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第III部  現代社会における科学技術の役割
第2章  雇用・労働
IV  労働力移動の近代化

企業規模別にみた労働力移動は従来,大企業から排出された過剰労働力が中小企業などに移動するという型が多く,大企業は労働移動に関しては比較的封鎖的であつた。しかし,最近はこのような労働力移動の型とは全く異なつた逆方向への移動という新しい型が表わされている。これは,技術革新に伴う経済規模の急速な拡大にもとづく労働需要の増大が大きな要因となつている。

その結果,中小企業から大企業への労働力移動や臨時工の本工昇格となつて表われており,これは雇用条件の改善の一面を示すものであるといえよう。経企庁の「新規雇用調査」によれば,昭和35年度中の中途採用者で,直ちに本工として採用されたもの,および臨時工で本工に昇格したものの年度間本工採用者中に占める割合は,それぞれ従業員5,000人以上の規模の企業平均で,29%および31%であり,1,000〜4,999人の規模においても,それぞれ19%および21%を占めている。しかしこのような移動は無条件に行なわれているわけではなく,移動できる者は若年層に限られている。

「新規雇用調査」によれば,1,000人以上の規模の昭和35年度における中途採用者中30歳以上のものは7%にすぎない。中高年令層の移動が困難であるのは,その有する熟練の度合と性格が技術革新の進展にともなつて陳腐化され無用化される傾向にあるのに加えて,相対的に高賃を必要とするからである。これら労働移動の問題は,技術革新の進展に伴つて不可避の課題であり,技術の再訓練はとくに重要視されなければならない。

産業間の移動にも,技術的進歩に原因する新しい傾向が表われている。農業から工業への移動が,とくにめだつているが,そのほか石炭などの停滞産業から成長部門への労働移動も見られる。

この場合にも,中高令層労働者の移動は必ずしも円滑でなく,この対策が強く望まれている。産業間の移動は,必然的に地域間の移動を伴うものである。この場合も,新規卒者および若年層は純農村地域や失業多発地域から,かなりの流出を見せているが,中年層以上では顕著でない。技術革新にもとづく産業構造の高度化が円滑に推進され,また社会的問題としての完全雇用が達成されるためにも,地域間の労働移動が円滑に行なわれるようにすることが必要である。

このような労働移動は,従来わが国の労働市場の特殊性であつた封鎖性を打破するものであるが,さらにわが国の賃金体系の特徴であつた年功序列型の給与形態を職務給的なそれに転換する作用も有している。この転換を期待する諸要因のうちで,最も根本的なものは,技術革新による労働の質の変化による職種の交替,専門化,あるいは熟練の平準化である。しかし,わが国における職務給は,まだ,ごく少数の企業において採用されているにとどまり,また,職務給を採用した大企業の例をみても,その多くは不完全な型であつて,基準内賃金に占める職務給の割合は比較的小さく,年功賃金の性格を強く保留している。したがつて現在は,この面からみる限り職務給のほう芽時代といいうるであろう。


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