭和45年頃の見込)原子力発電所は常時運転を行なうから原子力余剰の発生は必至であり,一層揚水式発電の重要性が増すであろう。送電ロスを考えれば火力発電所の近接地点を選択する必要があるが,日調整式の場合は貯水池容量が少なくてすむから適地は多いであろう。

とくに塩害,発電設備に対する海水や海洋生物の影響等の問題が解決され海水利用が可能となれば,適地は大巾に増加する見込である。このような揚水式水力地点は,全国で数百カ所,数千万kWにものぼるといわれる。

揚水式水力地点の調査を主体に,河川の利用が不十分な既設発電所の改造,増設による再開発,急増が予想される工業用水用ダムとの総合開発といつた調査を合せて,早急に第5次調査に着手すべき段階にきている。
(2) 系統運用技術の向上と広域運営の強化

新鋭火力のユニツト容量は,現在運転中265MW,建設中375MWと逐年増大し,水力でも最大出力100MW級が陸続と誕生している。これに伴つて系統容量も飛躍的に増大している。送電容量は電圧のほぼ2乗に比例するから,系統容量の増大につれて送電々圧を高める必要性が生じる。昭和27年の関西電力新北陸幹線を皮切りに,とくに大規模水火力連けい線と大規模火力連げい送電線をかねた大需要集中地域を包囲する外輪線に27.5万Vの超高圧線が建設されてきたが,系統容量の拡大に対応してさらに電圧を高める必要性も予想され,欧州の40万Vとソ連の50万Vの中間の44万V電力系統実現のための研究が進められている。

系統規模の拡大に伴い,電力供給の経済性に大きな影響を持つ系統運用技術の向上が一段と重要になる。自動制御技術の発達が,電力系統の電圧,周波数,電力潮流,負荷配分等の分野にも普及し,迅速確実かつ経済的な運用を可能にしている。アーク炉,圧延用ロール等断続的な負荷変動によつて系統全体の電圧周波数変動を起す恐れのあるものが多くなる反面,産業においてはオートメーションを始めとする生産技術の高度化により制御装置の機能に悪影響を与えぬ様,周波数の規定値保持の要求は,ますます厳格になつてきている。系統全体の合理的観点から水火力の同時または個別制御方式の選択のできる中央制御方式の自動周波数制御装置(AFC)の設置によつて,始めてこの要求が満たされるようになり,現在では周波数変動は±0.15%以内に大体収まつている。また昭和32年8月九州電力に設置した経済負荷配分計算機により,需要に対応する発電所別の所要供給力を最経済的に自動的に計算し,発電所別に出力配分することが可能となつた。現在4社が設置,他の各社も試作または設置を計画中で,AFC装置,運転基準値指令装置等との結合運転による自動運転の実現も近い。

発電設備の大容量化は,また必然的に電力会社の枠を越える電力経済圏の拡大をもたらす。300MW級となれば,200億円近い設備費を要し,供給予備力を各電力会社が単独で持つのは不経済であり,また未開発大規模水力地点が,東北,中部電力管内に偏在しているからである。このため,昭和33年4月から全国をブロツク(北,東,中,西)とする広域運営が発足した。各ブロツク間を超高圧送電線で連けいして,電力融通の強化,供給予備力の共用電源開発の調整等次第に成果をあげてきている。たとえば,保有予備力の広域的運営によつて,39年度には,約130万kW増設に匹敵する効果がえられるものと期待され,全国的な完全な連けいにまで進めば,全国で必要な供給予備力は,電力会社単独の場合に比して,約40%まで節減されると試算されている。


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