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  総論
第I部  わが国における科学技術の一般動向
第4章  技術貿易の活発化
II  技術輸出

技術輸出は,技術導入に比べて,その件数も少なく,ロイアルテイの受取も問題にならぬ程少ない。

わが国から,技術輸出が業種別にどのような地域に行なわれたかを示したのが 表I-4-10 である。これによつてわかるように,その輸出先は大部分が低開発国であつて,欧米先進国へは数える程しかない(技術輸出は昭和35年12月末以降のものは許可を必要としなくなり,昭和36年以降については正確な件数がわからないので統計は昭和35年末までのものである)。業種別には水産業が最も多いのは,わが国の水産技術が低開発国の小規模な旧式漁業の改善に役立つためで,その地域もわが国の投資市場の全域に及んでいる。機械工業は,紡織機械が多く,その他に建設機械,造船,農業機械,内燃機関,ベアリング,鉄道車両,ミシン,ボイラ等がある。いずれも低開発国向けである。鉱業関係は技術輸出をするとともに,開発された鉄鉱石,銅鉱石,その他の資源を輸入しようとするものである。建設業は賠償関係の電源開発工事,ダム建設,飛行場建設等で,コンサルタントと施工工事である。電気は積算電力計が多く,その他に電球,変圧器,電話機,交換機,ラジオ,螢光灯等がある。繊維工業は紐類,サラン,合成繊維漁網,ワイシヤツ,メリヤス製造等である。その他には雑貨的日用品が多く,低開発国がそれらの商品を国産化するためのものである。欧米先進国への技術輸出は,昭和35年末までで 表I-4-11 の通りである。昭和30年頃より少しずつ技術輸出が行なわれ34年までにかなり増してきている。

これらの技術輸出によるロイアルテイ等対価の受取は技術導入に比べて問題にならぬ程少ない( 図I-4-11参照 )。しかし年をおつて少ないながらも増加してきている。そして最近の技術輸出は従来の低開発国向けの技術だけでなく,化学を中心とした欧州先進国向けの技術輸出が活発になつており,すでに成約したもの,引き合い中のものがかなり多くなつてきている。( 附表I-4-1参照 )。これは技術導入することにより,技術水準を向上させながら,一方各企業の研究成果が最近かなりあがつていることを示すもので,最近の研究投資の拡大(「研究活動」の章参照)は,さらに技術輸出の面で大きな成果を生むものと予想してよいであろう。そしてこれら近代的な優れた技術は1件当りの対価もかなり大きく,今後の技術輸出による収入に大きな貢献をなすものと思われる。

また,日本の技術に対する評価として,アメリカのChemical Week(1960年昭和35年2月20日号)には「日本における化学技術輸出の機運」と題して,日本で発展した化学生産方式でライセンスの提供の可能性のあるものは現在305種あると報告している。これらはいずれも工業化されているか,または工業化されようとしているもので,主

図I-4-11 技術輸出に伴う外貨受取額と技術導入外貨支払額に対する割合の推移

表I-4-10 わが国からの地域別業種別技術輸出の件数実績

表I-4-11 昭和35年末までの欧米先進国への技術輸出

なものとして次のものをあげている。

(1)パラキシレンの生産方式:その一つは石油ガスからパラキシレンを生産する方法(M石油が昭和35年7月から運転開始し,6,000トン/年のもの)である。他はパラ異性体の収率をあげるために,アルミナ―シリカ触媒,水,水素,を用いて行なう異性化法である。

(2)アセトアルデヒド:水銀触媒の存在下にアセチレンと水を反応させる方法で,現在11,000トン/年の規模で工業化されている。

熱の再循環を行なつて所要エネルギーの節減をはかり,この結果コストが0.063セント/ポンド(50銭/瓩)低減されている。

(3)アミノ樹脂の生産方式:ジメチルアミンを使用する方法よりも安くなるといわれる。尿素,ホルムアルデヒド,メタノールを出発原料として作られる。ある会社が小規模で工業化しており,製品のメチロール-尿素樹脂は,wash and wear加工に用いられる。

(4)アンモニアとシアナミドを出発原料としてジシアンジアミドを作る生産方式で,98%まで収率をあげることができる。

(5)M石油化学が開発したプロピレングリコール法は,中間試験の段階を経て1,180トン/年の規模で工業化されようとしている。

(6)その他,大学,研究機関の開発したものに,次のものがある。

(イ)アンモニアとアセチレンからアセトニトリルの合成で,流動床アルミナ触媒を用いる方式。
(ロ)酸化銀シリカゲル触媒上でシクロヘキサンを空気酸化して高純度アジピン酸を一工程で製造する方法。
(ハ)2種のイソプレン合成方法:その一つはアセトンとアセチレンから,他はエチレンとプロピレンから作られる。この場合後者は立体特異性触媒を用いるもので,中間試験が行なわれようとしている。

(7)プラスチツク,重合体に関するものでは,たとえばポリプロピレンの製法で触媒としてアルキルと金属ハロゲン化合物を併用する方法があり,現在大規模な試験運転が行なわれている。また,酸化ポリプロピレンの重合では,金属アルキル触媒を用いて,白色の弾力のあるゴム状物質を得る方法がある。
(8)医薬品の研究では,(イ)アミノ酸の合成,(ロ)廃または粗糖密からクエン酸の製造,(ハ)ナフチル燐酸のハロゲン誘導体から作られる癌治療薬などがある。

これらをあわせて考えると,わが国からの技術輸出を活発にすることは非常に可能性が大きく,われわれは,もつと自分の技術に自信をもつて,創造性の豊かな技術を積極的に開発すべきであると考える。わが国からの技術輸出は今後に大いに期待できるし,またそれを助成する積極政策が必要であろう。

附表I-4-1 昭和36年以降の欧米先進国向けの主る技術輸出の動向



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