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  各論
§8  食品工業
III  食品研究の現状とその問題点
1.  凍結乾燥

乾燥は,食品貯蔵法としてはもつとも歴史が古い。通常の乾燥方法には,天日乾燥,人工乾燥があるが,いづれも食品の含有水分を蒸発させて乾燥するので食品の細胞,組織の脱水時に,蛋白質その他の変性がおこり,乾燥時には組織同志の収縮をおこすなど乾燥後はもはや復元性が失われてしまう。復元性について,各種化学薬品の添加による乾燥または浸漬による研究がおこなわれたが,蛋白質の特性保持については成功しなかつた。これが通常の乾燥法における最大の欠点とされていたのである。しかるに,最近の凍結乾燥食品は熱湯の注入によつて数分以内で完全に復元する。これは食品含有水分の蒸発を液状でおこなわず,水の昇華によることと,急速凍結によつて組織内の氷の結晶の微小化,変性の阻止がはかられ,復元性については,凍結によつて保存された状態にあるから乾燥による体積の減少がなく,多孔質で表面積が大きくなつていることによるのである。

現在,凍結ということでは,固著フイッシュ・スチック,脱水-寒天,凍り豆腐,熟成促進-鯨肉,鳥肉,醗酵促進-食パン,固定-凍結乾燥,濃縮-牛乳,果汁,といつた工合に,食品加工面で積極的に利用されている。さらに,すべての条件を満足させる乾燥食品をつくりあげるため,真空凍結乾燥法が登場し,現在,食品の各分野においてその適用が検討されている。
(1) 真空凍結乾燥

真空凍結乾燥法は,いままでは主に医学用の血液の乾燥に利用されており,-70〜-80°Cの超低温で急速に凍結したものを,高真空下でわずかに加熱して,氷を昇華させ,水分含量を一定限度以下にするものである。これが食品の乾燥にとり入れられ,工業的規模での生産が考慮されたのはごく最近のことで,現在はまだ完成された段階ではなく,むしろ発展途上にあるといえよう。

今日,品質の点,コストの点などでいまだ未解決の問題が多く残つているため,特殊な食品の場合を除いて早急に工業化することはむづかしい。とくに装置自身の進歩が,工業化に大きな役割を果すものと考えられる。装置の主要部は,加熱板を兼ねた載物棚,それを包む真空チャンバー,コンデンサ,真空ポンプーコンデンサ,真空ポンプはスチーム,エジエクターで置き換えられる場合もある-などから成立つている。その中で,加熱方法および温度コントロール,ならびに連続操作にかかわる問題が多く,その方式,装置についての改善,改良が進められている。
(2) 香気の復元性

食品は,種類を問わず独得の香気または臭気をもち,味覚におよぼす影響も大きい。香気の研究が進んだ結果,香気は少くも二種類のものによつて構成され霧散され易いものとされ難いものがあることが分つたが,まだその正体は明らかにされていない。最近の研究によれば,乾燥野菜,果実について,ある植物から抽出した物質を共存状態におき,失われた芳香の復元に成功し,この物質は同種の食品のみならず,他の野菜,果物にも有効であるといわれている。

香気のある食品を真空乾燥-凍結および室温も含めて-または濃縮すると,その香気,芳気は失われるか,稀薄化されてしまう。現在,凍結乾燥によつて,食品の復元性はえられたが,その芳香までも復元することはできないわけで,装置自身の改良により,芳香の損失を防ぐのはもちろんのこと,前記の抽出物質の種類や適用範囲をひろめて,香気の復元をはかる必要がある。
(3) でん粉のアルファー化

でん粉のアルファー化の原理は古くから知られていた。ただ,従来は,加水加熱して充分にアルファー化したでん粉を含有する食品を80°C以上の高温で乾燥するため,一部の食品だけにしか適用できなかつた。

この原理は,アルファーでん粉がベーター化しない状態で乾燥することにあるので,当然,凍結乾燥によれば,蛋白質とでん粉混合物の場合でも,広く適用できるようになり新しいアルファー化食品の出現を可能にした。


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