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  各論
§10  機械工業
II  機械工業における技術(電子及びオートメーションは電子技術参照)
3.  機械部品の各種の処理技術

機械の部品は,その使用条件により,十分な耐摩耗性,耐衝撃性,耐熱性,耐蝕性,その他疲労強度を必要とするが,これらの諸性質が適当な処理技術によつて付与され,機械の使用面における効果を左右するので,その技術の進歩および効果は重要である。これら処理技術のうちおもなものとして,表面硬化技術とライニングがあげられるが,これらの最近の動向をみると次のような状況である。
(1) 熱処理技術

(a)雰囲気熱処理技術:おもなものとしてガス浸炭法と液体浸炭法があげられる。 前者はアメリカ系の技術で従来からよく知られていたが,日本では最近大企業を中心に普及した技術である。大量処理に適し,処理操作の機械化が容易であるうえに,ガス雰囲気の調整をすれば,浸炭のみならず光輝焼入が可能で,しかも均一の浸炭が可能であるという優れた面がある。設備としては,オールケースタイプのものが多く,その規模が大であるが小量多種部品の処理を主とする中小企業向けにはホツト型炉が適していると考えられている。後者は欧州系の技術で,ソルトによる液体浸炭法が,余り大物でない熱処理とか,耐摩耗性が重要因子であるような部品に,きめの細い熱処理をする場合に使用されている。小規模作業も容易である特徴がある。その他固体浸炭は技術的特徴に欠けるので次第に減少してきているが,現在ではなおかなりの量がこれに依存している。
(b)高周波表面焼入:大量処理に適しているが,被処理部品の形状により誘導因子を取り替える必要がある。局部焼入,局部なましが可能であるので,その特殊性を生かして型鍛造・ブレーシングなどの工業部品の加工法に取り入れられている。代表的な処理例としては,車軸類・クランクシャフトその他複雑形状の部品の局部焼入れがあるが,これは他の方法に比してはるかに優れている。
(c)窒化法:従来の窒化法は,NH3の分解を利用したもので処理時間が長く,窒化専用鋼以外は適用が不可能に近かつたが,最近では広範囲の鋼材に適用でき処理時間も短いものが登場してきている。 温度も500°Cの低温で寸法変化も軽減してきている。外国ではソ連の高周波加熱による窒化法,ドイツの塩浴窒化法(軟窒化でタフトライドと呼ばれる)が注目されている。とくに後者は,精密耐耗性部品に著しい効果が認められている。
(d)研究成果が工業化された処理:健全な状態で焼入れされた被処理鋼を-70〜-190°Cの深冷槽に浸漬処理して短時間に表面層の硬度を上昇せしめる深冷処理,鋼の焼入れ後に55〜150°Cの恒温槽中に浸漬槽焼入して空冷する恒温処理が注目されている。とくに後者は,鋳鉄部品にも応用され,耐摩性を必要とするシリンダ内径の部品に効果がある。 (米国では量産処理を行なつている)

(2) 最近注目されている処理法
(a)浸硫処理:硫黄化合物を主体とした熱処理法で,1953年フランスで開発されたものである。これは鉄基の合金,鋳鉄にいちじるしい耐摩耗性と耐疲労性を与え,しかも潤滑油が不十分でも焼つきを生じないという特性をもつもので,最近わが国にも導入された。
(b)アトムロイ処理:技術・理論の詳細は不明であるが,1,000〜1,100°Cで超硬性炭化物の粉末を被処理物の表面に拡散させて著しい硬度を与える技術である。
(c)コルモノイ処理:オーステナイト系の金属を部品表面に溶着させるハード・フェイシングが一般機械にも採用されつつある。
(d)その他:ソ連で始められた放電硬化法,金属の浸透法(B,Be,W,V,Ti,Ta,Si等)は完全に工業化されていないが注目されている処理法である。また新焼入れ剤として水と油の中間の冷却速度のポリビニール・アルコール溶液は絶対に焼割れがないので注目されている。

(3) 有機物,無機物のライニング

機械部品の表面を腐食とか酸化に対して保護するために,異種材料を組合せて特殊な物理的性質をうることが広く化学工業用装置,航空機,原子炉材に利用されており,その技術もますます多種となつている。とくに合成樹脂を中心とした有機被覆法とガラス・セラミツクを中心とした無機質被覆法においてその進歩が著しい。

(a)有機被覆法:機械的強度を必要としない部分で強い薬液,低い温度に耐えるように行なう各種合成樹脂系塗料のコーチング,各種合成樹脂によるライニングが発展してきている。とくにポリエチレン,エポキシ樹脂,ナイロン等のプラスチツクス溶射:デイスパージヨン法による三弗化-塩化エチレン樹脂,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリクロリネーテツドエーテルのライニング;流動浸漬法によるポリエチレン,ナイロンのライニング;塩化ビニル・ゾルのコーチング;機械部品,精密工具の防湿,防錆に有効なストリツパブル・コーチング;ゾルコーチング(耐熱,不燃,耐薬品性の賦分)が注目されている。
(b)無機質被覆法:国産のグラスライニングも耐蝕性・機械的強度が向上して最近信用も高まつてきており,さらに鋳鉄・ノヂュラー鋳鉄への応用が研究されている。セラミツクコーチングも,高温での耐酸化性,耐熱性,化学耐蝕性,電気絶縁性をうるために内燃機関部品,ジエツトやロケット機内の燃焼管やノズルに応用され,電気冷蔵装置や特殊モータの材料としてセラミツク被覆線が広く利用されてきている。

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