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  各論
§4  電子技術
II  電子技術の利用分野とその現状
2.  電子計算機

電子計算機は電子技術の偉大な所産である。近年発達をみたオートメーシヨンには電子計算機の進歩が最も必要であり,さらに調査研究用,事務用,制御用等ますますその応用分野を拡大しつつある。電子計算機技術は,従来の機械技術が第1次産業革命以来,人間の筋肉の代りを主として果してきたのに対して,人間の頭脳に代るべきものを生み出す技術であり,将来の新しい電子技術は,この新分野に突入した電子計算機を一つの中心として,総合的に発展するものと考えられる。電子計算機の国産化と性能向上を,国が強力に推進することを必要とする理由もここにある。

この技術分野を大別すると,アナログ型とディジタル型に分類できる。ここではその両者および最近オートメーションに取入れられている制御用電子計算機の技術について,わが国の現状を述べよう。
(1) アナログ計算機

アナログ計算機における最近の著しい成果は自動プログラミング方式およびハイブリツド方式の完成である。前者はアナログ計算機の操作をあらかじめ用意されたプログラムにしたがつて行なわせ,判断機構により所望の解を自動的にえられるようにしたもので,取扱の簡便さと計算機の信頼性を完壁なものとした。後者はアナログ計算機とデイジタル計算機の長所をそれぞれ取入れて,一段と優れた計算機を構成するものであり,電力系統の経済負荷配分計算等に使用され始めている。
(2) デイジタル計算機

諸外国で次々と開発される電子計算機に刺激されて,国産電子計算機の種類も1961年には約30種に増加した。とくに最近の傾向は小型電子計算機の出現である。これは従来の計算機が大きな空間を必要としたのに対し,座右において手軽に扱うことができる。一方,すでに設置されている国鉄の座席予約装置も特殊目的の計算機とみなしうるもので,1960年開催のアジア鉄道会議に出席したアジア諸国の人々の注目の的となつた。また,各メ一カーでも計算機本体は,もちろん,その付属機器であるカード入出力装置,高速度印刷機および磁気テープ記憶装置の性能向上に力を注いでおり,生産が増強されている。プログラミングでは,自動プログラミングのためのコンパイラの開発が行なわれ,間もなく実用の段階にはいるものと思われる。
(3) 制御用計算機

オートメーションにおける電子計算機の応用は年々盛んになり,プロセス,計測,制御等にデイジタル計算機が使われるようになつている。この用途に使用されるデイジタル計算機は高い信頼度を持つと同時に,アナログ量を処理できる機能が必要であり,そのような要求に応ずる計算機が各社で研究製作されている。一方,計算機とその対象であるプラントとの間の情報交換の技術が進歩して,各種の安定度の高いアナログデイジタル変換器,デイジタルアナログ変換器が多数登場している。

発電所,化学プラント,実験装置等の計測値処理用として最近よく用いられているデータロガーは,次第にその演算能力に対する要求が高度になるにつれて,そのシステム内にデイジタル計算機を含むものが多くなつた。また,このような計算機の計算給果に基き,プロセスの操作弁を駆動して最適値制御を行なう計算機制御,の研究も盛んであり,この目的でデイジタル計算機の他に従来用いられているアナログ計算機の信頼度を高め寿命を長くした制御用磁気増巾器アナログ計算機も作られている。

工作機械数値制御装置は機械工業界との協力の成果であつて,複雑な機構部品の加工に際してまず予め定められた工具駆動の順序を磁気テープに記録しておき,これを再生しつつ所定の切削加工を自動的に行なうものである。フライス盤等と結合されたものはすでに相当の台数が作られ,工数削減等の著しい効果をあげている。
(4) わが国における電子計算機の普及状況

最近数年のわが国における産業の合理化の進展は著しく,電子計算機の需要増大の主因となつている。とくに経営事務の合理化のための自動化,すなわちビジネスオートメーションの普及発達は,計算機設置台数の急激な増加を見ている。昭和35年6月現在,パンチカードシステム(PCS)を採用し,電子計算機を設置している事業所数は405ヵ所,計算機の数は 表4-2 のとおり,IBM8,108台,R.R2,235台である。

電子計算機については35年10月まで外国機では大型1台,中形26台,小型8台が輸入されており,国産機では中小形機37台,その他制御用,座席予約装置等に利用されているもの19台である。その後電子計算機の需要は急速に増大している。これに対して米国ではすでに9,906台(PCSおよび電子計算機の数)になつている。
(5) 電子計算機製作技術の問題点

前述のように,国産機は主として中小形機であり輸入機に比べて,規模,金額および台数において劣つている。規模として考慮すべき点は,記憶装置の容量,その呼出時間,演算速度,磁気テープを含めた入出力装置等である。

記憶装置の記憶容量については国産機はやや小さいという程度であるが,呼出時間を含めた演算速度については相当の差がある。この原因は,パラメトロン式電子計算機では主として基本回路であるパラメトロンの動作速度が遅いこと,トランジスタ式でも記憶装置として磁気ドラムを使うものはその呼出時間が長いこと,刻時パルスの繰返しが200KC止りで遅いこと等である。

この点は磁気コア記録装置と高速度演算回路の採用によつて著しく改善されつつある。また磁気テープ装置については国産機の実績がまだ少なく,性能は劣つており,今後大いに力を注ぐ必要がある。

表4-2 わが国におけるパンチ,カード・システムの設(RCS)置状況

国産機が盛んに作られる体制になつたにも拘らず,外国製電子計算機の輸入を防止できない原因は,上述の理由の他に,主因としてプログラミングの問題がある。すなわち,輸入される機械が完備されたプログラム・マニアル,ライブラリイー・サブルーチン,種々のサービスルーチン等は・もとより,何等かの自動プログラム組織を備えているものが多いのに対して,マニアルすら完全とはいえないのが国産機の現状である。

一方,ユーザー側にも若干の責任がある。輸入品の仕様については余り注文をつけないにもかかわらず,国産品に対しては厳格な仕様を当てはめること,従来使いなれているパンチ,カード方式(PCS)にとらわれ過ぎていること等であろう。メーカーはユーザーの要求により,自社の計算機にパンチカードの入出力を接続しようとして,PCS機械の開発に努力しているが,PCSのようなものは今後それ程長く存続するものとは思われず,むしろ磁気テープによる入出力装置が勝つているのて,今後磁気テープ装置の開発と,それを能率よく使いこなせる性能(速度,主記憶装量の容量等)の電子計算機の開発が急務である。

最後に,電子計算機技術および工業の振興をはかる政府の施策と,して,補助金等の助成,税制措置等の対策はもちろん重要であるが,忘れてならないことは,電子計算機の利用および応用面の開拓を促進することである。すなわち,水利,災害予防等の国土対策,国の経済動向の把握,大都市における道路交通管制の実施等のごとく,多くのインホメーションにもとずく複雑,かつ,膨大な計算を必要とする行政分野に対して大型計算機システムを導入するとともに,その運用にあたつては各方面の衆知を集めて,それぞれのプログラミングを調整,検討することのできるような措置を講ずることにすれば,わが国における電子計算機の運用技術の基本となるプログラミングの開発研究を推進する一助になる。


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