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第II部  科学技術発展の基盤
第3章  情報活動
II  科学技術情報活動の現状



1. 情報業務
(1) 1次情報資料の作成,発行

1次情報資料とは,研究ないし調査の結果を図書,逐次刊行物,特許明細書,レポートもしくは冊子等の形で発表するもので,科学技術情報活動では図書よりもむしろ逐次刊行物,レポート類が重要視される。

学術的な逐次刊行物としては,大学紀要,い報,学会誌,研究機関誌,会社,出版社等の発行する技術雑誌等が主なものであり,わが国においては現在1,200〜1,300種が出版されている。これらの雑誌は一部の例外を除いて,論文が投稿されてから雑誌に掲載されるまでに時間がかかり,また,なかには雑誌の編集方針が不明確で種々雑多の論文が混在し,情報活動を行なうのに障害となつているものもある。
(2) 情報資料の収集および閲覧

わが国における主要情報機関の昭和37年度における科学技術関係外国学術雑誌の収集計画を見ると,国立国会図書館が7,000種,日本科学技術情報センターが3,500種(理工学のみ)となつているが,世界の一流機関では理工学の分野だけで1万種以上を収集しているものもあるので,わが国でも収集量を大巾に増加する必要がある。また,収集整備に特に力を注ぐべきものとしては技術レポート,会議資料等があげられる。

収集資料を閲覧に供することは,図書館の主要な任務であるが,一般に閲覧設備が不備であり,レフアレンス・サービス(閲覧者の質問に応答し,参考になるべき図書,資料を提供し,研究者の補助となる仕事をいう。)も不十分である。
(3) 2次情報資料の作成・発行

2次情報資料は,1次文献を含む各種の情報資料に種々の処理を施して整理したもので,情報の集積の中から必要な情報をとり出すための用具であつて,文献情報を主体とする2次文献類と,人,団体,学術資料等を対象とするリストないし索引類とに分けられる。
(a) 図書,雑誌目録

図書,逐次刊行物等の蔵書目録と,それらをさらに地域別または専門分野別に総合した総合目録は,情報活動の道具として最も基本的なものである。

表II-3-2 わが国における逐次刊行物総合目録

わが国においては,これらの道具の整備が不十分で,図書館活動の振わない原因となつている。また,雑誌類の総合目録も 表II-3-2 のようなものが出版されているが,一部の専門領域や限定された範囲の図書館につき作成されているにすぎず,全国的な情報機関を包括したものはまだ作成されていない。
(b) 記事索引

記事索引は,文献調査の最も有力な道具であるが,最近,情報の速報性が特に重要視されて索引誌に対する要求が増加してきているので,内外の科学技術文献を網羅的に収録した索引誌を整備するとともに,索引誌の形式,分類法等について研究が進められている。

自然科学関係の専門索引誌としては,2,3の例はあるが,むしろ各専門分野においては抄録誌に付属した索引がそれぞれ記事索引の機能を果しているのが現状である。雑誌によつては掲載論文の記事を半年ないし1年ごとにまとめて,大まかな分類をしているものがある。

自然科学全般を対象としたものでは,国内の学術雑誌の主要なものについての記事索引が国立国会図書館から出版されているが,分類方法および分類技術の点でなお問題がある。
(c) 抄録誌

わが国抄録誌の代表的なものは,海外文献の抄録誌として日本科学技術情報センターが出版している科学技術文献速報が,国内文献の抄録誌として化学総覧,JapanSc-ienceReview等30数種の定期刊行物があるが,最近の傾向として工学部門の学・協会誌が関連分野の抄録を掲載しているものが多く,また,大会社の研究所などでは社内用として文献抄録を作成しているものもある。

しかしわが国の抄録活動は一般には

1)取材情報源の範囲が十分広くない。
2)抄録の質(テーマの種類,抄録内容など)が概してよくない。
3)速報度が十分でない。
4)索引の整備が不十分である。

などの不満があり,国際的な水準に達するには相当の努力が必要である。
(d) 総説,展望などの解説誌

将来,情報量の増大と専門分野の細分化が一層進むと思われるので,専攻分野以外の情報の吸収消化を容易ならしめるため総説,展望などの解説誌の整備が要望されている。
(e) 学・協会,研究機関,科学技術者および

学術資料の索引ないし目録これらは情報活動の基礎資料として重要であるが,現在,一部の分野について精度の低いものが作られている程度であり,内容的にも不十分である。
(4) 情報調査

情報調査とは,科学技術に関する質問に対して,情報機関が資料を調査して答えることであり,一般調査と専門文献調査に分けられる。前者は図書雑誌総合目録,科学技術者のリスト,団体のリスト等の比較的簡単な資料によつて一般的に答える程度のものであるが,わが国ではこのような調査サービスはほとんど行なわれておらない。後者は科学技術の専門的課題についての関係文献を調査するもので,過去に遡及して関係文献を検索して答えるものと,刻々に発表される新しい文献の中から指定された課題に関係あるものを選択するものとがあり,ここでの問題は,論文が内包している科学技術上の要素ないし概念をいかに分析して分類ないしコードづけを行なうかということと,どのような検索方法を採用するかということである。
(5) 文献の複写および飜訳

文献の複写は複写物の提供サービス以外に,情報機関相互の資料貸借の一方法として行なわれており,複写設備も非常に普及してきたが,相互の連係が不十分なため施設の相互利用が円滑に行なわれていない。次に文献飜訳は現在日本科学技術情報センターが公共的飜訳サービスを行なつているが,最近における諸外国文献の重要度が増しているので飜訳サービスの強化が必要である。
2. 科学技術関係の情報機関

わが国における科学技術関係の情報機関の現状は,概略 図II-3-2 のとおりであるが,それらがサービスを提供する対象の相異により大別すると,一般に対してサービスする機関(公共的情報機関)と,自己の所属する機関の内部にだけサービスする機関およびその中間のものとの3段階に分かれ,最初の代表的機関としては日本科学技術情報センター,公共図書館などがあり,2番目のものは,企業,大学,試験研究所などがあり,中間的なものとしては国会図書館があげられる。なお,この3者以外の性格のものとして文部省学術情報室,学・協会などがある。

情報機関本来の任務は,情報の利用者と緊密な接触を保ち,積極的に情報の提供を行なうことであるにもかかわらず,2〜3の例外を除いて依然として陳腐な機構,運営をつづけているため十分な機能を発揮し得ないでいるものが多い。
(1) 日本科学技術情報センター

この機関は,昭和32年に政府と民間の共同出資により設立された特殊法人であり,わが国における科学技術に関する中枢的情報機関として,内外の科学技術情報を迅速かつ適確に提供することにより,科学技術の振興に寄与することを目的としている。

現在では理工学および原子力関係の外国雑誌約3,500種,アメリカ,イギリス,西ドイツの化学関係特許資料約2万4,000件(年)を収集し,次のようなサービスの提供をしている。

すなわち,科学技術文献速報の発行,外国特許速報の発行,複写,飜訳,調査サービスの実施が行なわれている。

なお,将来における情報処理量の増加にそなえて電子式検索機JEIPACによる文献検索の試験,研究を行なつている。

最近,複写,飜訳,調査等のサービスがいちじるしい伸びを示し,総合情報機関として順調な発展をとげているが,まだその規模およびサービスの質において決して満足できる段階に達していないので,昭和36年度から第2期拡充計画として外国雑誌収集量の増加(6〜7,000種),国内情報の提供サービスの開始,生物学分野の提供サービスの開始および機械検索のためのコード化の完成と,それに伴う調査サービスの強化を計画し,整備充実につとめている。
(2) 文部省学術情報室

これは大学学術局の学術情報主任官の下にある組織であり,主として大学および学界関係の情報活動を中心として学術文献の刊行に対する補助金の交付,主要大学図書館における学術図書および雑誌についての総合目録の編集と要覧の作成,研究者,研究機関,学・協会等の調査および国内の重要な研究論文の欧文抄録誌Japan Science Reviewの編集等の業務を行なつている。
(3) 特許庁資料館

特許庁資料館は,国会図書館の支部図書館の一つであるが,内外の特許資料を網羅的に収集しているので,科学技術情報活動の面で重要な地位を占めている。この機関は,特許の審査官,審判官等の部内者と,外部一般との両者にサービスを行なつており,主な業務としては,わが国の特許公報その他の特許資料の出版および閲覧,外国特許資料の収集および閲覧,地方の主要都市の図書館に対する特許資料の配布およびわが国特許資料に関する索引の作成等を行なつている。

現在,外国特許資料に関して処理が不十分であるので,資料の収集範囲の拡大と索引の作成が要望されているが,昭和37年度から外国特許の抄録を部内用として作ることになり,準備を進めている。

図II-3-2 わが国の情報機関(自然科学関係)の現状


(4) 国立国会図書館

国立国会図書館はわが国における唯一の国立図書館で,上野図書館,静嘉堂文庫,東洋文庫,大倉山文化図書館のほか中央諸官庁の図書館を支部図書館として,図書館活動の中心となつている。

科学技術関係の業務は科学技術資料参考室を中心として行なつており,ここでは納本制度による国内の各種図書館資料のほか,諸外国の逐次刊行物5,000種,アメリカのAECレポート,PBレポート,NASAレポートなどをはじめとする各種レポート類等を収集して,それら資料に対するレフアレンス・サービスや複写サービスを行なうとともに,主要産業都市におけるPBレポート・センターの設置,国内の自然科学関係の定期刊行物についての記事索引の編集,刊行,各種レポート類の目録の作成等を行なつている。
(5) 公共図書館

公共図書館は社会教育の施設として設けられたもので,現在では 表II-3-3 のごとく,本館と分館を合わせて全国で約740館あるが,ほとんどが人文,社会科学の図書に重点をおき,一応科学技術関係の文献が整備されているとみられるものは2〜3館にすぎない。

表II-3-3 公共図書館の現状


(6) 学・協会

近年,学・協会の数は急速に増大する傾向にあるが,文部省の資料によれば,学会の総数約700のうち300程度が自然科学関係のものとなつている。

学・協会における情報活動は,研究論文を掲載した雑誌の発行と各種の会合の開催であるが,中には抄録誌を編集発行しているものもある。しかも,わが国の学・協会は一般に財政的に苦しいためその活動が十分でなく,学・協会誌についてもII第1節(1)「1次情報資料の作成,発行」の項で述べたような批判がなされている。
(7) 大学,国公立研究機関

大学には図書館をおくことが義務づけられておりいずれの大学にも図書館は設置されているが,その中で一応充実していると思われるのはいわゆる旧制国立大学および一部の私立大学の図書館にすぎない。また一般に,専門的な情報の収集,整理は研究室単位で行なわれる場合が多く,図書館の利用が十分でない。また国公立等の研究機関においては,経費および人員等の関係から情報活動は余り活発でない。
(8) 企業の情報組織

企業における情報活動は,一般に研究所,技術部等の企画室,図書室等を中心として行なわれているが,その業種ならびに業界における地位等の条件により,情報活動の整備状況にいちじるしい格差が認められる。 表II-3-4 は,わが国において比較的情報活動を活発に行なつていると思われる一流企業の情報活動の例であるが,これらの企業では研究費の3〜5%に当る情報経費をかけており,諸外国の例に比べてその割合は決して少なくない。しかし,経費の絶対値が小さく資料の購入に重点がおかれている状況にある。

最近,情報活動の重要性に対する認識が深まりつつあり,大規模な情報処理機構を計画する企業も現われているが,なお一般的には,情報組織に有能な人材が配置されず,旧態依然たる図書,雑誌の保管管理を行なうにとどまり,研究者,技術者などへの積極的な情報の提供があまり行なわれていない。

表II-3-4 わが国の企業における情報活動の例


3. 情報業務従事者

科学技術情報活動を有機的に行なうには,次の3者の連けいある活動が必要である。

1)司書
2)2次情報資料の作成,情報調査活動などを主たる業務とする情報専門家(ドキユメンタリスト)
3)抄録,飜訳等の業務に協力する外部の科学技術者

これらのうち,特にドキユメンタリストは,科学技術に関する素養,数ヵ国語の読解力,情報処理に関する技術などをかねそなえていることが要求されるので,ドキユメンタリストを確保することは情報活動振興の中心的な課題となつている。

現在,わが国では,ドキユメンタリストとみなしうる人はきわめて少ない。一方司書の養成機関としては,文部省の図書館員養成所と慶応大学等2〜3の大学のコースがあるが,いずれもその教課内容は科学技術情報活動を専門の目的としたものではない。また,日本ドクメンテーシヨン協会等において,国際十進分類法の普及を目的とした講習会を毎年数回行なつているが,目的や規模の点で十分でない。

一般に,情報活動の従事者は待遇が低位におさえられているので,科学技術者としても情報業務に従事することを好まず,有用な人材を集めることが困難となつている。
4. 情報処理技術
(1) 分類法

一般の図書館においては,図書,雑誌の分類に日本十進分類法(NDC)を用いているところが最も多い。科学技術文献の整理には国際十進分類法(UDC)がより適しており,専門図書館や学・協会における論文の整理にはかなり使用されているが,まだ十分ではない。
(2) 検索法

一般には,普通のカードによる検索が行なわれているが,一部の企業ではホールソート・カードを用いている。また,会計統計機によるパンチカード方式の採用を計画しているところもあるが,要は取扱う情報の量と種類に適した検索方式を採用することである。

電子計算機を用いた検索方式については,日本科学技術情報センターがJEIPACという装置により分類コード化等の研究を行なつているが,この方面の実用化はなお時日を要するものと思われる。
(3) 機械飜訳

わが国においては,昭和34年春,通産省電気試験所においてYAMATOと称する初歩的な英文和訳機が発表され,やや遅れて,九州大学の超高周波研究室でも独文和訳機の試作が行なわれた。世界の各国においてもこの方面の研究に特に力を入れている。将来においては翻訳の問題は文章構造の研究が主体となると考えられるが,関連分野の科学者の協力体制は,まだ十分とはいえない。
5. 情報活動における協力組織

従来の図書館活動においても,文献資料の収集分野の協定,文献資料の交換ないし相互貸借などの面で協力の必要性が叫ばれてきたが,科学技術情報活動においては文献量の増大とサービスの多用化により,有機的な協力の必要性が一層増大した。

図書館相互の協力組織は,日本図書館協会を中心として学問分類別,または機関の性格別等による団体が多数あるが,なかでも医学および薬学の分野が比較的充実しており,また,官公庁図書館,民間諸団体,研究機関の図書館等により構成された専門図書館協議会は,国会図書館の活動との結びつきも強く,有力なものである。一方,日本ドクメンテーシヨン協会のように,ドキユメンテーシヨン関係者を中心とする団体もいくつかあり,科学技術文献活動の振興に大いに貢献している。

しかし,新しい観点から情報活動を画期的に振興させる場合,さらに強力な組織化が必要とされている。
6. 文献資料等による国際的情報交流

文献資料等による情報の国際交換は,主として

1.わが国の大学,学協会,研究機関等と,海外の関連機関との学術資料の交換
2.わが国の情報機関と海外の機関との協定による政府出版物,特許資料等の交換

などの形で行なわれているが,国際的な情報交流の体制を整備,強化するという観点から,わが国の重要文献の欧文誌の作成,国際的な抄録事業への協力,ユネスコ,国際ドキユメンテーシヨン連盟(FID),国際標準化機構(ISO)などの行なう国際的情報交流促進事業への協力などを強化する必要がある。

なお,日米間の情報交流の促進については,日米科学委員会の議題としてとり上げられており,今後の進展が期待される。


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