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  各論
§I  新科学領域
III  実験物理学の領域の拡大
4.  超高温

極低温が分子の運動を止めるのとは反対に,超高温は分子にゆさぶりをかける。ひと口に超高温といつてもそのゆさぶりの程度によつていくつかの領域に分れる。第1に,2,000°K〜4,OOO°Kの領域である。最近の高温化学工業,高速飛しよう体,ガスタービン,原子力工業等で2,OOO°K以上の高温が要求されるために,この温度にたえる固体材料の問題が起つてくる,第2に4,000°K〜106の領域である。いかなる物質も4,000°K以上では現在知られている限り固体でなくなり,5,000°Kを超えると分子結合が破れ原子の殻外電子がはぎとられる。したがつて,この領域では分子がイオン化し,ばらばらになる。

これは,放電加工や溶接などいつたん分子の結合を解いてしまう加工法に関連をもつている。また化学反応への利用もこの温度までである。第3に,106K以上の温度領域があり,この領域では原子核と原子核が直接衝突して熱核反応が生じる。( 図1-8参照 )

現在人間のつくりうる最高の温度は原爆であつて水爆は原爆がつくり出した数千万度の超高温によつて核融合反応を行なうものである。この平和利用,つまり核融合の制御を実現することは,海水中の重水素から莫大なエネルギーがえられること。有害な死の灰を出さないことのため理想的な動力源として今後の研究開発の最大の課題の一つとなつている。

図1-8 超高温技術

とくに昭和33年のジュネーブにおける国連主催の原子力平和利用会議において,はじめて米英ソなどの核融合研究装置が公開されて以来,各国によつて研究開発が推進されるようになつた。

わが国でも昭和33年以来,原子力委員会の核融合専門部会や日本学術会議の核融合特別委員会が中心となり,その研究開発推進方策について論議をかさね,まず大学,電気試験所,理研その他に小型の放電による高温プラズマ発生装置がつくられた。その後諸外国の研究によつてプラズマの加熱や磁場によりプラズマを閉じ込めるメカニズムを解明しないかぎりいたずらに大型にしても温度が上がらないことが判明した。そこで研究の焦点はプラズマそのものの物理的解明に移り,名古屋大学に共同利用のプラズマ研究所が設立された。こうしてようやく第1段階の整備が終り,高温プラズマ発生装置の建設やプラズマ諸量の測定の仕事にたずさわつた人々の中から若い専門の研究者が育ちつつある。また,単に放電によつて高温プラズマをうるだけでなく,プラズマの加熱や閉じ込めなど特定の現象を実験解析できるような装置,種々の作用を容易に調べうる静かなプラズマや必ずしも高温でなくても,ある予定された性質をもつプラズマをつくるテストプラズマ計画などが進展している。現在世界的にも核融合の研究は必ずしもはなばなしい成果をあげているとはいえないが,各国ともその研究はいささかも衰えていないので,スタートで数年のおくれをもつ日本は今の時期にこそ研究を推進せねばならない。


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