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第II部  科学技術発展の基盤
第4章  行政制度および行政体制
I  諸制度の改善

わが国の科学技術の水準の向上をはかるため,国として種々の制度を設けている。その最も大きな課題は,わが国独自の科学技術を創出するための研究活動を活発化することであるので,近年これに対する方策がとくに重視されている。民間私企業や個人の試験研究を助成する制度としては,補助金の交付,融資のあつせん,圧縮記帳,機械設備等の特別償却,固定資産税の軽減,寄付金に対する税制上の優遇,研究の委託などがある。また,共同研究の推進と国産技術の企業化促進のためには,鉱工業技術研究組合法と新技術開発事業団法の制定がある。その他発明の保護奨励策としての特許制度,技術輸出促進のための輸出所得控除制度,技術水準の維持と向上のための標準化制度,その他技術士制度,研究公務員の処遇問題,普及啓発などに関する諸施策が行なわれている。

以上の諸制度のうちには,すでに「研究活動」の章でふれたものもあるめで,以下重複をさけならが最近における改善のあとづけを試みる。
1. 税制

民間企業における研究意欲を高からしめるためには,補助金の交付,融資のあつせん,研究の委託なども有効な手段ではあるが,税制面からの施策が果している役割は大きいといえよう。

試験研究用機械設備等の特別償却は,企業合理化促進法第4条の規定による承認を受けた場合,普通償却の別枠として,初年度3分の1の特別償却が認められるもので,この申請および承認状況は 表II-4-1 のとおりである。

しかし,他社との競合関係から秘密裡に試験研究を進めようとする場合には,この方法をとることは都合が悪いこともあるので,昭和36年4月から39年3月までの措置として,企業の自主的判断による特別償却の道を開き,別枠として初年度10分の1の償却が認められることとなつた。

また,昭和36年に固定資産耐用年数が改定され平均2割の短縮をみたが,これと同時に開発研究用固定資産について別途に5〜7年という短い耐用年数が設けられた意義は大きい。

表II-4-1 試験研究用機械設備等の特別償却

研究の共同化推進のため昭和36年制定された鉱工業技術研究組合法については「研究活動」の章でふれたが,鉱工業技術研究組合が受入れた賦課金により取得した固定資産についての圧縮記帳が認められ,また組合員が固定資産を取得するために組合に納付した支出金の特別償却が認められた。

また,試験研究法人等に対する寄付金に係る損金算入限度額の特例が昭和36年度から新設をみ,また技術輸出所得の特別控除制度はさらに昭和39年3月まで延長された。なお昭和37年度から,教育または科学振興等のための寄附金について所得税額控除制度が新設された。

このように税制面からの研究開発促進策は漸次充実の方向に向つているが,内部保留のまだ十分でないわが国企業の実情として,景気調整期において,まず研究投資が削減の対象になりがちであることから,その対策として試験研究準備金制度のようなものの創設が民間団体から要望されている。
2. 特許制度

わが国における実用新案および特許の出願と登録の件数は, 図II-4-1 および 図II-4-2 のとおりで,実用新案出願はここ数年間ほぼ横ばいであるが,特許出願は逐年増加の一途をたどつている。この状況は諸外国とくらべても,年間出願件数ではアメリカをぬき西ドイツと世界の首位を争う現状であり,登録件数ではアメリカ,西ドイツに次ぐ盛況であるが,わが国の場合出願に対する登録の割合が最も小さいのが特色である( 図II-4-3参照 )。またここ数年外国人による特許の出願とその登録の増大が目立つている。

特許制度はその関係法律が全面的に改正され,昭和35年4月から施行された。その改正の要点は,1)新規性の判断にあたり,外国で刊行された文献をも基準とする。2)権利存続期間を出願の日から20年以内とし,如何なる理由によつても延長されない。3)権利の無効審判をいつでもできることとした。などで,そのほか,権利者の利益保護を厚くし,勤務発明に関する雇主側の法定実施権の範囲を拡大し,また,無効,権利範囲確認等の手続が改正された。

図II-4-1 実用新案の出願件数と登録件数

図II-4-2 特許出願件数と登録件数の推移

なお昭和36年には,審査の処理が前年までにくらべ大巾に進んだが,( 図II-4-1 , II-4-2 参照),未処理件数の著増と処理の遅延は依然として大きな問題であり,審査官,審判官の充実確保と事務の機械化等の対策が望まれている。
3. 標準化制度

わが国の標準化の特色は,国家規格を法律に基づいて政府が民主的な手続によつて制定していることである。すなわち,工業標準化法による日本工業規格(JIS),農林物資規格法による日本農林規格(JAS)がこれである。なおこのほか,農産物検査法による主要食糧農産物の検査規格,肥料取締法と農薬取締法による肥料と農薬の公定規格,薬事法に基づく日本薬局方としての医薬品の規格などが制定されている。

工業標準化事業は,規格制度とJISマーク表示の2本の柱に支えられており,昭和35年度末現在で,規格数は5,255件,JISマーク表示許可工場数は7,949に及んでおり,日本工業標準調査会が昭和34年度に見直しを行なつた規格制定長期計画によれば,わが国において必要とされる規格数は9,358件であるから,昭和36年3月で,その56%が制定されたことになる。

図II-4-3 主要国の特許等の出願登録件数

JISの普及により,規格の統一と品質の国家的保証という直接的効果のほかに,統計的品質管理手法の導入,作業の標準化による製品品質の安定化などの効果が大きく現われ始めている。ただ問題点としては,JISが制定されているにもかかわらず,需要家がJIS以外の品種を製造業者に要求する場合が少なくないことである。また諸外国と比べてまだ工業規格等団体規格が充実してない点にある。

日本農林規格は昭和37年3月現在で,わら工品,一般材,木炭,めん類,食料かん詰,果実飲料,ハム,ベーコンなど47の農林物資について定められている。

わが国では計量の単位が昭和34年1月からメートル法に統一されたため,JIS,JASなどもその方針により作業が進められ,一般材などの木材関係規格が昭和36年から実施されたのを最後としてすべてメートル法に移行された。

標準化の国際機関としては,国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)とがあり,関係各国の利害を話合いの形で調整して,国際的な統一規格を作り,国際間の通商を容易にするとともに,科学技術,経済等の部門にわたり国際協力を推進することを目的としている。わが国も,これらの機構を通じて,加入各国との規格の交換をはかり,わが国規格の国際性を確保し,輸出クレームの防止,引合の円滑化等の利益を享受している。今後は,国際貿易をますます伸長していくうえからも,国際的に規格を調整していく必要が増大していくと考えられるので,わが国もより積極的に意見を反映させる方策をとることが望ましい。
4. 技術士制度

わが国の技術士制度は,昭和32年5月技術士法が制定されて以来,順調な歩みをつづけている。すでに4回の技術士国家試験が行なわれ合格者数も4,151名におよび,そのうち技術士として登録されたものは1,533名(昭和37年4月現在)で,国内はもとより,東南アジア,南米など外国においても技術士活動を行なつている( 表II-4-2参照 )。これらの技術士活動のために,現在,社団法人日本技術士会が中心となり,相談所開設,業務のあつせん,企業診断や現場指導のための会員の派遣などを行なつており,また諸外国における技術士制度調査のための調査団を派遣している。さらに各技術分野の特殊事情に応じた報酬基準の作成や技術士に対する税制上の特別措置についての検討を行なつている。現在登録者のうち,415名が会員となつている。

わが国の技術士制度は発足後間もないので,こんご職業制度として確立するためには,技術士に対する社会的認識を高め,解決の困難な技術士の問題については,必要に応じて技術士の指導を受けるといつた社会慣行を培つて行くとともに,これを助成するための諸方策の検討が必要である。

表II-4-2 技術士合格者および登録者数 昭和37年4月現在


5. 研究公務員の処遇改善

最近,科学技術活動の活発化とともに,科学技術者はいちじるしく不足をしており,国の研究機関では新規採用の困難,研究員の流出により優秀な人材を確保することが困難になつてきている。このため,昭和34年には,特別研究員制度の実施,初任給の引上げ等がおこなわれ,昭和35年,36年における給与改訂の際には一般公務員の平均給与引上率12.4%,7.3%にくらべ,研究公務員のそれは16.3%,7.9%と優遇措置が講じられてきた。

しかしながら,これら研究公務員の処遇は他の国家公務員との均衡の問題から十分な改善ができない状態にあつて,民間企業等における研究者と給与の上でくらべるとかなりの較差が生じている。

なお,大学教官についても,同様な問題があり,その処遇の適正化が望まれている。
6. 新技術開発事業団

新技術の工業化については,日本開発銀行融資の道は従来からあつたが,企業化に不安の伴うものについては,積極的に行なわれない傾向があつた。そのため,昭和36年5月「新技術開発事業団法」を制定し,新技術の開発企業化をはかり,完成した技術としてわが国産業界に提供させるため,「新技術開発事業団」が発足した。これらに対する国の出資は昭和36年度3億円,37年度4億2,000万円である。

その業務内容は,(1)新技術の調査,(2)調査した新技術の評価,(3)企業に対する新技術のあつせん,(4)委託による新技術の開発,(5)開発成果の普及,(6)これらに附随する業務からなり,その委託による開発の仕組を示せば, 図II-4-4 のとおりである。
7. 普及啓発団体に対する助成

国は一般国民に対する科学技術知識の普及啓発のため,団体に対する助成を行なつている。

とくに昭和35年設立された日本科学技術振興財団に対しては,昭和36年度1億円,37年度1億5,000万円の助成を行ない,同財団の産学協同センターの充実,博物館の建設等の促進をはかつている。

図II-4-4 新技術委託開発の仕組


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