ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
  各論
§13  エネルギー
I エネルギーをめぐる諸問題
2.  エネルギー供給構造の変貌

このような需要の急増と,その内容の変化は,供給構造に当然深刻な変貌をもたらす( 図13-1参照 )。
(1) 輸入依存度の増大

エネルギーの輸入依存度は石炭に換算して昭和31年度の20%から35年度には40%となり,所得倍増計画によれば,45年度には58.8%に達する見込みである。水力発電および国内炭については,伸びの鈍化ないし停滞が目立つている。

図13-1 一次エネルギー供給構成の推移

水力開発は,30年頃より本格的に登場した大規模な貯水池式水力を中心に,現在年間100万kWのペースに達し,未開発包蔵水力約2,000万kWを残しているものの,有利な地点から先に開発されてきたため,今後は開発地点の遠隔地化,水没補償の増加等により,開発すればする程発電コストが上昇する傾向にある。

また国内炭は,200億トンの埋蔵量を持ちながら,地理的な不利と産炭構造の欠陥から停滞を余儀なくされた。すなわち,1)昭和35年度全出炭の87%を占める九州,北海道の2大産炭地が,本州中央部の工業地帯から地理的に遠く離れ,室蘭―京浜間,若松―阪神間の輸送費は,それぞれ山元の生産費の約45%,約20%にも達している。

2)深度300m以上の切羽からの出炭が50%を占め,深部稼行段階に入つてきており,わが国特有の小規模多段斜坑方式では,自然条件の悪化を克服して,生産性の大巾向上による炭価切下げが望み難くなつた。

国内の石油,天然ガスの生産は大巾に伸びているが,地域的に偏在している上に,生産額が数十万KLと僅かである。したがつて,需要増加の大部分は,石油および原料炭の輸入で賄われた。
(2) 火力発電用燃料需要の急増がもたらす影響

昭和30,35両年度の事業用火力の燃料消費をみると,石炭は720万トンから1,660万トンに,重油は30万KLから500万KLにそれぞれ増加し,その全体に占める比率は,国内炭の17%から32%へ,全重油供給量の5%から32%へと著しく高まつた。石炭と重油量の割合は,発熱量換算で35年度63.4:36.6となつている。45年度の所要燃料は石炭換算(湿炭5,200kca1/kg)7,510万トンに達する見込であるが,国内一般炭の生産量が4,000万トン程度にすぎないから大量の輸入石油に依存することとなろう。火力用燃料の急増は,他のエネルギーの生産構造に次のような影響を及ぼす。

(a)石炭

(i)産炭地発電の増大 昭和36年3月末現在の火力発電設備を石炭重油混焼,重油専焼別に現在設備と工事着工中のものにわけてみると, 図13-2 に示すように,現状では石炭重油混焼が大部分を占め,これと対照的に,工事着工中のものは,62.0%が重油専焼,38.0%が石炭重油混焼となつている。これは昭和35年5月の重油ボイラー規制法の改正に際して,重油専焼火力の設置が例外的に認められることになり,以来本州中央部に着工された火力発電所が大部分重油専焼となつたためである。したがつて,今後は石炭専焼火力または,石炭重油混焼火力は,価格的に重油に対抗できる産炭地付近に建設されるものが主体となろう。 過去の火力用石炭の消費をみると,その量的増大と同時に平均カロリーの低下が著しい。昭和30年の5,741が35年には5,360となつている。とくに32年10月の常盤共同火力勿来発電所1号機の採用を嚆矢とする低品位炭を利用する大規模な事業用火力の進出が注目される。現在新宇部,新小倉両発電所が稼動し,ユニット容量も15万kWになり,さらにユニット22万kWの2発電所,が建設中である。3,500kcal/kg程度の石炭を使用し,昭和35年度には250万トンを消費しており,現在は水選ぼたや沈澱微粉等の未利用資源の活用が狙いであるが,消費量の急増によりこれのみでは不足するであろう。一般の電力用炭自体も他産業同石炭にくらべかなり低品位であり,低品位炭需要の拡大がこれに加わつて,選炭方式の転換を促進する主因の一つとなつている。すなわち,ジグによる混粒選炭方式から重液選炭機と細粉ジグまたは重選サイクロンとの組合せを主体とする整粒選炭方式への転換である。火力用炭の需要拡大はまた現在生産性向上の主役として開発が進められている立坑方式の有利性を増す要因ともなる。 何故なら,劣質炭層まで同時に採掘できるからである。
(ii)銘柄整理の促進 火力用炭という単一需要がきわめて大きなものに成長することによつて,貯炭,輸送,利用等の面でマイナス要因となつていた複雑な銘柄の整理が進んでいる。まだ十分解明されていない要因に支配されている原料炭は別として一般炭については,機械焚それも微粉炭燃焼の時代ともなれば,石炭の持味は余り問題でなく,カロリー中心に統一すべき時期にきている。各電力会社がそれぞれ基準カロリーを定め,これから余りはずれた石炭の引取を拒む傾向が強まつたため,積出港に混炭場を設け混炭によつて単一銘柄の大量化を図る大手炭鉱が増加している。中小炭鉱についても共同混炭場建設計画が進んでいる。また現在,全出炭の50%は本州中央部の工業地帯で消費されており,輸送費軽減のため石炭専用船の計画が進んでいる。37年度に5,200重量トン3隻の建造に着手,昭和38年頃から北海道―京浜間に就航,毎月3.1航海,室蘭―京浜間の輸送費を現在の約900円から650円に引下げうると試算されている。この専用船のピストン輸送を実現するには,銘柄整理によるロツト大型化が前提となる。
図13-2 電気事業用燃料種別火力発電設備

(b)石油

(i)コンビナートの形成 鉄-化学-エネルギーの総合コンビナートの一環として,製油所,石油化学工場に隣接して発電所を建設し,相互にパイプラインで連絡して発電所は重油を受け,電力,蒸気を供給し,コスト切下げをはかる計画が各地で進められている。
(ii) 油種別の生産構成と消費構成のアンバランスの増大 わが国の石油精製装置およびその技術体系は,全石油製品消費中に占める揮発油の比率が50%もある米国の市場構造を基盤として成立したものをそのまま輸入したものである。ところが日本の揮発油消費比率は,昭和31年度25.8%,35年度20.9%と小さい上に相対的に減少傾向にあり,しかも輸入原油の80%内外を占める中東原油が揮発性溜分25%前後であるため,揮発油需要の狭隘さと技術体系との間に大きな矛盾を生じている。火力用重油需要の拡大は,一層この矛盾を深めることになる。重質化傾向の是正という観点からも重質揮発油を原料とする石油化学工業の発展が望まれる。重油の米国からの輸入,原油または抜頭原油の一部使用も考慮されており,そして原油生だき試験については,35年6月東京電力鶴見発電所で実施され,成功している。 図13-3 は昭和35年におけるエネルギー供給量と消費量との関係を明らかにするエネルギー流動図である。

前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ