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第III部  現代社会における科学技術の役割
第3章  資源利用
II  資源の供給およぴ利用パターンの変化

わが国の国民総生産は昭和30〜35年の5年間に78%拡大した。このような経済の発展を支えた主な原因の一つは生産性の向上であるといえよう。しかし,生産性の向上は一般に,天然資源に多くを依存する原材料に関する産業ほど容易でなく,採取が進むにつれて自然条件が悪化し,しかもこれを克服する技術の進歩が望めない場合には,かえつて生産規模の拡大によつて生産価格の高騰を招くことになる。

そのため,量的,価格的に保たれていた諸原料間の均衡が破れ,原料価格の高騰をつぐなうための利用方法の能率化や,より豊富で安価な原料ヘの転換を可能にする新しい技術の登場によつて,原料間の新しい均衡が生じる。このような推移によつて,経済の急速な拡大は資源の供給および利用のパターンの深刻な変化,いわば質的変化をひきおこす。最近5ヵ年間について,主要な天然資源の分野における上記のパターン変化( 図III-3-1参照 )とこの変化の原因となり,また結果として生じた科学技術の進歩について眺めてみよう。

図III-3-1 資源の供給パターンの変化


1. 水産資源

年間魚獲量は,最近5年間(昭和30〜35年)に26%増加したが,沿岸漁業は53.4%から38.1%へと大幅に減少し,それに代つて沖合および遠洋漁業がそれぞれ29.9%から37.8%,16.6%から24.1%へと増加している。特に母船式漁業は2.9%から10.5%へ絶対量で4.5倍に増増している。このように沖合から遠洋へと次第に遠隔化する漁場対策として,漁船の大型化,高速化がいちじるしい。特にトロール船では1,500トン級が出現し,西アフリカ,オーストラリア等まで独航しており,母船式では従来の鯨,サケ,マス,カニに加えて,マグロ(印度洋等),カレイ,タラ(北氷洋等)と対象魚類の多様化による漁獲量増加が目立つている。沿岸漁業においては,単なる天然魚介の採取業から,人工養殖によつて資源量を積極的に増加する漁業への質的転換が進んでいる。この面で魚介類の生活史研究や綿密な生活環境調査を土台として,漁場造成,人工孵化,育苗等の技術的進歩が大きな役割を,果している。

他方,漁獲物利用の面をみると,昭和28〜33年の5年間に生鮮冷凍魚が42%から27%へと減少し,食料や飼料用として加工されるものが著増している。その技術的要因としては,(1)貯蔵設備の近代化による加工工場の年間常時操業の実現,(2)自動化された連続機械化工程の出現による大量生産化,(3)包装技術の進歩と肉類,香辛料等の添加配合法の改良による煉製食品の味の向上等があげられる。
2. 森林資源

昭和30〜35年の5年間に年間素材供給量は22%増加したが,大宗を占める針葉樹材には限界が見え始め,絶対量すら減少し,広葉樹材と輸入材がそれぞれ13.7%,5.6%から20.4%,12.1%へと大幅に増加することによつて需要が賄われた。

他方,用途別にみるとパルプ用材が著増している。多段式漂白法,セミケミカル法等の進歩により,広葉樹材および屑材のパルプ化が急速に進展し,針葉樹材不足が克服された。昭和30年と35年のパルプ原木消費量(林野庁調査)を比較すると,広葉樹は11.6%から30.9%へ,屑材は0.2%から24.7%と飛躍している。また,繊維板,合板などの進出は,パルプ用材の増大と相まつて,大径材から小径材へと需要の流動をもたらした。このことは育林期間の短縮,間伐木の利用集約化等によつて育成林業の基礎を強化し,一方育林技術,機械化の進展により増大する木材需要に対応して拡大造林が推進されている。
3. エネルギー資源

5年間(昭和30〜35年)にエネルギーの年間供給量は63%増加した。国産エネルギーは,水力が20%増,国内炭が24%増に留まり,石油および石炭の輸入依存度は石炭換算量で20%から40%へと高まつた。これは石油が油田の開発によつて世界的に供給過剰の傾向となり,価格も低落の傾向であるのに反し,国内資源の方は包蔵水力の限界および石炭価格の面など多くの阻害条件があるからである。

すなわち,貯水池式水力は開発地点の条件が次第に悪化し,発電コストは高騰傾向にある。石炭は稼行区域の深部移行に伴い,小規模多段斜坑方式では炭価を切下げつつ生産量を拡大することが困難となつた。石炭価格の点についてみても,大幅な炭価切下げは立坑方式,ベルト斜坑体系の採用と,新鋭機械投入による生産性向上の実現にかかつている。

1次エネルギーの大口需要として,火力発電の増大が最近目立つており,昭和35年度には国内炭,重油の各32%を消費している。これは,高温高圧大容量火力発電プラントの発達に負うところが大きく,従来の石炭重油混焼火力の他に,産炭地における低品位炭火力や,需要地における重油専焼火力発電-石油精製-石油化学工業の総合コンビナートの建設が進んでいる。
4. 土地および水

平地利用の大宗を占める耕地面積は,昭和35年8月1日現在で612万ha,国土総面積の16%を占めるに過ぎない。昭和20〜30年の10年間に,40余万haの耕地が拡張されたが,一方では,ほぼ同面積の耕地が自然災害および工場用,宅地用等の地目変換によつてつぶされており,合計面積ではほとんど横ばいである。これに反して,工業用地は現在は耕地の数%に過ぎないが,年々飛躍的に拡大している。すなわち,工業用地の年間造成量は,昭和35年では5,800haであり,5年間(昭和30年〜35年)に5.6倍となつている。このうち埋立によるものは10倍以上に増加し,土地造成の比率でみても12.2%から23.1%と,いちじるしく高くなつている。臨海性を必要とする製鉄所,精油所,火力発電所,化学工場等の大規模化にともない,工場単位の面積が拡大し,またコンビナートの形成が盛んになるに及んで,埋立による土地造成にますます依存する度合が大きくなつた。埋立面積の急速な拡大は,埋立深さおよび土砂排送距離を急速に増加させているが,ポンプ船の大型化,高性能化によつてコストの高騰が回避されている。農地を転用する場合にも大型の土木建設機械の活躍によつて,工業用地造成のスピード化がはかられている。

上記の工場は,また多量の水を消費する用水型工場でもある。したがつて,工場の新増設にともなつて,工業用水使用量は,昭和31〜33年の2年間に,海水を含めて66%も増加している。

地表水は,農業用水等既存水利権との競合があり,地下水,回収水の比率が増している。地下水も地盤沈下のため今後多くを望めず,工業用水道からの給水,回収水,海水への依存度がさらに大きくなろう。冷却用水の回収方式および廃水処理技術の進歩による淡水回収率の向上,海生物の付着防止および耐蝕技術の進歩による海水使用範囲の拡大に期待するところが大きい。

他方,農業用水はほとんど水田灌漑用で稲作需要期には約6億m3 /日の水を消費し,工業用水として使用される淡水量(33年度実績約2,400万m3 /日)に比して桁違いに大きく,水使用の合理化の余地も大きいと見られている。


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