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第III部  現代社会における科学技術の役割
第2章  雇用・労働
II  労働の質的変化

技術進歩によつて,新しい労働手段や労働対象が開発され,労働内容には多くの変化がもたらされた。これらの変化は大体4つの型に要約されるであろう。

その第1の型は,従来,単純筋肉労働で行なつてきた作業が機械に代替され,労働者は機械を操作するか,あるいはまつたくそのような作業から解放されるという変化である。

機械化が最も遅れている産業部門と考えられてきた農業においても,機械化が一段と進行し,電動機,石油発動機,動力脱穀機,動力耕耘機等の諸機械の普及はめざましいものがある。とくに動力耕耘機は昭和30年と比較して35年には6倍半の52万台へと増加している。また,除草剤が進歩しヒエに効用あるPCPが開発された。このような農業の機械化および農薬の進歩は宿命的と考えられてきた重筋肉労働を減少しつつある。ダム,道路等の土木建設業では,パワー・ショペル,スクレーパー,ロード・ローラー,アスファルト・スプレツダーなどの土木建設機械の導入により整地,土石の掘削,搬出および舗装等の単純筋肉労働の型は変化している。また,港湾荷役も機械化され,荷役作業に,モビル・クレイン,ポータブル・コンベヤ,ホーク・リフト等の機械が用いられるようになり,作業の能率化とともに労働者の筋肉労働を節減している。鉄道においても,電化あるいはデイゼル化にともない投炭作業が不必要となり,保線についても,タイタンパの出現により,保線工夫を重筋肉労働から解放し,操車場ではカー・リターダー自動制御装置の導入によつて,連結手の危険を伴いがちな労働が減少しつつある。これらのほか筋肉労働に依存していた作業ないし産業の機械化が広範に進行しつつある。

第2の型は熟練労働が半熟練労働ないし未熟練労働に代替された変化である。このような変化をもたらした要因は,たとえば時計,ミシン,カメラ等の加工および組立工程を主とする産業では,加工技術の進歩によつて加工精度がいちじるしく高まり選択組立,調整,補正が不必要となつたことである。これらの産業の組立工程の従事者がほとんど若年工あるいは女子工員によつて占められているのは,このような変化に対応するものである。

第3の型は機械操作労働の監視的労働への変化である。このような変化をもたらした要因はいわゆるオートメーションの導入であつて,石油精製,化学,鉄鋼等のプロセス工業や火力発電所などにみられる。石油精製工場においては直接に生産に従事する労働者の作業は,主として,石油精製の各段階における温度あるいは圧力,流量等の変化,およびこれらの変化に応じて自動的にとられる措置を集中的に標示するグラフイツク・パネルを監視する作業になつた。鉄鋼業においては圧延工程でストリツプ・ミルが採用され,また,高炉への原料の輸送および秤量の自動化と熱風温度の自動調節が実施された。また,機械工業においてもトランスフア・マシンや数値制御工作機械等が採用され,人間は従来のように機械を操作する必要がなくなり,自動的に操作される機械を監視する作業を担当するという変化がみられ始めている。

第4の型は頭脳的作業に機械が導入されることによつてもたらされた新しい内容の労働の発生である。「人工頭脳」ともいうべき電子計算機の採用によつて生まれた,キイパンチャーやプログラマーといつた新職種はこの一例である。

このように技術進歩は,直接,労働において熟練や勘を不必要とすることにより,一方では労働の質を単純化するとともに,他方では設備の保守や監視,生産管理などの間接部門で従来の熟練とちがつた高い技能や広い素養をもつた新しい労働を要求する。

すなわち,技術進歩は,労働の質を単純化と高度化との両面への分化を促す作用を有している。


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