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  各論
§5  農業
II  農業の曲り角と農業技術

以上,稲作を中心に最近の農業技術の発達を述べてきたが,農業技術の発達はひとり稲作のみならず,畑作,畜産,園芸作,養蚕についても同様である。最近農業生産指数は,逐年高まつているにもかかわらす,農業と他産業の生産性の較差および,農業従事者と他産業従事者の所得較差はともに年々増大する傾向にある。

このようなことから,農家人口の他産業への移動も急速にふえ,とくに,若年層が減少している。( 図5-2参照 )。このような結果,農村内に労力不足がみられ,ことに,農繁期の労力不足,農業雇傭労賃の高騰が目立つようになつた。

一方,農産物の需要の面では,生活水準向上の結果,畜産物,果実等の需要がふえ,逆に米麦をはじめとする澱粉質食糧の需要は停滞傾向にある。しかも,世界的な貿易の自由化のすう勢にともなつて,農業もようやく従来のような鎖国的温室的な環境の維持が困難になつてきた。すなわち,生産コスト引下げ,合理化により農畜産物価格を下げること,それと同時に,需要に見合つた畜産物,果実の増大等選択的拡大の方向が重要となつた。日本農業は所得の較差の増大,農業労働力の減少,需要の変化,貿易の自由化等の問題に直面して,大きく転換する時期を迎えたが,昭和36年,政府が農業基本法を制定し,所得政策,生産政策,構造政策を打ち出したのも,このような情勢の変化に適合するためである。

このような農業の転換期に直面して,農業技術自体の急速な改革が要請されている。しかも,農業技術の変化は,長期の日数を要するのが普通であるだけに,試験研究ならびに普及指導面の役割はとくに重要である。

図5-2 農業就業人口の推移

農業技術の発展の方向は,第1に大規模機械化農法の確立である。これは生産費低減,構造改善の観点から,きわめて重要な課題でありながら,わが国農業が,元来零細農業であり,また食糧の確保,反収の増加に重点がおかれていたため,大規模機械化農法については全く未経験の分野であり,機械研究,機械化のための育種,栽培法,大規模圃場の土地造成等の研究はむしろ今後の研究課題として残されている。

第2は,畜産,園芸等成長部門の技術の向上である。これらの部門の技術は相対的にきわめて遅れている。しかも,畜産についていえば,生産費引下げのために多頭羽飼育を推進しなくてはならないが,経験がほとんどなく,育種,保健衛生,飼料基礎の確立,飼料給与の合理化等,基本的問題から解決していかなくてはならない面が非常に多い。

果樹,そさいについても同様で,適地に集団的に能率のよい生産を行なうために適地判定技術,機械化等が急速に確立されなくてはならない。

第3に,貿易自由化に対処するため,畑作物についても技術の向上が必要で,ことに麦,大豆,てん菜,なたね,養蚕等が重要である。


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