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  各論
§3  材料
I  今日における材料問題の特徴

最近の科学技術の急速な進歩は,技術革新となつて具体化し,産業活動の質量両面に著しい変貌をもたらしているが,材料もその例外ではない。材料の生産と需要の両面において目覚ましい技術進歩がみられ,この技術進歩によつて材料問題は今日,新たな特徴を帯びるに至つている。新たな特徴とは何か,第1に金属材料,非金属材料,高分子材料,等々と分けて考えることが,研究面でも,需要面でも次第に意味がなくなつてきていることであり,第2に,材料開発に対する態度をもつと積極的なものにする必要性が増大していること,すなわち,ユーザー側の目覚ましい技術進歩に材料技術が追いついて行くためには,ユーザーの要求を受けて,初めて開発に乗り出すという態度ではも,はや不十分で,材料を材料自身の立場から開発してユーザーに使わせるという考え方が必要になつてきたことである。

以上の問題をもう少し敷延してのべよう。

生産技術の発展は,鉄鋼,軽金属といつた既存材料の増産,コスト切下,均一化を可能にするとともにプラスチツク,チタン,ゲルマニウム,ニユーセラミツク等の多彩な新材料を登場させた。このため,従来比較的固定して考えられていたそれぞれの材料の使用分野が,きわめて流動的になり,各材料が需要の争奪をめぐつて激しい角遂を演じている。大きいところでは,鉄鋼の分野に対するアルミニウム,マグネシウムなど軽金属の進出,チタンに代表される新金属や各種プラスチツクの登場がそれであり,小さいところでは銑鉄鋳物の性能向上による鋼鋳物の代替などがあげられる。単一材料で必要条件を満足できない場合には,アルミニウムあるいはビニルを鋼板に被覆して両者の長所を生かした被覆鋼板,ステンレスをはり合せたステンレスクラツド鋼板,金属とセラミツクの複合材料であるサーメツトなどが進出している。

また,ユーザー側の材料に対する要求は,原子力やエレクトロニクスといつた新分野ではもちろん,既存の分野でもますますきびしくなり,ユーザー側の技術進歩を実現する鍵として,材質の改良と新材料の創出がたえず求められている。たとえば,とくに高い温度に耐える金属は航空機,ミサイル,最近の高温,高圧ボイラとそのタービンなどに多面的に用いられるようになつているが,これらの材料は構造的にはげしい作業強度のもとにおかれているから,高温度の長時間試験に合格しうるものでなければならない。1m長さの棒に大きな荷重を加えたまま高温に1万時間(417日)も保持し,1mm以上ののびがあつてはならないという規格すらあるほどである。

このように日々にきびしさを加える要求にこたえて行くためには,試行錯誤に頼る経験主義的な方法は全く不十分となり,自然科学の成果に基礎を置く科学的な方法論による材料開発が主流となりつつある。このような材料開発の方向は,物質の本性を科学理論によつて正しく理解することを前提とするが,このような前提が達成されてこそ,材料問題をユーザー側から提起される受身の立場から,新材料を開発し,ユーザー側に用途を考えさせるという能動的な立場へ材料技術を転化させうるのである。


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