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第II部  科学技術発展の基盤
第2章  人材養成
III  科学技術者の質の向上-大学制度における問題点

科学技術の振興のためには,その担い手である科学技術者の量の確保が必要であることはもちろんであるが,それと同時にこれらの科学技術者が真にその推進の原動力となりうる資質をもつことが欠くことのできない要素である。
1. 大学の目的と性格

このため,これら科学技術者の育成母体である教育機関に対する要請も多様となつてきた。

とくに,その種別,教育内容,方法,年限などについては,今日いろいろな要望が出されている。中央教育審議会は「大学教育の改善について」の諮問に対する中間報告として,昭和36年7月,「大学の目的・性格」について報告した。

この中間報告は,現在における高等教育機関に対する要請の広範かつ多様化という事態を背景として,大学の性格,機能も大いなる変化を遂げつつあることを認め,大学は一面では高度の学問研究による文化の維持向上という伝統的使命を保持するとともに,他面では社会の要請にこたえて,高い職業教育と市民的教養とを与えるという新たな重要任務を果さねばならないとしている。これは戦後における学制改革が,歴史と伝統をもつ各種の高等教育機関に対して急速かつ一律に同じ目的と性格とを付与したため,現在の大学は科学技術の進歩,社会の発展に応ずるだけの多様な高等教育機関の使命と目的に対応しえなくなつたという見解に立つものである。このような見地からして同報告は今日の大学制度はこれを新しい社会の進歩にみあうものに改善するために,学問研究に専念する研究者の養成と上級職業人の養成とを区別するという観点にたつて,わが国の高等教育機関の目的,性格について,これに対応した種別,さらにはその種別に応じた修業年限,教育内容,教育方法等について対策をのべている。本報告に対して,たとえば大学院の設置はすべての学部をもつ総合大学のみに許されることを原則としていることは教育の中央集権化のおそれがあるとし,あるいは,博士課程の有無によつて学部の運営等に差異を生ずる結果になることを認めている点は,大学の格差を是認してかかつているものであるなど反論も少なくないが,今後,これらの点は慎重に検討されるべきものであろう。とくに,修業年限,学部構成,単位制度,一般教育科目と専門科目との関連,大学附置研究所の教育的機能などについては根本的に再検討がひきつづき行なわれる必要がある。
2. 教員組織と施設設備

大学における教育の効果は,優れた教員を必要数確保することが第一の要件である。ところが最近における教育内容の分化,拡大,さらに大学院における研究指導のために,現在の教員の教育および研究上の負担は旧制時代のそれにくらべて相当に大きい( 表II-2-5 および 6参照 )。さらに実験研究施設設備の大型化,高度化に伴つて必要なオペレーターをはじめとし,図書館,情報部門,工作部門などを担当する職員の需要も増加している。そしてこのような点からみて,現在の大学における教員組織は快して十分なものとはいえず,とくに助手ならびに技術者その他の補助職員の数は,教授,助教授の現定員に比して不足であり,とくに大学院をもつ大学においてそれが甚しい。

また,大学における施設設備の充実は,教育効果を高からしめるためには必要欠くべからざる要件である。しかるに現在の大学では施設設備は老朽化して時代遅れのものが多く,なかにはまだ戦災による損害さえも十分に復旧してないものもみられる。さらに一方では,科学技術者養成計画の推進によつて,各大学とも相当多数の学生定員の増加を行なつたにもかかわらず,これに対応する施設設備の新設は十分に行なわれていない実情にある。したがつて,老朽かつ狭隘な施設と不十分な設備の下において研究と教育が行なわれなければならない状況にあり,将来進展する学術研究や教育の用に供するにふさわしい施設設備とするよう早急に整備する必要がある( 図II-2-4参照 )。また,私立大学の助成についてもさらに充実されるべき余地が少なくない。

表II-2-5 理工系大学教員の・大学院授業のうけもち回数

表II-2-6 国,公,私立大学理工系学部教員1人当り学生数比較

さらに,大学院については,すべて学部教授がその教員を兼ねて担当する建前となつている現状は,教員の指導上の負担の増大を招き,大学院における効果的な研究指導を困難とするばかりでなく,学部における学習指導にも悪影響を及ぼすことが懸念される( 表II-2-7参照 )。

図II-2-4 国立文教施設緊急整備5ヵ年計画による理工系大学施設の現状と将来

表II-2-7 大学院の教員の種類別実数と教員導入率

同様に,その施設設備についても,現在のような学部施設との共用という方法はすでにその限界に達している( 表II-2-8参照 )。

とくに科学技術の発展に伴うより高度の実験実技を必要とする今後において,大学院学生のための実験研究のための場所を提供し得ない状態を招くようなことがあるならばそれは重大な問題である。今後は,専任の教員と専用の施設設備の充実についての検討が加えられるべきである。

表II-2-8 大学院の専用施設の有無


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