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第III部  現代社会における科学技術の役割
第3章  資源利用
III  土地と水の利用

資源の開発,保全は,具体的には地域という場で行なわれるのであつて,地域経済との関連を十分に考慮する必要がある。また,国および地域における産業構造の高度化と生活水準の上昇によつて,土地や水の利用方式も変わつてくる。工業地帯の急速な発展に伴つて,産業および人口の地域集中,都市の巨大化が進み,これを放置するならば,農業用水と工業用水,あるいは農地と宅地,工場用地といつた土地や水利用上の競合が激化し,住民の生活や産業活動に重大な障害となるばかりでなく,災害が大規模に発生する危険性を増す。すなわち,産業と人口の都市集中は都市の地価をつり上げ,地価の安い所を求めて,風水害に対する抵抗力の低い低湿地や干拓地がどんどん市街地化して行く。さらに地下水の過度汲上による地盤沈下がこれに加わり,高潮洪水による大惨害を招く。住居が過密で道路面積が少なく,公共用地の機能も十分果されていない現状では,火災による被害がより大きくなる。また死者5,000名以上という未曾有の惨害をもたらした伊勢湾台風は,防災計画と国土総合開発計画とを有機的に結合させた上で,土地や水といつた資源の合理的配分を決定しなければならないことを教えている。

全国生産額の半分以上を占める4大工業地帯においては,上にのべたような社会的なマイナス要因の増大が目立ち,さらにこれ以上工場を集中させれば種々の弊害を覚悟せねばならない。

したがつて,有利な土地を求めて,新しい工業地帯の形成が臨海部を中心に進められている。工業地帯発展の中心となる重化学関係の工場は,機械工業を除きいずれも広大な土地と多量の水とを必要とする。たとえば,近代的規模の製鉄所は200万坪,石油化学工場は50万坪以上の土地を必要とするといわれ,工業用水使用量についても,従業員3万5,000人の某製鉄所が136万m3 /日で,人口300万人の大阪市の上水道に匹敵する。

したがつて,土地および水のきわめて旺盛な需要を満たすためには,埋立技術および用水技術の進歩に負うところが大きくなつている。
1. 埋立技術

ここ数年間の埋立造成の急速な進歩は,主として浚渫船の進歩に負つている。現在,漁業補償や付帯工事費を含まぬ直接の埋立造成費は3.3m2 当り6,000円程度が採算の限度といわれているが,埋立区域の条件はかなり急速に変化している。すなわち,平均水深は,33年度には3.5mとなり,土砂排送距離も1,000〜1,500mから3,000〜4,OOOmへとのびている。この対策として,埋立作業の中心となる浚渫船の大型高性能化が急速に進んでおり昭和36年3月現在,全浚渫船能力の83%が非航ポンプ船で,その能力は1億3,000万m3/年である。昭和33年3月以降36年3月までの3年間に101隻が建造され,新船の平均馬力は,昭和33年度の1,056IPから36年度の3,300IPへと大型化の傾向がいちじるしい。現在8,000IP揚土量2,500m3 /h(軟土盤),排送距離6kmという巨大なものが稼動している。従来これらの浚渫船は電源から高圧線を張つて動力をえていたが,排送距離の増大に伴い,自船に動力源としてデイゼル発電装置を搭載する方式が普及し,3,000IP以上のものは皆この式となつている。

造成地に工業用地としての真価を発揮させるためには,整備された港湾が必要である。専用船はマンモス化し,37年中には6万7,500重量トンの鉱石専用船,13万重量トン級のタンカーの就航が予定されており,このため,航路,泊地の水深を16mにする必要がある。掘さく深度が増すに従い,硬土盤,岩盤の露出区域が増し,硬土盤岩盤浚渫船の活躍にまたねばならなくなる。この種の浚渫船として,バケツト船,デイツパー船等の高性能化大型化もいちじるしい。

パケツト船においてはバケツト容量4m3 ,デイゼル発電方式,ワードレオナード制御方式を採用し,1人で操作できる船まで出現している。

新型船としては,土捨場までの距離が遠くて非航ポンプ船に適しないような場所たとえば非常に長くて遠浅の航路浚渫に適するドラグサクション船(自航ポンプ船と土運船を一緒にしたもの)が昭和36年4月に完成している。

建造技術の点では,1,000総トン以上のポンプ船がほとんど外国からの導入技術によつて建造されているのに反して,硬土盤,岩盤浚渫船は,運輸省港湾局が主体となつて開発した国産技術によるものであり,昭和37年7月に完成予定のエジエクターポンプ船は,日本の技術開発の輝かしい成果を示すものである。土砂吸入管のふくらんだ部分に,別の細いパイプから上向方向に水のジエツトを吹込み,上昇水流を起こさせ吸引力を強め,同時に他の1本の細いパイプからジエツト水流を吸入管近傍の土砂にぶつつけて掘り崩す方式である。作業水深は,他船の20mから一挙に50mまで拡がり,掘さく力が強く,海底下の比較的深い部分にある砂層の採取が可能である。浚渫と同時に海底からのコンクリート用骨材採取をねらつている。さらにこの種の技術を利用して有明海の海底砂鉄採取が計画されている。
2. 用水技術

昭和35年に実施した通商産業省の調査によれば紙,パルプ,非鉄金属精錬,繊維等の工業においては,0.44〜2.13円/m3 と低廉な水を使用しているが,化学,石油精製,食品,鉄鋼等では3.12〜4.99円/m3 程度の水を使用している。全体の加重平均価格は,2.51円/m3 であるが, 図III-3-2 にみるごとく,用水型産業においては,製造原価中に占める工業用水費の比率は,電力費と匹敵するまでになつており,水も他の原料と同様限られた高価貴重な資源として取り扱うべき段階にきている。

昭和45年度の淡水使用量は,33年度の約3.5倍8,300万m3 /日に達するものと見込まれており,地方公共団体等の手で建設される工業用水道への依存が全体の45.1%と圧倒的に大きくなる。

給水源を拡大すると同時に,水使用の合理化が重要な課題となるゆえんである。

図III-3-2 製造原価に占める用水費と電力費の比較

同一業種の工場を比較すると,淡水率が高く,用水事情の恵まれた所程回収率の低い傾向がみられ,回収率を高める余地の多いことを示している。全般に,所要水量の決定がきわめて経験的で,まちまちであり,なお合理化の余地がある。

用水技術は,回収,廃水処理,海水利用に関する技術が主なものである。33年度使用用途別実績では,淡水の60.8%が冷却用と洗滌用である。冷却用は他の用途程清澄度を必要とせず,水温低下さえはかれば再使用できる。各種の冷却用水の水温低下法を 表III-3-2 に示す。大部分は水の表面より噴霧状として蒸発を促進させて気化潜熱を利用する方法であり,損失率は10%程度である。工場では強制通風方式が多い。廃水を注入井または圧入井により地下に還元して,地下水源の保全をはかる方法が研究されており,これは廃水処理も兼ね間接的に水の利用度を高めるものとして注目されている。

廃水処理は水の回収のみならず,公害防止からも重要である。その技術は,廃水中の浮遊物,有害物の質により異なるが,凝集沈澱法,浮上法,活性汚泥法,散布炉床法,イオン交換樹脂や活性炭を利用する法等とすでに一応の進歩をみせ,都市下水を処理して工業用水として供給している浄水場もある。一般に廃水処理に要求される技術は経費の低廉が最大の眼目である。したがつて方法としては一応可能な段階にきているとしても,本格的な実施を期待するには,法的に水質恕限度が決定されることが必要であり,そのための調査が現在進んでいる。

表III-3-2 冷却用水の回収方式

海水利用については,用水型産業がほとんど臨海部に集中しているため,すでに淡水量を上まわる量が使用されているが,33年度では,95.5%まで冷却用であつた。障害となる海産生物の付着や装置の腐蝕対策は従来からの特殊塗料や材質の研究に加えて,最近は,塩素添加による生物学的障害の除去,電気防錆法の発展によりかなり進み,これらの技術の進歩が使用量増加の主因となつている。さらに技術の向上と普及によつて,使用範囲の拡大をはかり,用水不足の緩和に貢献させることが必要である。


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