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第III部  現代社会における科学技術の役割
第2章  雇用・労働
I  就業構造の近代化

雇用および労働の全般にわたる諸問題を,とくに科学技術の及ぼす役割の面からのみ把えるのは決して十分ではない。しかしながら,事務の機械化,装置の自動化等の科学技術の進歩に伴う労働の質的変化,労働環境の変化は,いちじるしいものがあり,また,反面では,人間の能力を最大限に活用するような,人間に適応する機械装置の創出など,労働力の有効利用からする技術的進歩への要請も大きなものがある。さらに,機械化,画一化等に伴つて惹起される新たな労働条件および新たな人間関係の問題を解決し,労働疲労や職業病に関する諸問題を克服するために,労働科学の進歩に期待する面も大きいといえる。

従来,わが国における雇用および労働の問題は,過剰労働力または失業の問題あるいは低賃金労働力の存在などを中心として,展開されることが多かつたが,最近では,科学技術の急速な進歩や産業経済の広汎な拡大に伴つて,科学技術者不足の問題がクローズアツプされ,さらに,長期的安定的な経済発展の潜在要因としての人間能力活用の問題が再認識されるとともに,将来の労働力の老令化,労働力不足または管理方式が問題意識としてとりあげられるにいたつている。

全般的にみると,就業構造の近代化として象徴されるように,就業者の地位の向上,第2次産業への就業者の集中傾向は,いちじるしいものがある。

これは,経済および産業の飛躍的な発展と労働意識の変換による面が大きいが,また同時に,その潜在的ないしは先導的要因として,科学技術の進歩がもたらした影響も無視することができない。

すなわち,労働力調査によれば,昭和30年の就業者数は,4,100万人であつたが,昭和36年には,4,500万人と約11%の増加を示している。これを,従業上の地位別にみると, 表III-2-1 に示すとおり,家族従業者のいちじるしい減少と,雇用者の割合の大幅な増加(13.4%)が認められる。さらに,雇用者の構成比の推移を産業別にみると,昭和30〜36年の間では,非農林業で,64.7%から73.7%に増加し,また,製造業においては,同期間で72.2%から84.O%に増大している。

表III-2-1 従業上の地位別就業者構成の変化

また,産業別にみた就業構造にもかなりの変化がみられる。わが国の就業構造は,戦後の例外を除けば漸次,工業の発展とともに近代化を遂げつつあつたが,最近の技術革新の波にのつた経済成長の下に,全産業に占める第1次産業就業者数の割合は,昭和30〜35年の間に41.0%から32.8%へと大幅に低下し,製造業を中心とする第2次産業就業者のそれは同期間に23.5%から29.1%へと増大して,全就業者数の増加443万人のうち約8割が第2次産業に吸収されている。このように,第2次産業に就業者増加が集中した一要因は,最近の経済成長をもたらした技術革新であると考えられる。現代は技術革新の時代といわれているように第2次産業を中心にめざましい技術的進歩が見られ,新産業分野ないし新製品の創出,製品の改善,生産コストの低下,新原料の有用化等の効果をもたらした。

企業者は革新的技術によつて可能となつたこれらの効果を獲得するために設備投資を行ない,これに要する労働者を雇用する。第2次産業のうちでもとくに金属,機械工業は諸産業の基盤をなし技術革新による生産増加が大きく,かつ雇用吸収力が大きいので,雇用増がいちじるしい。

技術進歩が雇用量に及ぼす影響は,いろいろな立場で考えられる。自動化,機械等の技術進歩は一面では労働節約的に働く場合が多いと考えられている。この傾向も否定することはできないが,一般的に言つて技術進歩が雇用に及ぼす影響は,必ずしも直接的ではなく,投資増や生産増などを仲介として考えるべきである。最近におけるその傾向は総体的に高度な経済成長または,飛躍的な生産増加および新製品創出等を仲介として,就業者の増加に寄与している。

また一方で,技術進歩は労働生産性の向上に貢献するが,製造業について労働生産性と雇用労働者数との関係を図示すると 図III-2-2 のようになり,最近では両者がほぼ比例して増加している傾向がみられる。

図III-2-1 全就業者の産業別構成の推移

図III-2-2 製造業における労働生産性と雇用労働者数

また,公共事業および技術革新にもとづく新工場建設の増大により,建設事業においても雇用量がかなり増加した。

金属,機械工業および建設業での雇用増が中軸となつて第2次産業の雇用増に寄与し,第2次産業の就業著の全産業に占める割合を高めた。

この間の事情は規模別の雇用状況にも表われている。すなわち,最近の雇用増が,技術革新的要因にもとづくものであつたことおよび最近の技術進歩が生産の一貫性あるいは大量化,大規模化を要するものであり,単位設備の大型化,設備の大量化を要請する性格のものであつたことを反映して大ないし中規模企業に雇用増が集中している。

表III-2-2 第2次産業における就業者数の推移

表III-2-3 製造業における増加労働者の規模別構成比


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