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  各論
§5  農業
III  農業技術の新しい萠芽
1.  畜産ことに多頭羽飼育

最近畜産物の生産は,需要の急増に支えられて急テンポにふえており,昭和25〜27年から35年までに約2.4倍に増加している。畜産のなかでもことに乳用牛,豚,にわとりの増加はいちぢるしく, 表5-8 にみるように,昭和25年に比し昭和35年は,乳牛4倍,豚3倍,にわとり3倍に増大しており,所得倍増計画によれば45年度には,35年度実績の2.5倍になり,農業生産額中に占める構成比も15%から30%へと高まることが期待されている。

従来,わが国の家畜飼養は1〜2頭飼養が大部分で 表5-9 にみるように昭和32年で乳牛が3〜4頭飼養は6%,5頭以上は2%にすぎず,残り92%までは2頭以下の飼養農家である。豚,鶏等他の家畜家きんについても同様に,32年から35年にかけて若干大規模化してきている傾向がみられるが,なお少頭羽飼育が圧倒的に多い。このような零細規模生産がわが国の畜産の生産性の低い主因となつており,これを打開して畜産の発展をはかることが農政上の重要な課題である。

最近,全国各地の農村に多頭羽飼育の事例が出はじめ,これらのなかには共同経営の形態をとつている例も多い。

酪農については,昭和32年,千葉県の旭ヶ丘で7戸の農家が,それまで個別に飼つていた乳牛を出資し,さらに借入金で30頭の共同畜舎を建て,3人の管理人をおいて共同管理をはじめた。設備もクーラー,ミルカー等近代的設備を完備し,また,飼料は各人の畑から生産されるものを買上げる形をとつた。この結果,従来の少頭飼育に比べて生産量も高まり,生産された牛乳は衛生的で雑菌も少なく,かつ,大量に出荷されるので,乳価も高く買上げられる一方,経費も比較的安くすんだ。この方式は全国的に反響を呼び30〜50頭の集団酪農が各地にひろまつた。なお,酪農については,このように共同ではなくて個人でも5〜10頭程度の飼養者はふえる傾向にあり,従来の農家副業的酪農から専業酪農へ発展する傾向がみられる。

表5-9 家畜飼養頭羽数別にみた農家数の推移

集団養鶏について例をあげれば,昭和32年ほぼ時を同じくして神奈川県座間町および,島根県大東町に始まつた10万羽養鶏がある。

前者は農民7人が共同で始めた1ヶ所に集中管理する養鶏であり,後者はこれに対して町全体の農家が50〜数百羽程度の鶏を計画的に飼い,共同出荷を行ない,また共同施設設備の利用をはかつているものである。この他,養鶏でも部落単位で数千羽〜数万羽を共同管理する例がでてきている。しかしこれらは,いづれもまだ萠芽的段階で,ここ数年ようやく緒についたものにすぎない。

家畜,家きんを集団的に飼育する場合,解決しなくてはならない技術的問題がきわめて多い。たとえば,第1に育種の問題である。

すなわち飼養管理が標準化されるので,能力が平均化されて高く,強健な家畜,家きんでなくてはならない。策2に,家畜,家きんの保健衛生の問題がある。多頭羽飼育になるにしたがつて,疾病障害の多発の可能性が多くなり,その被害も高まる。しかも従来の1〜2頭飼育と異なつた疾病障害が問題になる。疾病障害の早期発見と予防,診断,治療技術の確立が重要である。第3に飼料自給基礎を強化し,自給率を高める必要があり,そのために草地造成改良,飼料作物の栽培改善などの諸技術が急速に高められなくてはならない。第4に飼養管理の機械化等合理化技術の確立が重要である。


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