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  各論
§12  化学工業
IV  化学工業技術の今後の問題

この数年間の化学工業の目指したところは,無機部門に偏重した後進的な生産構造を脱却するとともに,基礎製品のコストダウンと供給量の増大をはかり,輸入防圧を推進することであつた。このためガス源転換と石油化学の育成を重点として,化学工業の体質改善と規模の拡大,総合コンビナートの編成等に非常な努力が傾けられた結果,これらの基礎化学製品の生産体制は急速に姿を改め,コストダウン,輸入防圧,も 図12-8 にみるとおり,品目によつてはかなりの程度達成されてきた。また技術面についても,技術輸出の件数が次第に増加していることから判断されるように,その水準はかなり高まつてきたといえるであろう。このことは積極的に外国技術を導入する一方,生産と研究開発の規模の拡大に努力を傾けてきた一応の成果と認められる。

しかしながら,石油化学は華々しく登場をしたとはいえ,その前途には解決の困難な問題が多数ひかえている。まずコストの低下に最も大きな影響を与えるとみられる生産規模については,前述のように経済的な規模が一応目標にされているとはいえ,現在の米国とわが国の生産能力を双方の最大工場のそれで比較した場合,エチレンで3倍,ポリエチレン4倍,スチレンモノマー7倍,アセトン8倍,メチルエチルケトン29倍等いずれもわが国をはるかに引離している。これは西欧諸国と比較した場合にも同様の傾向がみられるが,とくに原料事情を異にし,その生産設備の多くがすでに償却済であるといわれる米国との優劣は明白である。また拡大する生産設備の操業度の向上維持のためには国外市場の開拓が必要であるが,各国とも独占保護関税により国内市場を保護する一方,二重価格制によつて国際市場の浸食を行なう傾向が顕著であり,わが国の石油化学製品がこれに対抗するにはかなりの努力が必要であるとみられている。

とくに最近の化学製品市場への米国の安値攻勢は目立つているが,これに対抗する西欧の対抗策は,(1)アンチダンピング法の適用,(2)企業合同による集中大規模生産の確立,および(3)自己資本の会社,または合弁会社による海外進出があり,さらには国際カルテルの結成が考慮されているといわれる。

以上の諸点に加えて,とくにわが国の場合は技術的後進性を考慮に入れなければならない。

それはまず第1にわが国の石油化学の発足にあたつての必要な技術や機器類は多分に外国に依存しており,わが国の石油化学製品コストの3〜5%が導入技術の対価の支払いに当てられていることであり,第2に最近は海外からの技術の受入形態が特許実施権譲渡から合弁会社の形式によるものが多くなつてきていることである。

図12-8 石油化学製品の輸入比率

この対策としては独自の技術開発により,わが国の原料,市場条件に立脚した技術的特色を発揮する以外にないと考えられるが,このためには研究開発投資の飛躍的増大が強く望まれる。しかしながら米国および西欧諸国の巨大化学会社の企業規模に対するわが国の化学会社の企業規模を売上高で比較した場合,その最大のもので数倍から十数倍の開きがあり,さらに研究投資規模においては数十倍の開きとなり,現在の企業単位で対抗することは望むべくもない現状にある。とくに化学工業技術の開発と生産設備の建設に巨額の資金を必要とすることからも国際競争力の強化には生産の集中化が将来の必然的な方向であろう。このような意味からは,研究開発の面における最近の民間各社による高分子原料研究組合,高級アルコール研究組合の結成の動きは注目されてよい。

以上のような状況から外国技術依存の傾向は今後も続くと思われるが,諸外国の技術体系がそれぞれ自国の原料事情や製品の需給状況に立脚したものであることにかんがみ,それらの技術を導入するにあたつてもわが国の事情に応じた技術体系の確立を目指す必要があろう。


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