ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
  総論
第I部  わが国における科学技術の一般動向
第2章  総合化傾向の発展
III  プロジエクト・エンジニアリング

化学工業をはじめ石油精製,薬品,繊維,冶金,醸造その他広範な分野にわたつて生産技術が進歩し,ますます専門化し高度のものとなつていくと同時に,それらの生産設備はいつそう大規模化し,その内容もいちじるしく高度化,複雑化してきている。そしてこれらの生産技術と,それを合理的に具体化する生産設備は両者相支え,相補なつてますます進歩していくすう勢にある。そしてその生産設備も主要なプロセス・プラントとその付帯設備を加えると,広大な敷地を必要とし,その建設資金も数百億円を越えることも少なくない時代となつた。このような工場の設計,建設には,技術を合理的かつ有効に組織し,総合化してその生産目的のために最も経済的なプラントを能率よく実現するプロジエクト・エンジニヤリングが必要になつてきている。このような総合技術は,外国では日本より早くから活用され,すばらしい効果をあげてきたが,わが国でその重要性が認識され,プロジエクト・エンジニアリングを業務とする会社が現われはじめて,積極的な役割を果すようになつたのは比較的最近のことである。

そして装置工業が,エレクトロニクスの発達によつて自動制御化が進み,近代化されて,工場の全生産体系が1システムの工場となつて運営され,システム・コントロールを行なうようなシステム・エンジニヤリングを実現するようになると,技術面と経済面での必要な知識を総合した高度のプロジエクト・エンジニヤリングがますます必要になることが予想されている。

プロジエクト・エンジニヤリングの出現がとくに要望されたのは,わが国では戦後の石油精製,石油化学プラントの出現以後のことであつて,技術革新を代表するこれらの装置工業は,そのプロセスの進歩と,近代化の速度も速く,それだけに他の生産工業よりもプロジエクト・エンジニヤリングが不可欠のものとなつてきている。

なお,わが国の各地で現在計画されている石油化学,鉄・化学などのコンビナート建設にあたつては,とくにプロジエクト・エンジニヤリングの活用が期待されよう。また別の利点として,これを活用するときは,外国技術の導入の場合,導入技術範囲が最小限ですみ,ある化学会社ではそのため導入対価の支払が10分1の以下ですんだという好例がある。今後の重化学工業化の進展とプラント輸出入にあたつて,その重要性はますます強まるであろう。

以下わが国における現状と問題をみてみよう。

わが国のエンジニアリング会社の歴史は非常に新しく,その数もきわめて少ない。しかし,ここ数年の傾向として新しい技術的業務を目的としたエンジニヤリング会社が誕生しはじめたこと,おとび有力化工機製作会社や,化学プラントに積極的な造船会社が,いずれも総合的な工場設計,建設のためにプロジエクト・エンジニアリング・チームの編成に非常な関心をもつてきている事実は特筆すべきことであろう。プロジエクト・エンジニアリング・チームは非常に数多いスタッフの技術者を必要とするものである。

一方,既にエンジニアリング会社として活躍している会社をみると,これらの会社はいずれも外国の有力な会社と技術提携をし,その業務内容も基本設計を外国より導入したものについてのプロジエクト・エンジニアリングを行なつているのがその大部分で,自己の技術によるものは少ない。

この点わが国のエンジニアリング会社の伸びえない原因にもなつている。

また,日本の国内のマーケットの大きさとか,その不安定性,および研究開発のための投資が十分安定的にできないことも,わが国のプロジエクト・エンジニアリングの発展を妨げる原因といわれている。

外国のエンジニアリング会社は,基本設計のために文献を約80%利用し,残りの20%を研究によつて補うというのが大体のやり方である。この文献比較をしながら基本設計の基礎資料にするということは,工場設計のための虎の巻ともいうべきものであるが,わが国の現状では文献の消化が困難であるといわれている。また,学会等で発表されたものに対する理解も少なく,従つてデータの追加をするための研究も乏しくなるのが現状である。

一方,化学会社等がその技術を輸出するために,エンジニアリング会社を経由して行なうということがまだ一般的になつていない。そして製造会社とエンジニアリング会社との連けいが必ずしも十分でない。しかも,技術が売りものになるという慣習が十分徹底していない。これらの諸点はいずれもプロジエクト・エンジニアリングの発展を阻害していると考えてよい。

最後に,プロジエクト・エンジニアリングを組織するための人材の確保に困難があることは,わが国での最も大きな障害の一つである。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ