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  各論
§11  鉄鋼
III  鉄鋼業における酸素と真空の利用
2.  真空溶解法と真空脱ガス鋳造法

鋼を真空中で溶解し,大気からの汚染を防止しようとする着想が生まれたのは古く前世紀にさかのぼるが,工業的規模の生産に移されたのは1950年代に入つてからである。その後の進歩はめざましいものがあるが,わが国においても昭和31年頃より鉄鋼精錬における真空技術の開発が本格的にとりあげられ,特殊鋼をはじめとする高級鋼生産に利用されるに至つた。

現在工業的規模で行なわれている鉄鋼材料の真空溶解法は大別して,誘導式真空溶解法と真空アーク溶解法とがあり,真空中で脱ガス鋳造する方法としてはドルトムント法,ボフマ・ヘライン法,ヘラウス法,理研法等種々のものが実用されている。

誘導式真空溶解法は,溶解,精錬,鋳造を連続的に排気せられた真空容器中におかれた高周波炉で行ない,高度の脱ガス精錬を実施するものであつて,その工業的な適用は電磁気材料,高級耐食鋼,耐熱合金等高級材料全般にわたつている。しかし本法は容量的に限度があり,2,260kgが極限であろうといわれている。真空アーク溶解法はチタニウム,ジルコニウム等の高融点,活性金属の溶解手段として開発されたもので,これらの金属は高融点であること,ルツボ耐火材と反応することなどのため銅製の水冷ルツボ中で真空アーク溶解させるものである。この形式の炉は理論的には容量条件に限界がなく,現在10トン程度まで利用されている。

真空脱ガス鋳造法は取鍋から鋳型に溶鋼が落下する過程において脱ガスを行なおうとするもので,減圧条件下で,溶鋼が溶融状態におかれる時間が短時間のため拡散速度の大きい水素除去に重点がおかれている。大型の鋳鋼,鍛鋼用鋼塊,厚板材等に利用されている。

これら3方法の特性の比較を主として溶解条件の上から次討し, 表11-6 に掲げたが,一般的に評価すれば,成分に影響を受ける機械的性質の改善に関しては真空誘導法がすぐれているが,他方大型鋼塊が要求される場合には,偏析または組織に敏感な機械的性質の改善,断面の大きいビレツトの健全性,コスト等の面から真空アーク溶解法が有利であるといえよう。

表11-6 各種真空溶解・鋳造法の特性の比較

図11-10 は真空溶解法がいかに材料の品質向上に役立つているかを示す1例である。空気中の溶解しかできなかつた昭和27年頃迄はジエツト・エンジン・バケツト用耐熱合金の使用温度の最高許容限は1,500°F(820°C)を出なかつたが,昭和28年頃工業的な誘導式真空溶解法が導入されて以来その許容限は急速に上昇し,現在では1,700°F(930°C)をこえている。また,昭和36年12月末わが国に設備されている真空関係のものは,誘導法7基,アーク法6基,脱ガス鋳造法34基,である。なお,近時高速の電子流を金属に当て加熱溶解する電子ビーム融解炉が研究開発され,高融点特殊金属の精製や生産的規模でのNb,Be等の溶解鋳造に利用されようとしている。

図11-10 ジエツトエンジンバケツト用耐熱合金の最高使用温度


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