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  はしがき

科学技術は,人類の歴史において今までに見られなかつたような驚異的な速度で進展しており,科学上の重要な発見や新製品,新方法の発明改良が相ついで行なわれ,経済,社会および文化の発展の先導力として重要な役割を果し,国民福祉の増進に大きく寄与している。

また,アメリカ,ソ連の衛星船打上げによる宇宙開発競争などに見られるように,科学技術の高度の水準,研究開発の輝かしい成果は,国力の象徴として国際政治においても大きな影響を及ぼしている。

今や世界各国は,あらゆる施策の基盤として科学技術の振興に力を注いでおり,科学技術競争時代を招来しつつあるとも言える。

このような競争の反面,南極観測や海洋調査に見られるような国際的共同事業が広く行なわれるようになつてきており,また西欧においては原子力,宇宙などのように一国の国力をこえた大規模な研究分野に関して地域的共同体制を結成する動きが活発となつてきている。

最近における科学技術の発展の特徴は,科学と技術の結び付きが極めて強くなつたことがあげられる。すなわち実用とは遠くかけはなれていると考えられた基礎的な科学の研究成果が直ちに新しい技術に結実し,また進歩した技術を利用することにより科学の研究が飛躍的に促進されている。

さらに,解決が困難であつたような複雑かつ大規模な課題についても,多くの分野の科学技術を総合化することによつて解決されるようになつてきた。

従来,わが国においては科学と技術を組織的に結び付けることが不得意とされていた。現にわが国経済の成長の先導力となつた技術の大部分は先進諸国からの導入に多くを依存しており,特にここ2,3年技術導入は極めて盛んである。しかし今後においては,わが国独自の科学技術を創出し,先進諸国と対等の立場で科学技術の活発な国際交流を進めることが不可欠であり,そのため組織的な研究体制の整備の必要性が説かれている。

またわが国産業の成長と人口の都市集中があまりに急速にすぎたため,災害防除や生活環境改善のための対策がこれに伴わず,遅れが目立つてきているので,これらを克服し,改善していくためにも,わが国の国土条件,生活環境に適合した新しい総合化された科学技術の発展が強く要請されている。

このような情勢に加えて現下のわが国では,欧州共同市場の発展と貿易の自由化に対処するため科学技術を振興し,経済競争力を強めていくことが重要な課題となつている。

以上のような世界の情勢と国内における要請に対処するため,科学技術振興に対する国の役割は最近著しく増大している。

このため科学技術会議や日本学術会議では長期的観点に立つ対策を立案し,政府に答申または勧告を行なつている。

政府も関係予算を逐年増加するとともに,研究活動の活発化,人材の養成,情報機関の整備等に努め,民間企業の研究活動を助成するための諸施策を実施し,大学,国立試験研究機関等の充実整備を図つている。

また民間企業においても研究に資金を投入することは将来の企業発展のための有利な「投資」であるという考え方が普遍化し,研究開発の充実に力を尽し始めている。しかしいずれも先進諸国の状況と対比するとまだ十分とはいえない。

このような情勢のなかで,昭和33年に発表した科学技術白書に引続き,ここ数年間における科学技術の動向をかえりみて,これらの問題点を明らかにし,今後の進むべき方向を考えて見たい。


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