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第II部  科学技術発展の基盤
第3章  情報活動
I  科学技術情報活動重視の傾向



1. 情報活動の重要性

科学技術情報活動は,研究活動をはじめ生産,教育等の活動の円滑な遂行のために必要欠くべからざるものである。たとえば研究活動において,文献調査が不十分であつたため,すでに解決されている課題について,莫大な費用と時間とを浪費した例は数多く知られており,また企業経営においても,社内の研究開発,市場,製品の寿命,販売等の問題の処理の基礎となる必要な情報が欠乏すれば,企業に重大な損害を与えることにもなる。

従来,文献資料の収集,整理とその利用は個々の研究者または研究室等が必要に迫られて行なつてきたものであるが,近年になつて

1.世界的に研究規模が拡大して,科学技術情報の発表量がいちじるしく増大した。( 表II-3-1参照 )
2.科学技術の分野が専門化するとともに錯綜してきたので,一つの文献が多方面から利用されるようになつた。

などの理由から,今までのような個別的な入手方法では,情報の吸収,利用が極めて困難なものとなつてきたので,新しい情報を抄録誌,索引誌等の形で迅速に提供するとともに,依頼に応じて,特定の課題に関する一連の情報を調査して提供するようなサービスが要求されている。アメリカのCase institute of Technologyの調査(1958年)によれば,アメリカの化学研究者は,その研究時間を情報の入手と発表50.9%,実験研究32.1%,資料処理9.3%,思考と計画7.7%の割合で消費しているとのことであり,この例でみるように,研究時間の大半が情報活動に使用されていることからも,情報活動への要請がいかに大きなものであるかを推測することができる。

表II-3-1 全世界における科学技術文献の発表量


2. 情報の流通と情報機関

知識がその所有者から需要者に伝達される過程において,その流通を円滑ならしめるために情報サービス機関の果す役割は極めて大きい。具体的な情報提供の形としては, 図II-3-1 に示すように各種各様のものがあるが,これらの仕事は常時発生する新しい情報資料の提供と,依頼に応じた情報の提供との2つに大別される。

情報サービス機関のうち,図書館は従来知識の保存を目的とする図書,雑誌の収集,保管に中心がおかれ,そのサービスは閲覧,貸出し,読書相談等に限られていた。しかし近年,単に知識を保存するという活動にとどまらず,進んで知識を提供する活動の必要性を認識して,目録,索引等の提供を行なうものもある。

図II-3-1 情報流通の一般的な機構

専門情報機関は,図書よりもむしろ雑誌,レポート類の論文を対象とし,抄録,索引等の提供,依頼に応じた文献の調査,飜訳あるいは複写等のサービスを行なう機関であり,この種の活動が科学技術情報活動の中心となる。この機関は必要度の高い学問分野から漸次設けられるのが世界の大勢であつて,学問分野における情報の性格とその利用者の構成などによつては,従来の図書館活動ないしはその延長程度のサービスで十分なものもある。

一方,大学,研究機関,学・協会あるいは出版社における学術的な雑誌,あるいは抄録誌,索引誌等の出版も重要な情報活動の一部門である。
3. 情報活動の推移

わが国における科学技術情報活動は,第2次大戦によつていちじるしく立遅れ,とくに外国文献の入手は困難な状況であつたが,昭和21年7月学術研究会議に学術文献調査研究特別委員会が設けられ,総合目録の編さん,国際図書交換,マイクロドキユメンテーシヨンの促進を図つた。またその頃,国会図書館の設置,大学図書館,学校図書館および公共図書館等の関係法律の整備または制定など図書館に関する一連の施策がなされた。

昭和23年12月,科学技術行政協議会の発足とともに科学技術情報活動の強化がとりあげられ,昭和25年3月「学術情報所」のあり方について諮問を受けた。昭和27年6月日本学術会議は「学術に関する文献資料,研究機関および研究状況を調査し,学術の進歩を促進する機関として,強力な組織を文部省に設置すべきである」との答申をした。これに基づいて昭和27年8月に文部省の学術情報室が設置された。ここでは各種の学術文献資料目録の作成,外国資料の飜訳出版,Japan Science Reviewの刊行などの業務を行なつている。

また同年,国立国会図書館はP.Bレポートを一括購入し,また原子力関係資料の収集にも着手し,科学技術資料参考室を設けた。その後,文部省は国会図書館と業務の分担を決めてその機能の充実をはかつてきた。

昭和31年,科学技術庁が発足して科学技術情報活動の振興をとりあげ,昭和32年8月,日本科学技術情報センターが設立され,抄録誌の提供,文献の調査,飜訳,複写等のサービス業務を総合的に行なう近代的専門情報機関が出現した。現在ではまだ業務の範囲が理工学と原子力の一部に限られているが,着々と実績をあげている。

また,科学アタツシエの派遣は,昭和29年9月にはじめてアメリカに1名派遣され,現在ではアメリカ,イギリス,西ドイツ,フランス,ソ連の5ヵ国に6名派遣されて科学技術の情報交流の促進に当つている。

さらに昭和35年10月,科学技術会議は第1号答申において,情報活動の整備強化の必要性を指摘し,科学技術者の養成および研究活動の振興とならんで重要な政策の一環として打出している。

なお,民間企業のなかには,科学技術情報活動の重要性を強く認識して,自社で大規模な情報処理組織を整備しようとする動きがある。


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