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  各論
§8  食品工業
I  技術進歩と食品工業

食品工業は,精糖業,でん粉製造業,製油業,製粉業,調味料製造業,菓子製造業などを含む極めて多彩な内容を持つているが,その原料の大部分を農業からの供給に仰ぎ,広義の農産物の加工産業であるといわれている。

この意味で,わが国の食品工業をみるとき,1)めざましい経済復興とともに食生活の改善向上は質,量ともに戦前をしのぐまでになつたこと。2)都会地におけるパン食の普及をはじめ食生活が洋風化してきて,牛乳,乳製品,畜肉製品等の食品が普及してきたこと。3)電気冷蔵庫や電気釜等の普及にみられる家庭電化の進展とともに,インスタント食品に代表されるような簡便な加工食品が好まれるようになつてきたことなどにより,ここ数年間における食品工業ののびは目覚ましく,その粗生産額は全産業の総生産額の約12%(昭和35年度実績)をしめるに至り,産業界における経済的な位置づけを高めるとともに,一方,停滞気味の農産物に対する新しい需要の道を開くものとして,今後に,大きな期待がかけられている。

上記のような食生活の向上,洋風化等の傾向に加えて,最近の食品の領域における技術の進歩は,食品工業伸長の基盤をつくるとともに,新しい方向づけをしめした。すなわち,食品の加工については,従来は加工食品の需要が限られており,かつ中小企業を主体とした農産物等の一次的加工にとどまつていたが,最近では,技術の進歩が,さらに二次,三次というようは高次の加工食品の実現を可能にした。その結果,食品加工の範囲および規模が拡大され,巨大な資本のもとで近代的設備による各種食品の大量生産化の方向に向つて,食品工業の体質改善がはかられ,常に新しい食品の創出を目指して研究が進められている。

他方,各種加工食品の貿易自由化が間近に迫つている(昭和37年10月の予定)。自由化の暁には,1)日本人の輸入品に対する崇拝観念から輸入量のかなりの増加が予想されること。2)わが国の食品工業は外国機械の導入によつてここまで伸長してきたのが実情で,資本力,企業規模,機械設備,調査研究などの点で欧米先進国の企業の方が格段に優勢であり,外国製品の積極的攻勢が予想されることなどにより,わが国の食品工業およびその原料供給者である農業にかなりの影響を与えるものと思われる。

次に 表8-1 により,わが国の食品工業の経営規模をみよう。精糖やグルタミン酸ソーダのように,製品の種類が少い上に化学工業に類似した業種では,装置産業的性格が強いために必然的に大企業の占有率が高い。またチューインガムやマカロニのように最近急速にのびた業種も,先進国で使用している巨大な生産能力を有する一貫製造設備を導入するために大規模経営が主体となる。これに反し,みそ,しよう油のような伝統的調味料については,各人の嗜好が極めて変化に富んでいるため,いわば多種少量生産に適し,中小企業の活躍する分野が大きい。

厚生省の国民栄養調査などによつてもあきらかなとおり,国民生活の向上と生活様式の変化によつて,食品工業の内部では業種により消長があらわれており,需要増加部門としては,食用油脂,牛乳製品,砂糖,果汁,菓子,マヨネーズ,トマト製品などがあげられ,停滞部門としては,みそ,しようゆ,ラムネ,サイダーなどがあげられている。また,食品工業の伸長にともなう原料供給部門としての農業のあり方については,農業基本問題調査会の答申にもあるとおり,果樹および畜産の伸長が大幅に見込まれており,他の農産物についても,加工の高次化とあいまつて需要を促進するものとして食品工業との結びつきを一層密接にすることが要請されている。

したがつて,食品加工の研究,改善を不断におこない数多い新製品たとえば各種調理品の缶びん詰,各種の粉末飲料,果汁類,包装食品などをつくり出し,これらに関連した新しい技術を探究する必要がある。

表8-1 食品工業の経営規模


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