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  各論
§9  繊維
I  繊維工業の動向とその技術的背景
2.  繊維間の競合と補完

各種繊維にはそれぞれ長所と短所があり,すべての用途に向く万能繊維は今のところ考えられないが,用途によつてはかなり,代替性があるため,天然繊維対合成繊維,最近では合成繊維相互間で競合が激しくなつている。競合の激化は加工技術の著しい進歩を促し,天然繊維と合成繊維のおのおのに,相手の長所をとり入れた改良をもたらした。半面,異種繊維の混用によつて相互に補完する複合繊維化の方向も大きな特徴となつている。

たとえば,靴下ではナイロンの一方的勝利に終つたが,Yシヤツではアイロン不用で乾きが早いという特性を生かして急激に進出してきたテトロンが,結局綿あるいは麻との混紡という形で天然繊維との共存関係には入り,最近では,防皺加工をしたニユーコツトン製品による綿のまき返しがみられる。タイヤコードでは,10数年前に綿をしのいで進出した強力レーヨンが,ナイロンにとつて代られようとしている。

また合成繊維の出現は,繊維消費科学という新しい学問分野を誕生させた。綿,毛,麻,絹といつた天然繊維だけしかなかつた時代には,生産,使用の面でこれらを最大限に利用することに留意すれば良かつたが,多種多様の合成繊維が出現して,これらの繊維製品の性能をある程度コントロールする技術が可能になつてくると,ますます多様化してきた衣生活に適合した製品を創造することが必要になつてきた。

消費科学は,このような事態に対処するため,生産と消費の中間領域にあつて,繊維製品の実用上の問題点を生産段階にフイードバツクすることを使命として生れたもので,その研究が進めば生産面では繊維間の競合に補完と協調による解決の道を開き,消費面では合理的な衣生活を約束することになろう。


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