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  各論
§7  水産業
II  水産技術の変化とその方向
3.  増養殖技術


今日,沿岸漁業の集約的な生産方式への誘導,内水面(河川,湖沼)における生産力の上昇をめざして,魚介類の増養殖が盛んになつてきているとはいえ,現在,魚類で卵から成体までの全過程を通じて養殖されているものは,淡水魚のみであり,海産魚については,はまち,まだい,くろだい,ふぐなど数種のものの蓄養または,稚魚からの養殖にとどまつている。

表7-2 水産増殖法の現状

漁場造成,種苗生産および育成からなる増養殖技術は,まだ技術的にも,体系的にも未確立の段階であり,今後はまず1)対象魚族の生理,生態,栄養,2)漁場の生成機構,8)増殖海面の環境管理,改善,4)種苗の採集,生産物の採捕などの機械化等の研究をすすめていく必要がある。( 表7-2参照 )
(1) 漁場造成技術

築磯,人工魚礁については,1m3〜1.5m3の角型コンクリートブロックが盛んに沈設されている。これは,各側面に窓があいており,魚のかぐれ場としてのみならず,餌料生物の供給とかに役立ち,産卵も行われ,産卵および幼魚の成育場ともなりうる。このため,ブロックの形状,構造および沈設場所などの研究がおこなわれている。投石については,海藻(こんぶ,わかめ,てんぐさなど)の増殖用に各地で実施され,あわび,なまこ,いせえびにも応用されてきている。防波柵については,海岸線に沿つて沖合にコンクリートパイルを約1m間隔にうえて柵をつくり,内側の海面を養殖漁場にするもので,最近各地沿岸の未利用海域の漁場造成に利用されている。
(2) 種苗生産技術

かき,あこやがい,ほたてがい,もがいなどは,授精後,幼虫は一定期間浮游してから沈着し,セメントまたは特殊な分泌竹(貝糸)を出して付着する。また食餌もプランクトンなので,人口採苗はすでに安定している。その他,のり,わかめは,高度な養殖形態が生れ,てんぐさ,ふのりも,天然岩盤に対する胞子付けの技術ができているので,こんごはむしろ非附着性の生粉へ対象を拡大することが問題となる。

今日,商品価値が高い,需要が多いという立場から種苗生産が強く要望されているものに,まだい,くろだい,ふぐ,すずき,かんぱち,ひらめなどの海産魚,いせえび,くるまえび,がざみなどの甲殻類および,あわび,あかがいなどの貝類がある。これらの人工孵化技術については,実験的に成功しており,( 表7-3参照 )また幼生餌料に関する研究の進展はめざましく珪藻,ミジンコをはじめ,クロレラ,無色鞭毛虫,絨毛虫,ブラインシュリンプ(一種の甲殻類)など各種の微細な餌料生物の大量培養が可能になつているが,孵化後,幼虫が外部に餌を求めるようになつてから,種苗として適当な大きさまで成長させる間,いかなる餌料を与えるかの問題が解明されておらず,依然として蓄養の域をでていない。最近餌料の基礎研究とあいまつて,くるまえびの養殖が企業的段階に入つた。すなわち,産卵期は4月中旬から10月にわたり,夜間0.26〜0.30mm径の卵を水中に放出する。

表7-3 海産魚の人工孵化と蓄養

産卵数は,親えびが17cmで約70万粒くらいで受精後13〜14時間でノープリアスとして孵化し,5回の脱皮をおこない,36〜37時間でゾエア期に入る。ゾエア期ではじめて摂餌し,約5日間に3回の脱皮をおこなつてミシス期となり,これも3回脱皮してポストラーバ期に入り,約14日で数回脱皮して体長100〜150mmの稚えびとなる。

そののちは1〜2日ごとに脱皮し,8回で体長1cmとなる。

6月に孵化したものは,秋には10cmに達し,満1年でおすは12cmめすは15cmとなり成熟する。この親えびの持つ熟卵を陸上のタンクに放卵させ,受精卵を容器に収容し,ゾエア期に進んだところで培養珪藻類を投与し,ミシス期以降,動物性餌料をとりはじめる段階で,ブラインシュリムプなどを与え,成長して体長が1cmぐらいになつたものを飼育池に移すのである。
(3) 育成技術

種苗を商品にまで育成する方法は,多くの魚類,貝類,甲殻類については池中養殖がおこなわれ,かき,あこやがい,のり,わかめなどについては,地盤に直接撒布し,中層で育成することから漸次,水の表面からの垂下式または網式養殖へと変つている。

施肥について,湖沼,溜池の場合には各種の肥料を投入して,天然飼料の増加をはかつている。海面でも,あさくさのり,てんぐさ,海人草などに尿素肥料を施肥し,無機成分の不足を補なつている。

育成物の浄化について,二枚貝とくにかきの場合には衛生的で清浄なことが要請されている。このため,海水に紫外線を照射し,海水中のバクテリアを死滅させた中に,かきを入れ,12〜24時間飼育して,大腸菌を減らしている。


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