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第II部  科学技術発展の基盤
第2章  人材養成
I  科学技術者の需給の現状



1. 増大する科学技術者の需要

最近,科学技術者に対する需要は増加の一途をたどつている。たとえば大学卒業生の採用に関して日経連が行なつた調査結果についてみても,全国主要企業における技術系職員の採用人員は昭和36年3月卒業生については,前年に比して約3割の増加を示し,さらに昭和37年3月の卒業生についても前年比21.4%の増加(事務系は10.3%の増加)を示している( 図II-2-1参照 )。

そしてこのような傾向は,従来の採用人員中に占める事務,技術系の割合を次第に変貌させ両者の占める数値が相半ばする日も遠くないことを予想させる。

さらに,文部省資料のいくつかに基づいて考察した場合にも,これと同様に技術系卒業生に対する需要のいちじるしく高いことがうかがわれる( 図II-2-2参照 )。

とくに,求人難の深刻な工学部関係では,その3割強がすでに6月以前に,71%までが9月末以前に採用試験を終了するというような傾向からしても,企業の技術系職員の確保に対する要望のし烈さの一端がうかがわれる。

このように増大する科学技術者の需要の背景となつているものは一体なんであろうか。それにはいろいろな要因があろうが,その主なものとしてはつぎのようなことが考えられている。

まず,第1に指摘されているものは,経済成長に伴う設備規模の拡大であろう。昭和30年頃を転機として,わが国の設備投資は飛躍的な増大を示した。この活発な設備投資は主として大企業における設備の近代化や合理化を急速におしすすめるとともに,経営規模を拡大し,したがつて科学技術者に対する需要をいちじるしく増大せしめた。第2にあげられるものは,技術革新の進行に伴う技術の内容の変化である。

技術革新の進行による機械装置の連続化,計装化,自動化は,技術の内容を材料の供給,監視業務などを主体とするようにし,現場における直接作業を極度に単純化,単能化していく反面,広汎で単純な作業を効果的に統轄するための科学的な工程管理,新しい機械の整備保守のための設備管理,原材料,半製品,製品の整理のための在庫管理,運搬管理などの部門の整備拡充を要求する。また加工の自動化の進展はその生産管理の厳密性を一層要求するようになつた。このような種々の管理技術への要求は,高度な知識をもつ技術者に対する需要を高め,さらに補助要因として機械装置の構造,作動状態を熟知し,その不測の変化に対応しうる高級技能者の需要をも強めている。さらにこのような技術革新の結果,技術者の種類が細分化し,その結果として各種にわたる専門技術者に対する需要を一層強めるに至つた。

図II-2-1 技術系,事務系大学卒業生の各年における採用割合の推移

図II-2-2 4年制大学の就職決定率の推移状況

つぎに要因の第3としてあげられるものは,企業間の競争の激化であろう。貿易の自由化という国際情勢を背景として企業間における競争はますます激しいものになつている。そして,この競争の場において勝利者となるためには,各企業はその合理化によつて,生産原価の低下,品質の向上をはかるとともに,新製品,新規事業開発のための努力をしようと努めなければならない。その結果投資は投資を生み,技術革新は技術革新を生み,ますます科学技術者に対する需要を高めていくことになる。そしてこのような状況は生産部門においてだけでなく,消費財生産部門においても同様であり,また商社関係にまでもその傾向が顕著になつてきている。

さらに,このような傾向は,大企業においてのみでなく,下請企業にも波及してきた。いかに親企業の技術革新が進展しても,その下請企業の技術的向上がこれと質的量的に同様にはかられなければ,せつかくの技術革新もその実を十分にあげることは不可能である。最近における経済成長は中小企業にも経営規模を拡大し,合理化によつて生産性を向上しようという意欲をもたらし,これら企業は積極的に大学卒業者の人材獲得を意図するようになつてきた。これも,また科学技術者需要の増大の一因である。
2. 科単技術者の供給不足

さて上にのべたような科学技術者に対する需要の増大にもかかわらず,これに対応すべき科学技術者の供給はこれにはるかに及ばない状況にある。前述した日経連の昭和36年の採用状況調査によつても,電気,機械,化学,電子工学,応用化学等の学科卒業生についてはいずれの業種においても未充足の企業がみられ,とくに,それぞれの主要学科卒業生を必要とする該当の関連産業においてこれらが低い充足率を示していることは注目に価する( 図II-2-3参照 )。しかも本調査の対象が大企業であることを念頭においた場合に,中小企業,第3次産業,官公庁方面においては,その未充足の状況がさらにいちじるしいものと推定される。

文部省においては,昭和35年8月,今後10年における大学理工系学生の新規需給について推定を行なつたが,この結果によれば今後10年の需要の累計は約46万人にのぼるが,これに対する供給数は,大学の理工学部の定員が現行規模のままとすれば,約29万人に過ぎず,したがつて累計約17万人の不足を生ずるとしている( 表II-2-1参照 )。

図II-2-3 理学部工学部の学科別充足状況

表II-2-1 理工学系科学技術者の需給数


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