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  各論
§2  原子力
III  むすび
  -原子力技術開発の特徴-


原子力技術開発の特徴の一つは,開発に莫大な資金を必要とすることである。先進諸国の原子力予算をみると軍事利用と平和利用の両面をもつているが米国では,年間約1兆円,英国では約1,000億円,フランスでは約800億円の予算を計上されている。一方,平和利用のみを進めている諸国,すなわちカナダ,西ドイツ,イタリアでは, 図2-6 にみられるように1958年以降予算は急増しており,わが国の予算の2〜3倍となつている。

図2-6 各国の原子力予算の推移

第2の特徴は,原子力開発には,広範な総合科学技術を必要とすることで,この原子力の新分野で科学技術者の確保の必要性を挙げることができる。現在,米国の研究者2万人,欧州では英国1万人,フランス5,500人その他約1万人とみられている。これに対し,わが国では原子力開発研究の中心機関である原子力研究所,原子燃料公社,放射線医学総合研究所の機関で約2,000名が従事しているほか,民間会社で原子力開発に従事している者は約2,000名であるが,このうち原子力の専門家とみられる研究者は半数程度である。わが国の長期計画では,前期10年間に関連技術者をふくめ約8,000名の科学技術者の養成を必要としている。

第3の特徴は,原子力開発を技術的にも経済的にも効果的に進めるのに,研究開発の共同化が必要なことである。とくに,米国などにくらべて開発資金や科学技術者の少ないわが国では,大学,研究所,民間企業が協力して効果的に研究開発を進めることが必要である。このことは国内だけの問題でなく,国際間にも反映し,2ヵ国または数ヵ国が共同の開発目標をかかげて研究開発の能率化をはかつている。その代表的なものとしては,欧州原子力機関加盟国による原子炉の開発(ドラゴン計画)などの共同研究開発があげられる。

第4の特徴は,原子力開発には,緊急時対策,災害補償などを含めた安全面の考慮が必要で,この点も在来技術開発と比較して大きな特徴となつている。この安全確保に対する努力は一般公衆の安全性ばかりでなく,原子力技術の経済性にも関係する重要な問題である。

とくに平和利用のみをすすめているわが国としては,原子力が実用化されるまでのかなり長い期間にわたつて内外技術の動向に関する巾広い観点に立つた重点的研究開発を国が主体となつて推進すべきである。わが国は,原子力開発に着手して数年目に反省期を迎えたが,これが将来の原子力の健全な発展をはかる上の地味な努力を開始する一つの転機となることが期待される。


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