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  各論
§5  農業
I  農業生産力の発展とその技術的要因
2.  化学的分野

化学的分野としては,肥料と農薬の発達が上げられる。

肥料については多肥化の傾向について先に述べたが,肥料そのものの改良開発の効果も大きい。すなわち鉄滓利用による珪酸石灰の開発や,尿素,塩安などの無硫酸根肥料の進歩と,普及,さらに,ホウソ,マンガン等微量要素肥料も続々と開発され,肥料の複合化等と相まつて施肥改善に大きく貢献した。また最近はPCP尿素に代表されるような農薬入り肥料も各種生産され,農家の労働節減に役立つている。これら新しい肥料の改良開発は農家の施肥技術の進歩や土壌調査法の発達と相まつて,生産力発達の大きな原因の一つとなつている。

つぎに農薬についていえば,戦後DDTが実用化されて以来,有機合成農薬の発達は毎年10種類前後の新農薬を産み出し,各種農薬の使用量は,逐年増加の一途をたどつている。農薬の生産量を 表5-6 に掲げるが,この表にみるように,昭和35年度は31年度に比して相当大幅に増加している。

病虫害として代表的なものは,東日本におけるイモチ病,西日本におけるメイ虫がある。戦前までは誘蛾灯をのぞいてメイ虫駆除の方法はほとんどなかつたが,昭和23年にDDT,やや遅れてBHCが使われ,昭和27年にはパラチオン剤が実用化の段階に入り,爆発的に普及をみ,これが,西南暖地の水稲早期栽培を可能にするとともに,西日本の稲作を安定化するのに重要な役割を演じた。つぎに,東日本のイモチ病についても昭和27年有機水銀粉剤の実用化によつて,防除可能となり,これもまたいちぢるしくひろまつた。

その他の虫害たとえばうんか,よこばいなどもBHC剤やパラチオン剤などの出現によつて,おおむね防除が可能となつてきている。

表5-6 農薬種類別生産の消長

これら農薬の進歩とともに,防除機具の発達も見逃せない。戦後,DDTの出現と同時に散粉機が出現したが,27年になるとミスト機が出て薬剤の濃厚液を微細粒子として散布することを可能にし,薬剤散布をいちぢるしく容易化した。さらに昭和33年からヘリコプタ,一による有機水銀粉剤散布が行なわれるようになり,その成績もよく,普及率も年々増大している。これら防除機具の発達は農薬の効果を飛躍的に高めると同時に,労力節減に大きく寄与している。

つぎに最近の稲作の労力節約に大きく貢献している除草剤については昭和25年に2.4-Dが実用化され,大きく普及をみた。これは,従来の夏の炎天下の草取り労働から農民を解放する福音であつた。その後しばらくはこの2.4-DとMCPが除草剤の中心であつたが,この両者では水稲の厄介な雑草であるノビエが防除できない欠点をもつていた。昭和34年からPCPが,ノビエ防止の除草剤として実用化され,現在急速な普及段階に入つている。この2.4-DとPCPの併用により,除草は全く除草剤で行なえるようになつたので,その結果,従来除草の点で難点があつた水稲直播栽培が後述する労力不足対策として再び脚光を浴び,将来が期待されている。

以上のほか,水温上昇剤OED,苗代におけるビニール,ポリエチレン利用等がある。

OEDは高級アルコールを原料とした薬剤で。

水田の水面に展開して水面蒸発を抑制し,水温を上昇させるもので,昭和34年度から普及が図られている。

なお,畑作においても,化学的分野の農業への寄与は大きく,たとえば,最近の土壌病害虫の防除とか,ジベレリンの利用等がさかんに行なわれている。

表5-7 主要動力農機具の普及状況


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