ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
  各論
§5  農業
I  農業生産力の発展とその技術的要因
1.  生物学的分野

生産力の飛躍的向上の要因としてはまず,保温苗代等の苗代方式の改善と,それにともなう早植えや早期栽培がもたらした効果が大きい。昔から「苗半作」といわれて,健苗育成が奨励されてきたが,戦後ぱ,長野県の農民技術から発達した保温折衷苗代を軸とする早期栽培および早植え栽培法が完成し,急速に普及をみた。保温折衷苗代は,最近,ビニールやポリエチレンの発達普及にともない,保温畑苗代,室内育苗,電熱育苗などの新しい方向に発達しており,現在の普及状況は, 表5-2 のとおりである。

保温折衷苗代は,まづ東日本に普及し,稲作を早植え化した。 表5-3 にみるように,田植期は,6〜26日も早くなり,これによつて増収に役立つたのみならず東日本特有の冷害を防止し生産の安定に貢献した。

ついで,西日本では,台風災害回避を目的として保温折衷苗代を基幹とした水稲早期栽培技術の確立が急がれたが,昭和28年頃にその技術も完成し,東日本型の早中性の品種を用いて急速に普及をみた。西南暖地水稲早期栽培と呼ばれるものがそれで,この技術は,後述の農薬によるメイ虫駆除が可能になつたことも普及の一助となり,秋落ち,登熟期の不良環境回避,台風災害回避等増収に大きな力になつている。

表5-2 水稲保護苗代種類別実施面積

以上のような早植え,早期栽培技術とならんで,最近の栽培技術面において,特に注日すべきは,密植多肥化の傾向である。多肥の傾向は, 表5-4 に示すように,昭和35年の無機質肥料は30年に比し,全国平均で窒素16%,燐酸28%,加里29%の増加となつている。ことに,東日本における燐酸肥料,加里肥料の増加は,漏水過多で冷害の危険のある地帯で安全多収な水稲栽培を可能にし,耐冷性品種の普及と相まつて冷害防止に役立ち,それがまた,窒素肥料の増施を可能にしている。しかも,このような多肥化の傾向は,最近土壌調査法の確立,普及に基づく合理的施肥法と病虫害とくにイモチ病の防除技術の発達によつて支えられていることも特筆すべきであろう。

表5-3 水稲播種期,田植期の変化

表5-4 昭和30年に対する35年の水稲の無機質肥料の増加割合

表5-5 昭和30年に対する35年の水稲坪当株数

次に,密植の傾向は 表5-5 に示すように,水稲坪当株数は,昭和35年は30年に比較して,全国平均で6%増になつている。以上のような密植,多肥化の傾向は,耐肥性品種の育成,普及と相まつて,増収の大ぎな原因となつている。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ