ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
  各論
§I  新科学領域
III  実験物理学の領域の拡大
1.  超高圧

物質の性質は,それを構成する原子や分子の性質とその凝集状態によつて定まる。したがつて,その凝集状態を変える程圧縮することができれば,物質の新らしい性質を出現させ,分子の相互作用を知ることができ,あるいは常圧のもとでは起りえない反応を起させることができる。

現在実験室でつくりうる高圧は 図1-5 のように常温で20万気圧(静水圧)であるが,これは地下400km(地球の半径の1/15)に相当する。これにより今日知られている多くの岩石や鉱物の合成が可能となり,岩石や地殻の成因がはじめて実験科学によつて基礎づけられる段階に達したのである。

この成果として,昭和28年米国ゼネラルエレクトリツク社で成功したダイヤモンドの合成(3,OOO°C,10万気圧)をあげることができよう。さらに実験室では天然と異なり,温度と圧力を独立に変えられることを利用して,圧力をかけたまま急冷し,天然には存在しない種々の新物質をつくり出す研究が進んでいる。熱弗酸にもおかされないコーサイト(昭和28年コースが発明)やダイヤモンドに匹敵する硬度を持つボラゾン(昭和32年ウエントルフが発明)などはその例である。

図1-5 自然の高圧と人工の高圧

とくに,最近注目されるのは超高圧下の金属物性で,磁区の変化,電導性などの分子的構造の変化,超高圧下で流体化する現象等興味ある問題が多い。とくに,火薬の爆発の衝撃波によつて発生する50万〜100万気圧の瞬間的超高圧下で,金属や固体が流体のような性質を帯びる現象を利用して瞬間衝撃加工法という新しい加工技術が実用化されつつある。

この方面の研究は,高圧の発生および測定技術の開発とともに,米国において原子炉用材料や宇宙工学とも関連して最も活溌に行なわれている。

わが国では,京都大学の熱水化学反応装置(数百度2万気圧)などを使用して鉱物の化学反応はかなり早くから研究されていたが,超高圧下の金属物性の研究は歴史が浅く,ようやく昭和35年に八幡製鉄,金属材料技術研究所(科学技術庁)昭和36年に金属材料研究所(東北大)にそれぞれ米国で市販されているダイナパツク衝撃加工機が購入され研究がはじまつたばかりである。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ