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  各論
§9  繊維
I  繊維工業の動向とその技術的背景
3.  国際競争力

世界の工業製品総輸出額は,総生産の拡大にともなつて増大しているのに反し,繊維輸出は伸び悩んでおり,とくに先進国の繊維輸出額は減少の傾向にある。わが国の繊維工業は国際競争力が強く,昭和32年以来世界第1位の輸出国の地位を占めているが,決して例外的事情にあるものではなく,今後の輸出増大は至難であり,わが国産業構造高度化が急がれるゆえんともなつている。

現在わが国の繊維輸出の主力となつている綿製品,レーヨン製品についてその競争力の実態をみてみよう。競争力は,価格,品質および商品の信頼性で表わされるが,わが国の繊維輸出の主力は中級品であるから,競争力は主として価格の問題となる。高度加工品は別として,糸や織物は一般に機械設備さえ据付ければ比較的容易に製造可能であり,しかも原料代,労賃が製品の競争力を左右する大きな要素となつている。

表9-2 綿業労働装備率の国際比較

わが国の綿業は,アメリカ並みの高い労働装備率を持ち,生産設備面では世界的水準にある( 表9-2参照 )。先進国に対しては賃金水準が低いという優位性,後進国に対しては生産性の優位性が有利に働き,強い競争力を持つている( 表9-3参照 )。

先進国に対する上述の優位性は,原綿,綿糸,綿織物,縫製品と加工段階が増すごとに日本商品の価格の相対的な低下をもたらし競争力を強化させている。アメリカの対日輸入制限の動きが,シヤツ,ブラウス等加工度の高い製品程強いということは,この事実を雄弁に物語つている。

表9-3 日本,イギリス,アメリカにおける綿糸,スフ糸,人絹糸価格の比較

しかし,インド,パキスタン等の新興綿業国における原料安,低賃金は圧倒的な強みを持つものであり,すでに下級太番手製品では太刀打ちできない状態で,今後,これらの国における新鋭機械の採用,労働者の熟練による生産性向上の余地を考えれば,わが国綿業の競争力の将来は決して楽観を許さない。細番手化,樹脂加工,堅牢染等製品の高級化をはかることが大切である。

特に,染色,整理,仕上,加工等の技術の向上が鍵となる。

わが国のレーヨン製品の輸出は昭和31〜33年実績の平均をとると,織物,紡績糸が9割近くを占め,世界全体の輸出量のうち,スフ織物67%,人絹織物41%,スフ糸43%と圧倒的な地位を占めているが,スフ綿4%,人絹糸8.5%と原料輸出の比重は低い。低開発国のレーヨン紡績および織布工業の今後の発展を考えて,原料輸出に重点を指向すべきであろう。スフ綿,人絹糸の競争力を考える場合,最大の問題点は原料パルプの価格であり,原木価格の高いわが国は諸外国に比し不利をまぬがれなち。貿易自由化にともない安いパルプを輸入することはたしかに一つの解決法であるが,わが国のパルプ工業の将来を考えれば,簡単に割り切るわけにはいかない。

わが国の繊維工業は,現在,強い競争力を持つているが,その前途は非常にけわしい。

世界繊維貿易の大勢にしたがつて,わが国の繊維工業の指向する方向は,一面では高級化,高度化であり,他面では,低開発国の繊維工業の発展育成に即応してレーヨン,合成繊維原料または製品の輸出や技術輸出であろう。経済企画庁の長期展望作業では,将来の繊維輸出において,合成繊細は現在の9%程度から昭和40年には21%,昭和45年には25%,昭和50年にはを35%占めるものと想定している。

現在合成繊維は,各国とも国内需要がほとんどで,深刻な輸出競争を見るに至つていず,したがつて,内需価格だけで推論は無理であるが, 表9-4 の価格および加工段階での強さを考えればかなりの競争力を持つものといえよう。しかし予想される競争激化に備えるためには,加工部門はもちろん,基礎化学工業,機械装置工業等の関連工業の強化を図ることが必要である。


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