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第II部  科学技術発展の基盤
第1章  研究活動
III  民間における研究活動

民間企業における研究は, 図II-1-3 にみたように,研究費は1,244億円であり,国全体の研究費の68%を占め,また研究者数は4万4千人で国全体の研究者数の49%を占めている。つぎに最近における研究費の推移をみると, 図II-1-16 のとおり,毎年顕著な増加傾向を示し,すでにIの「研究活動重視の傾向」にも述べたように民間企業の研究はいちじるしく活発化してきている。ことに昭和33〜34年ごろからは,中央研究所を設置する等,各企業は研究体制を強化し,従来の生産現場に直属していた研究所,研究部などのほかに,本社直属または独立した株式会社組織の中央研究機関の建設に着手し,あるいは研究所の組織の拡充を行なつて,日常の技術的業務からより基礎的なあるいは大規模な研究活動を実施する体制を整備しはじめている。

図II-1-16 民間企業の研究費の推移


1. 業種別にみた研究活動

昭和35年度における業種別にみた研究活動は, 表II-1-1 のとおりで,製造業が研究実施会社数では91%,研究費では90%,研究者数では92%,を擁しており,わが国産業界の研究開発のほとんどは製造業で行なわれていることがわかる。さらに,製造業のうちでは 図II-1-17 に示すように,電気機械工業(281億円),化学工業(270億円),輸送用機械工業(145億円),鉄鋼業(87億円),一般機械工業(86億円)と5種類の製造業が民間企業における研究費の70%近くを占めている。
2. 規模別にみた研究活動

表II-1-1 のように,研究を実施している企業数は6,575社であるが,このうち払込み資本金10億円以上の企業323社(研究を実施している企業数の5%)が研究費の70%を分担し,研究者の47%を擁している。さらに資本金階層別に1社あたりの研究費の状況をみると 表II-1-2 のように,各企業の研究規模は企業規模によつて格段の差がみられる。すなわち,資本金10億円未満ではたかだか数千万円程度であるが,資本金10億円から100億円未満ではこれが1億7千万円程度となり,100億円以上では実に8億円以上に達している。

表II-1-1 業種別(大分類)にみた民間企業の研究活動

図II-1-17 業種別にみた民間企業の研究費

表II-1-2 資本金階層別にみた1社あたりの研究費と研究関係従業者

なお,昭和34年度において研究費を多額に使用している企業のうち上位の100社(昭和35年科学技術研究調査より)をとつて業種別にみると,化学工業が40社で最も多く,一般機械工業21社,電気機械工業17社,その他22社となつていて,研究費を多額に使用している電気機械工業の企業数が少ないことが注目されるが,これを上位の5社にしぼれば総合電機2社,軽電機2社,化学繊維1社となり,前述のように電気機械工業に属する企業が最大の研究規模を競つている。
3. 国産業との比較

前述のようにわが国における民間企業の研究活動はここ数年間に飛躍的な発展をとげているが,これをアメリカやイギリスと比較すると,なお相当の差異のあることが指摘される。
(a) アメリカとの比較

全米科学財団(National Science Founda-tion)の調査によれば,1953年に36億ドルの研究費を使用していたアメリカの産業界は5年後の1958年には82億ドルと2倍以上の増加を示し,さらに,1960年には105億ドルに達した。これをわが国の規模と比較すれば約40倍であり,アメリカの産業界が政府から研究契約の形で受取つている研究費61億ドルを差引いた産業界自身が支出している研究費のみと比較しても,わが国の17倍という膨大な研究費となつている。

この研究規模の差は本質的には両国の経済規模の差に由来するものであり,わが国の研究費をアメリカのそれに等しくすることは急に望むべくもないが,売上高に対する研究費の比率では同程度あるいはそれ以上の水準の研究投資が望まれる。 表II-1-3 はわが国の昭和35年度の研究費の売上高に対する比率をアメリカの1958年のそれと比較したものであつて,相対的な比較によつてもなお彼我の間には相当の差違があることがわかる。

表II-1-3 売上高に対する研究費の比率の日,米比較


(b) イギリスとの比較

科学技術研究庁(D.S.I.R)の調査によると1955年度の製造業における研究開発費は1億8,320万ポンド(1,840億円)であり,これが1958年度には2億5,380万ポンド(2,560億円)と3年間に39%の増加を示している。

1958年度の数字はわが国の昭和35年度の製造業の研究費840億円の3倍にあたつており,アメリカほどの相違はないにしても,絶対額はなお相当の開きがある。ただしイギリスの産業界においてもアメリカの場合と同様に産業界の研究費のうち約60%が政府の支出によるものであり,民間企業自身の支出する研究費のみについてみれぱ彼我の差はかなり縮小されてくる。
4. 発展方向と問題点

昭和36年度に科学技術庁が日本生産性本部に委託して行なつた調査によると企業の研究投資に対する考え方は 表II-1-4 のとおりである。この表からもわかるように,現在の企業の研究目的は,なお「現存の製品または工程の改良」や「外国技術の導入に伴う開発」というようなことに主眼を置いているものが大きな比率を占めている。

表II-1-4 民間企業における現在および将来の研究投資の考え方

図II-1-18 民間企業における研究者の学問別分布の変化

しかし将来の研究目標としては「各企業は独創的な新技術の研究開発」に主力をおこうと企画しているが,この種のものの研究開発は基礎研究を強化し,また長期的な計画のもとに多額の金と人を組織的に動員することを必要とする。

これに関連して,民間企業の研究者の専門別構成をみると近年基礎的分野の研究者が増加しているといわれている。たとえば 図II-1-18 のように昭和35年の理学系研究者の比率は6%であり,それが36年には8%に高まつていることにもその一端がうかがえよう。

また,企業における組織的研究の歴史は比較的浅いため,研究計画の設定,研究者の人事管理,研究組織の整備,研究成果の評価というような研究を効率的に行なうためのいわゆる研究管理方式はなお十分確立されておらず,アメリカを中心とした諸外国の例に範を求めている現状であるが,わが国の実情に適した合理的な研究管理方式を早急に確立することが必要であろう。

以上は主として大企業を中心にみた民間の研究活動であるが,中小規模の企業における研究活動をいかにして活発化するかも大きな重要な問題である。企業規模の制約から,中小企業における研究活動は,生産活動に直接必要な製品,製造工程の改良や,非常に限られた分野に研究が限定されている。これらの企業においても研究活動を有効に行なつて,大企業では生産しないような特殊な製品を開発し,専門メーカーとして次第に規模を拡げているものもあるが,大部分の企業では研究活動が大企業に比して貧弱なものが多く,これが大企業との間の技術格差の生ずる一原因となつている。

したがつて,中小企業の技術水準を高めるためには,技術研究の助成,企業診断制度の拡充等の施策とともに,共同研究の推進,国・公立研究機関との連けいの強化等を進めることが望まれる。

つぎに,産業界と大学との共同研究体制の同題,いわゆる産学共同研究について述べよう。産学共同研究は,大学における基礎的研究等と産業界における応用研究ないし技術経験とを結び付け,独創的な新技術を生みだす上において,また民間企業内の研究者の養成,再教育の意味において重要なことである。このような産学共同研究体制については,日本科学技術振興財団,日本生産性本部,日本学術振興会などにおいて,受託研究の円滑化,受託研究員制度の拡充,大学教官の顧問活動,文献の共同利用,連絡組織の確立などについて検討されている。

また,国立研究機関においても,産業界との共同研究,産業界からの受託研究等が行なわれているが,その運営の円滑化が望まれている。


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