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第II部  科学技術発展の基盤
第4章  行政制度および行政体制
III  諸外国における科学技術政策の概要

現在,各国は,人材対策と研究振興策の2つを重要な柱として,大きな力を注いでいることは既にのべたとおりである。これとともに,最近における科学技術の急速な進展に即応するつような科学技術推進のための機構および制度面の整備,強化をはかつている。これは,国の伝統,行政組織,学制等の相違によつてそれぞれかなりの特色をもつているが,この数年の間に, 付図II-4-1〜6 に示すように各国とも科学技術推進の中央機構の整備をはかり,機関,組織の運用については,過半数をしめる専門家と,政府および産業界からの代表者とからなる合議制の形態をとつて能率的運営につとめているという共通点がみられる。
1. イギリス

従来は,枢機相の下に科学技術研究会議および科学技術研究庁を設けて,科学技術研究行政を統轄してきたが,1959年,新たに,科学技術の専任大臣(科学担当相)がおかれ,科学技術行政(理工学および医学,農学関係行政を担当し,原子力,宇宙開発関係をも所掌する)を総括している。諮問機関としては,科学者,政府関係者,産業人から構成される科学政策審議会があり,ここで科学技術に関する最高方策を審議する。また,執行機関としては,科学技術研究会議,医学研究会議,農業研究会議等がある。

科学技術研究庁は,科学技術研究会議に所属して,自ら14の研究所を運営するほか,大学等に対する研究補助金,奨学金の交付,研究組合の助成,科学アタツシエの派遣,情報活動等,多面的な業務を行なつている。その他,大学,研究所等に対する予算あるいは補助金の配分機関としては,大学補助金委員会があり,政府機関,公共機関等における諸発明の開発を主な機能とする技術開発公社があり,また国防関係の研究開発ならびに助言機関としては国防研究政策委員会等がある( 付図II-4-1参照 )。

一方,産業界においては,科学技術研究庁の積極的な助成の下に約50の業種別研究組合がつくられ,活発な研究が行なわれている。最近の振興策としては,科学技術研究会議の計画にもとづいて科学補助金の拡大,研究組合の助成ならびに科学技術者養成等を主なねらいとしている。また原子力および宇宙研究が重要研究にとりあげられている。
2. フランス

1958年,科学技術閣僚会議およびこれを補佐する専門家の科学技術研究諮問委員会が設置され,科学技術振興政策の総合的な企画と推進をはかつている。これらは,内閣総理大臣をはじめ関係大臣(文部,国防,大蔵,商工,農林,保健)および発言権のみをもつ12人の学識経験者によつて構成されている。科学研究担当国務大臣は,各省間の科学技術研究の調整のみを行なうものである。また,大学,研究所等に対する予算あるいは補助金の配分機関としては,科学研究本部(文部省所属)がある( 付図II-4-2参照 )。

振興策としては,重要研究の推進,科学技術者の養成の2つを重要な柱にとりあげているが,応用研究の推進,研究予算の増加にも力を注いでいる。とくに,国の重要研究については,科学技術特別予算制度を設定し,総理大臣の管理下で,予算を使用することになつている。現在,その課題として原子力,宇宙,海洋,がん,栄養等の研究が選ばれている。
3. 西ドイツ

1957年,科学会議が設置され,連邦および各州における科学および教育政策の総合調整につとめている。これは,連邦政府の代表職員および各州からの大臣が投票権の過半数をしめるように構成され,審議機関の中に行政機関が参加した形をとつている。また,産業界における研究活動は,とくに盛んであり,その推進機関として,ドイツ研究協会,ドイツ学術後援財団,マツクス・プランク研究協会等がある。ドイツ研究協会は,ドイツ学界の自治機関であつて各種の専門委員会をもち,政府,民間からの研究補助金,寄付金の配分,共同研究の推進等を行なうための中央的機関である。ドイツ学術後援財団は,科学振興のための資金を産業界から集めるために設置されたもので,研究寄付金の約1/3がこの機関を経由しており,ドイツ研究協会,各種奨学団体を通じて,その配分が行なわれている。

マツクス・プランク研究協会はゲツチンゲンに本部があり,各地に研究所をもつており,ここでの研究は,西ドイツにおいて最も権威があるといわれている。研究費の大部分は,上記の機関を通じ政府,民間からの寄付金に仰いでいる( 付図II-4-3参照 )。

振興策としては,科学会議の「科学振興計画」による大学の増設が要望されているほか,研究行政一元化のための総合機関設置の気運がられみる。なお重要研究としては,がん,原子物理,航空機等の研究課題を設定している。
4. アメリカ

科学技術行政に関する統轄的な機関がなく,各省が分権的に実施している。主要な政府機関をあげれば,工業関係では標準局(商務省所属,測定の標準の維持とこれに関する研究等),医学関係では国立衛生研究所(保健,教育,福祉省所属),農業関係では農務省中央研究所,宇宙開発では航空宇宙局等がそれぞれの代表的なものである。なお,国防関係は,国防科学技術長があるほか,陸,海,空軍省がそれぞれ研究機関を擁し,原子力は原子力委員会の所管である。そして,科学技術に関して政府部内の調整をはかるために,科学技術活動に従事する主要な機関の政策担当官からなる連邦科学技術会議が1958年創設されている。

基礎研究の振興と科学技術者養成の強化をねらいとして,全米科学財団が1950年に設けられ,基礎研究のための補助金や大学に対する奨学金の交付を行なうほか,科学技術に関する調査業務を行なつている。また1957年以降大統領の個人的な助言者としての科学技術顧問が置かれていたが,1962年大統領行政府内に科学技術局を新設し,科学と技術との両面にまたがる調整機能の強化をはかろうとしている( 付図II-4-4参照 )。

振興策としては,国防研究,原子力開発および宇宙開発の推進に力を入れている。また人材養成については,近年とくにその関心が高まつて,国防教育法による大学生に対する奨学金の貸与,理数科および国語教育改善(設備改善)のための援助指導を行なつている。
5. ソ連

従来でも,ソ連の科学技術行政の特色は計画性があり,産業の発展および生活の向上という全体計画に沿つて進められ,しかも研究においては基礎研究の発展に対して考慮が払われていたが,1961年,科学技術研究体制の改革を行ない,新たに研究開発調整国家委員会を設置し,基礎研究と応用研究の間の調整ならびに合理的な研究を推進する体制をととのえた。これは国の代表的科学者および専門家によつて構成された国家的規模の研究開発推進のための中央機関である。また科学アカデミーは科学技術研究と行政の中心であり,多数の専門別研究機関ならびに出版,情報,図書館,博物館などを機構としてその下にもつている。

今日における科学技術研究の問題としては,研究体制の新しい組織化,研究成果の実用化促進,研究課題の整理と重要研究への集中等があげられている( 付図II-4-5参照 )。

付図II-4-1 イギリスの科学技術行政機構

付図II-4-2 フランスの科学技術行政機構

付図II-4-3 西ドイツの科学技術行政機構

付図II-4-4 アメリカの科学技術行政機構

付図II-4-5 ソ連の科学技術行政機構


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