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  各論
§2  原子力
II  開発利用の現状
5.  放射線の利用



(1) アイソトープ

アイソトープの利用は,実用の域に達しており,広い分野で大きな成果が得られている。25年にわずか数ミリキユリー輸入されたアイソトープも,今日では 図2-5 に示すようにCo-60大線源は約7万5,000キユリー,P-32は3万ミリキユリー,I-131は8万ミリキユリーに達して,医学,工業,農業の分野で科学技術の進歩に大きな寄与をしている。

図2-5 アイソトープ輸入の推移

わが国で利用されるアイソトープはもつぱら,米国,英国,カナダからの輸入によるもので最近1年間の輸入金額は約2億円で,36年度までに要した外貨は累計約11億円である。わが国の第1次生産計画では,使用度の高いP-32,I-131など6核種をJRR-3を用いて昭和38年頃から本格的に生産する予定である。

アイソトープ使用事業所数は現在約900個所で,日本放射性同位元素協会の35年度出荷件数は約9,500件に達し,医学利用が最も多く,理工関係16%,農学関係8%となつている。医学利用ではアイソトープは,基礎研究ばかりでなく,日常の診断や治療に不可欠な手段となつている。工業利用においては,非破壊検査や製品の品質管理に,農業においては,品種改良,施肥法の改善などに利用されている。

アイソトープ利用促進の上から,問題になつているのは,短寿命アイソトープおよび多種標識化合物の入手が容易でないことと,比放射能の低いことでこれらの要求が将来の生産計画に十分反映されることが望まれている。また生産工程管理への利用においては,現場のきびしい条件にたえる機器の開発が必要とされている。産業への利用においては,今後の発展に資するために利用による経済的効果の調査が行なわれている。
(2) 放射線化学

放射線は,熱,圧力,触媒とならんで,将来化学工業に重要な手法となることが明らかになり,放射線化学の開発が重要視されるようになつた。この研究のために原子力研究所にCo-60 1万キユリー,12MeV直線型加速器が,また,名古屋工業試験所,東京工業試験所など国立試験研究機関にも照射施設が設けられた。民間では,日本放射線高分子研究協会や理化学研究所が研究を開始し,現在では,国内で放射線化学研究用Co-60照射器約80台,加速器20数台が設置され,高分子物質の基礎研究,繊維の改良,線量測定など広範な研究が行なわれている。また,原子力委員会放射線化学専門部会の答申に基づき37年度から,原子力研究所に大線源照射装置を備えた放射線化学中央研究所(37年度予算1億5,000万円,債務負担額7億7,000万円)の設置が決定され,本格的研究開発にのりだすことになつた。


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