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  各論
§4  電子技術
II  電子技術の利用分野とその現状
3.  オートメーション技術



(1) オートメーションの定義

オートメーションの定義については,昭和29年度の電気学会と日本機械学会との合同委員会の名で次のように発表されている。

「物体,プロセス,機械等のある量を外から与えられる目標値と一致させるために,その量を検出して目標と比較し,それに応じて訂正動作を自動的に行なわせること」この定義でも分るように,オートメーションは自動的に行なわれるフイードバツク制御のようなものとして,理論的,実際的に発達してきた。

わが国のオートメーションは,鉄鋼,石油,肥料,薬品その他のプロセス工業にまず採用され,炉,反応塔等のような連続作業中のプロセス装置が主な制御対象であつた。そのため,制御の種類としては定値制御が多く,フイードバツク制御としては普通調節形が採用されていたので,前述の定義は適切であつた。しかるに,最近の進歩によると,連続作業中のプロセスの制御ばかりでなく,プロセスの運転開始停止またはシーケンス制御等のオートメーション化が大きな課題となり,オートメーション技術としては必ずフイードバツク技術を含んでいるとは限らなくなつてきた。したがつて前述の定義をさらに改訂せねばならない現況にある。

それでは,オートメーションとは何か,それは制御装置によつて自動的に行なわれる制御であり,制御とはある対象となるものがあつてこれに所要の操作を加え,ある目的に適合させることであるというように考えられている。

オートメーションの発達とともに,制御機構は複雑化し,その応答は高速化を要求されるようになつてきた。とくに,最近の傾向として,制御系の中に大きな情報処理機構が包含きれるに及んで,制御用機器の電子化は避くべからざる方向に進んでおり,将来,電子的制御機器が制御系の頭脳部や神経部をつかさどる機器としてますます広く活用されるようになるであろう。
(2) オートメーションの分類

オートメーションは第2次産業革命をもたらしつつあるといわれている。

それは,第1次産業革命が人間の筋肉エネルギーによる労働を他のエネルギーによつて代行したという意味に対応して,人間の頭脳活動を機械に代行せしめるということからきている。現在,オートメーションの3類型として次のものが挙げられている。
(a) メカニカル,オートメーション

これはデトロイト・オートメーションともいわれ,オートメーションとして最も歴史が古い。主として機械加工等で予め与えられた指示にしたがい,連続的に加工するものである。加工の結果には無関係に動作するので,一種の高度の自動化であり,前述の学会によるオートメーションの定義のみでは包括されないオートメーションである。
(b) プロセス・オートメーション

これは化学工業において創始され,工業計器を用いて製品や製造工程における圧力,温度,流量等を連続的に測定し,それを行程の前段階に戻して(これをフイードバツクという。)コントロールするもので,オートメーション系のモデルとして,よく例に挙げられる基本的なものである。
(c) ビジネス・オートメーション

事務作業を対象とし,原理的にはプロセスオートメーションと同じであるが,その測定に対応するデータの収集に続いて,そのデータを電子計算機で処理し,その結果に基いて事務をコントロールするものである。最近,経営事務の合理化のため各産業に急速に普及してきた。

以上がオートメーションの分類であるが,これに用いられる電子技術について電子的制御機器の傾向を中心に最近の動向を述べよう。
(3) オートメーション技術の動向

オートメーションに用いられる電子機器を大別すると,演算装置,操作装置,検出変換装置,増巾装置等に分けられる。

演算装置には機構上デイジタル型とアナログ型とある。いずれも一長一短があるが,元来,被検出量がデイジタル量であることは稀で,一般に制御用変換機器の入力信号(制御量)はアナログ量である。したがつてこれをデイジタルに検出するにはアナログ・デイジタル変換器(A/D変換器)を用いてデイジタル化しなければならない。AID変換器には種々の形式があるが帰還型A/D変換器のようにパルス回路を多く含むものではデイジタル計算機に近い性質を示し,サーボ型のA/D変換器や周波数型の速度発電機のようなものではアナログ計算機に近い性質がある。電子技術を利用した前者の方式は動作が早いので高速度変換器に適しているが,桁数は基準電圧で定まり精度0.01%位が限界である。現在までに国産されているものは,精度0.1%で変換速度100μS位であり,米国ではこれより2桁も早いものができている。

操作機器については,電気的サーボモータとして交流サーボモータ,平滑電機子形サーボモータ,プリントモータ等の直流サーボモーターおよびステシプモータ等がある。このうち,平滑電機子形サーボモータはわが国で考案された直流サーボモータで,その形状は電機子が極端に細長くなつている。いわゆるペンシルモータにするため電機子は溝を切らず直接導体を鉄心の上に並べてプラスチツクで被覆してある。そのため,1)機械的慣性が極小であること。

2)回転子回路の自己インダクタンスが小さくなり,リアクタンス電圧が下がるので整理が容易なこと,3)最大トルクが大きいこと,4)大形サーボモーターが作り易いこと等の長所がある。次にプリントモータはフランスSEA社の考案になる板状回転子モータで,電機子巻線はプリント配線であり,回転子に鉄を用いないので軽く,またインダクタンス分が少ないので整流も容易である。しかも,冷却性が良いので大電流が流せるから応答が早い。

ステツプモータはパルスで制御するサーボ系のモータで近年開発された。デイジタルサーボには必須の機器で,動作はパルスが来るごとに1ステツプずつ回転する。

わが国で試作されたものは1,000パルス1,000/秒まで応答し,出力11W,1,OOOPPSに対して起動トルク1,000gcmのものが出ている。

検出変換装置は,温度,流量,圧力,液面,相対温度,濃度等を,電圧,電流,インピーダンス等に変換するもので,今後電子技術の導入により大きぐ発展すると予想されている。今後の問題として,その変換レンジに対する直線性,変換時間の短縮,高温に対する問題および出力の低いものに対する安定な合理的直流増巾器の開発,小型化等の開発研究が望まれる。また超音波による流速計,流量計,濃度計および半導体の活用等が今後考慮されるべきであろう。

さらに制御用機器全般を通じて,機器の小型化が要求されている。ただ,制御用機器は何よりも制御に必要な諸要求が優先するので,小型化だけを追及することは許されないし,場合によつてはある寸法以上に小型化すると見にくかつたりして却つて困る場合もある。しかし一般に小型化すれぱ所要電力は減り,回転体の慣性による時定数も小さくなるので小型化の傾向は今後も続くであろう。
(4) 電子計測技術の利点

ここで,オートメーションにとつて欠くことのできない電子計測技術についてのべよう。オートメーションに使用される検出変換装置および増巾装置等を含めて電子計測工業は,比較的中小企業的性格を有し,従来は余り需要がなかつた関係で,わが国ではその技術の開発はかなり立ち遅れている。しかし,ここ数年の間電子技術の発達と相まつて,技術および工業面で急激な発展をとげつつある。電子計測技術は電子技術の主要な機能の一つである増巾器能の応用を中心とする応用分野である。

その特長は,次のとおりである。

(a)微少量にも感応し,安定に高い増巾度をうることができる。たとえば電流計についてみると,直流検流計では10-11アンペアが限度であるが,増巾器を使用すれば,10-17アンペア程度まで測定できる上に,安定性もよい。
(b)測定値の表示方式としては,従来の指針式はもとより,目的によつて便利なように自由にできる。たとえばブラウン管オッシログラフによる波形測定値を数字で表示する測定器である。
(c)測定結果を直接記録したり,直接電気符号として遠方に伝達するのに極めて便利である。この機能は電子計測特有の遠隔測定(テレメータ)として広く応用されている。
(d)電子的な測定装置においては時定数が非常に小さいため迅速な測定ができる。 これらの特長のため物理的あるいは化学的な量の測定に際しては,電気的な量に変換する変換器が必要であるにもかかわらず,あらゆる分野の計測に用いられるようになつた。

(5) 電子計測技術の最近の傾向

電気測定器の最近の主要な傾向をつぎにのべる。
(a) 測定の高周波化

高周波の測定は従来から真空管電圧計が用いられているが,最近半導体ダイオードを用いて,周波数を高域にのばし,微小電圧測定を可能にしたものが完成し,1,OOOMC以上でmV程度の測定が可能になつている。そのほか原子核実験用の測定器には10-19秒程度のパルスが使用されている。
(b) 新しい方式の測定器の実用化

電流測定は従来抵抗の両端の電圧降下により測定されるのが普通であつたが,トランジスタ回路などの低インピーダンス回路では回路にできるだけ抵抗を挿入しないで測定しなければならない。このために,従来商用電流の測定に用いられていたクリツプオン形(洗濯ばさみ形)電流計と同原理の電流計が実用化された。直流用は0.1mAまで読みとれ,交流用は26C〜20MC程度で0.5mA程度まで測定できる。

次にあげられるのは,測定値をデイジタル化して数字で表示する方式で,指針形計器にくらべて桁数が多く,しかも個人差のない精密な測定ができる。これはテレメー夕やデータ処理などにも便利なため用途が広い。

以上のほかオッシロスコープを高度化したサンプリングオッシロスコープやシンクロスコープなどが商品化されて威力を発揮している。
(6) 電気測定器工業の現状

次に電気測定器工業の現状をみよう。まずその生産額は通産省の調査によると,昭和33年約49億円,34年約68億円,35年約103億円となつており前年対比は34年が約40%,さらに35年は約50%と著しいのびを示している。また電気測定器の輸出入については, 表4-3 のとおりである。

表4-3 電気測定器の輸出入実績

生産額の著しい伸びにもかかわらず輸入は増大し,昭和35年は生産額の約1割の輸入をみている。これは需要の量的な増加もさることながら,電子機器の高級化にともない,高級な測定器を必要とするようになり,高級測定器の輸入が増加していることは当然としても,信号発生器,オッシロスコープ,シンクロスコープ等の普通の測定器の輸入量が増加している事実に留意する必要がある。

今後,わが国の測定器に関する技術の高度化とともに,国産測定器に対する信頼を高めることが望まれる。
(7) オートメーションと電子計算機

わが国のオートメーション機器の生産額および輸出入額をそれぞれ 表4-4 および 表4-5 に示す。

表4-4 オートメーション機器の生産実績

これらの表からみると,検出変換装置,計測器等を含めた工業計器については,昭和34年の生産額に比して35年は約2倍と著しいのびをみせ,また,輸入については35年には34年に比して約2割の減少をみせており,わが国のオートメーション化の進歩に明るい見透しを与えている。

これに対して 表4-5 で,電子計算機の輸出入実績をみると,昭和34年までオートメーション機器といえば工業計器のみで電子計算機はほとんど外国に依存しており,昭和35年に輸入額の約1/4がようやく生産できるようになつた状況である。わが国の計算機技術がIBMとの提携問題も解決して一応のレベルにありながら,実用機の少ないことにより資料不足に悩んでいる実情から考えて,国産機の優先使用が強く望まれる。

表4-5 計算機およびオートメーシヨン機器の輸出入実績


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