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第II部  科学技術発展の基盤
第2章  人材養成
IV  技能者の養成

産業構造の高度化や技術革新の進展に伴つて,技能者の職務内容も変化し,従来のようなカンと経験とをもとにした技巧に代つて,新しい技術知識をもつ技能者の存在が要求されるようになつた。現在,わが国における技能者の組織的養成は,主として職業高等学校におけるものと,職業訓練機関におけるものとがある。また,技能者の身分の安定および技能水準の向上をはかるために技能者検定制度がある。以下にその現状と問題点について概説してみよう。
1. 工業高校卒技能者の需給

昭和34〜45年に約43万9,000人の供給不足を生ずるという文部省の調査にもとづけば,これに対応するため,昭和36〜42年間に,工業高校の定員(昭和35年度現在8万6,600人)を少なくとも8万5,000人増員する必要があるとされている。したがつて,文部省では昭和38年からの高校入学生の急増をも考慮して昭和36年度以降工業高校の定員も大巾に増員する方策をとつている( 表II-2-9参照 )。この計画が実現した場合には,工業高校卒業生に対する供給は 表II-2-10 のとおり一応昭和41年からはその各年ごとの不足数を上廻るようになるものと考えられる。

表II-2-9 工業高校増員計画

表II-2-10 工業高校卒業者の需給数

しかし,この場合でももつとも問題となるのは,教員確保の点であろう。文部省では,昭和36年度から,工業教員の不足に対処するため国立工業教員養成所を全国9ヵ所の国立大学に設置した。しかしながら,産業界の技術者不足に起因する教員の流出を考慮するとき,果してこのような措置のみで事足りるかどうか疑問であり,教員に対する処遇の改善,現職教育の機会の付与,産業界の人材の活用などについてより抜本的な方策がなされなけれぱならない。
2. 職業訓練修了技能者の需給

現場の生産工程において技能的な作業に従事する技能者は,最近では,産業界の成長過程における急激な需要増と,それに対応する技能者の育成の立ち遅れからその不足数はいちじるしく,過去3ヵ年の労働省の調査結果をみれば毎年不足数は増大する傾向にある( 表II-2-11参照 )。この調査結果によれば,職種ではとくに,建設業関係職種が最も不足率が高く,業種別ではやはり建設業が不足率は高くなつているが,不足数では,たとえば昭和37年2月の調査では,製造業が全体の8割以上を占め,中でも機械金属関係のいわゆる重化学工業における不足が目立つている。また事業所の規模による技能者の不足状況は,従業員数15〜99人が29%で最も高い不足率で,ついで100〜199人が23%,200〜499人が17%,500人以上では11%というように中小企業における不足率が高い。

表II-2-11 技能者の不足数の推移

これら不足に対応するため労働省では,昭和35年11月に職業訓練長期基本計画( 表II-2-12参照 )を策定した。これにもとづき基礎訓練を施す一般職業訓練所および専門訓練を行なう総合職業訓練所のいわゆる公共職業訓練施設の拡大充実と事業内職業訓練の助長推進が望まれる。またとくに生産技術の進歩に即応できるよう中堅技能者に対する再訓練を強化して計画の実現をはからなければならない。
3. 技能検定制度

昭和33年7月,職業訓練法の施行に伴い,わが国においても労働者が技能者として有する技能および知識の程度を判定し,これを公証する技能国家検定の制度が創設された。技能検定は職種ごとに技能の程度に応じて1級および2級に区分して行なわれ,昭和34年度に機械,仕上,板金など5職種を実施して以来,逐年実施職種を拡大し,36年度までにさらに配管,機械検査,化学分析などが追加され17職種について実施された。技能検定の合格者は,級別および職種名を冠して「技能士」と称することができるが,昭和36年度末までの合格者は,1級技能士2万5,777人,2級技能士4万0,177人に達している。

表II-2-12 職業訓練長期基本計画

技能検定は,労働者の技能習得意欲を増進させるとともに,わが国産業における技能水準の向上を図ることと技能者の身分の安定を目的とするものであるが,最近では企業における能力主義を中軸とした労務管理制度への移行傾向,たとえば能力給を中心とした賃金体系の導入,人材登用型の人事管理への切替え,労歴偏重の打破等に伴い,これが手段として技能検定を活用する気運が生じつつある。このため技能検定を早急に産業界全般にまで及ぼし,その中枢を占める職種の大部分について実施するようこの制度の拡充を検討する必要がある。

また,今後はこの制度の普及によつて一般に対しても技能尊重の精神を滲透させ,技能者の社会的地位の向上をはかり近代産業に相応した新しい技能者の養成に努めなくてはならない。


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