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第II部  科学技術発展の基盤
第2章  人材養成
V  企業内における人材養成

企業が,その内部で技術者や技能者の教育や再訓練を行なう場合に,その目的とするところは多種多様であるが大別すれば2つのものがみられる。

その1は,技術者,技能者の新たな供給源を企業の外から容易に求め得られない現状において,企業自らの手でこれらの者を養成しようとするものである。この傾向は,近来,とくに注目されているものであつて,従来から行なわれてきた職業訓練法にもとづく部内技能者の養成のための事業内職業訓練のほかに,企業自らが教育機関を設置して(たとえば鉄鋼連盟の鉄鋼短期大学,日立製作所の日立工業専門学校など)新たな中級技術者の養成をこころみたり,あるいは,既採用の人文系職員や技能者に対して,補充教育,追加訓練などを行なつて,技術者不足の補充にあてるなどの措置がこれである。

その2は,上述したような量的な面の補充策としてではなく,すでに就業している技術者や技能者に対して,その質的な向上をはかつて,日々に進展する科学技術の進歩発展に対応してゆくよう,これらの者に再教育,再訓練の機会を付与することである。たとえば各企業において,外国からの新しい技術の導入を行なうに当つては,それを十分に会得して実用に供することはもちろん,その完全な習熟から,さらにその改造,合理化に資するにとどまらず,これら先進国の今後におけるさらにすすんだ技術に対抗しうるだけの独創的な能力を養うためには,技術者や研究者がつねに新しい知識技術を身につけていなければならない。

以下に昭和36年に科学技術庁が行なつた「技術者の再訓練および技術者,研究者の再教育に関する調査」の結果によつて考察を加えてみよう。

まず技能者の再訓練を実施している企業は昭和35年度では回答総数423社の約40%にあたる168社,昭和36年度においてもこれを若干上廻る程度である。特に資本金が100〜499万円程度の小企業では資本金10億円以上の大企業の実施率と比較すると,これら大企業の3分の1に及ばない( 図-2-5 )。

図II-2-5 技能者の再訓練

業種別では最も実施率の高い製造業でも42%であるが,技術革新に対処して伸長率の高い化学工業,機械器具製造業などは55%以上の実施率である。また再訓練の実施の形態,施設および経費については,大企業では自社内に訓練施設を設けて独自の形態で実施しているが,中小企業では設備,資金,指導能力等の面でその余裕がなく訓練も他に委託したり派遣することが多い。

つぎに現場の技術者または科学技術の研究者の再教育についてみれば,技術者や研究者に対する再教育は,最近の学問,技術の進歩と新しい管理技術の導入によつてようやくその必要性が認識されてきている。しかし実施状況をみると技能者の再訓練に比べてさらに実施している企業は少なく,それも大企業に集中し,一般的には実施率は極めて低調であり( 図II-2-6参照 ),再教育も企業外に派遣して実施するのが主体となつている。

図II-2-6 技術者・研究者の再教育

以上の調査結果から,企業における再訓練,再教育に対する関心は全般的にうすいといえる。その原因としては「日常作業が多忙であり時間的に余裕がない。」「よい指導者が得られない。」などがあげられているが,とくに中小企業においては,さらに問題点も多くまだ訓練の計画性も体制も十分に整備されていないようであり,現状のままではその効果的な実施は望めない。したがつて再訓練,再教育活動の今後の発展のためには,企業の一層の自主的な努力は勿論であるが,企業の意欲を高めるために産学協同体制の確立や再教育,再訓練に対する税制上の優遇措置,政府助成の講習会開催,講師のあつせんなども促進すべきであろう。


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