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  各論
§4  電子技術
I  概論

電子技術またはエレクトロニクスと称せられる技術分野は,第2次大戦中に,いわゆる電波兵器の使用を契機として,きわめて急速な発達をとげ,その応用はいちじるしく適用範囲を拡げてきた。

すなわち,元来電気通信技術の一分野として発達してきた電子技術は,いまや計測,自動制御,計算,判断等を行なう新技術として,通信をはじめ,放送,船舶,航空,運輸,医療等ほとんどすべての産業にとり入れられ,技術革新において先導的な役割を果し,電子工業はいまでは最もめざましい成長産業の一つになつている。

すなわち,わが国における電子工業の生産額は,昭和30年を100とすると,33年は,335,35年には750(約4,500億円)と急上昇を続けて,全機械生産高の約14%を占める重要産業となつている。

一方,米国について見ると,全米科学財団(NSF)が行なつた昭和31年の調査結果によれば,電子技術は電気機械をはじめとして航空機および部品,機械,金属加工および兵器などの分野で主として研究されており,さらに食料,化学,石油,ゴム等の製品,一次金属工業,精密機械,その他製造業などの分野も含めた総売上額の約29%は電子技術の所産であると推定されている。わが国の電子工業は,研究開発に注ぐ努力しだいで今後も極めて発展の余地が大きいといえる。

電子技術は,真空,ガスまたは固体,とくに半導体の中における電子の作用を探求し,その性質と現象を応用する技術体系である。すなわち,電気機械工業の設計や動作においては,一々電子の運動に還元して考えることなく,むしろ電圧とか電流とかの現象的な量で考えてきた。これに反し,電子技術はこの電子の運動に着目して,その特質を生かすもので電子工学の基礎から電子応用装置に到るまでの体系的研究が必要となつている。

現在とくに,電子技術が応用される対象は情報の抽出,変換,伝送,およびこれにもとづく制御といつたような情報処理に関する分野であり,多量の情報処理を迅速確実に行なえる利点から急速にその適用範囲を拡大してきた。

たとえば,デイジタル技術の進出により,符号変調標本化数値制御,デイジタル電子計算機などのデイジタル電子方式からさらにデータ処理装置,電子交換などを含む大規模なデイジタル系統の実現をますます早めている。しかし,このような大規模な系統はもちろん,その構成単位である個々の装置でも,きわめて複雑な機能を果すことが要求され,したがつてその材料部品の改良および開発に至るまでも,電子技術の分野として重要な位置をしめている。

わが国の電子技術は,それら基礎面から応用面に至るまで,多くの研究が行なわれているとはいえ,その後進性を脱却して主体性を確立するには程遠く,一部を除きほとんどが先進国にくらべて10年以上の遅れがあるといわれる。

電子技術は1)基礎研究,応用研究が実用につながり易いこと。2)巧緻性が高いこと。3)新規性のある技術を開発しやすいこと。4)研究が比較的安直に実施できること等のために,わが国に適した技術であり,また,電子工業においては1)材料が僅少ですむこと。2)付加価値が高いこと。3)繊細器用な作業を要求すること。4)多様性と開発性に富むこと等において,わが国に適した産業であるといえる。したがつて電子技術を強力に振興することは,わが国においてとくに重要であると同時にきわめて有意義であると思われる。


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