ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第3部   部門別に見た技術の動向
第12章  医療衛生部門
4  公衆衛生
(2)  環境衛生


環境衛生は疾病予防の前提であり,国民生活の基盤であるにもかかわらず,国民一般の無関心と技術の貧困によって,その発展がおくれ,先進諸国に比して低水準にあることはいなめない。最近における都市の汚物(し尿,じん芥)処理に行きづまりをきたし,産業規模の拡大にともなって空気汚染 * ,振動,騒音,水質汚濁等の公害問題 (表3.27参照) が山積し,また食品衛生(食中毒防止)の徹底普及もいまだしの感が深い。

表3.27 公害の発生状況


*ばい煙,有害ガス,とくに放射性物質による汚染

じん芥高速堆肥装置(ダノ式)―コペンハーゲン―

しかし,これらの問題の解決のため「蚊とはえのいない生活運動」を中心とした衛生知識の普及と実践のための地域社会組織運動が展開され,また衛生工学による汚物処理施設(加温式消化装置,じん芥し尿高速推肥化施設等)の試作設置が急がれ,空気汚染や水質汚濁についても真剣にその防止策が考究されいる。とくに,公害の新たな問題である放射性物質汚染については,ビキニ被災時よりの相つぐ諸外国の核実験によって,徐々はではあるがその影きようがあらわれつつあることは重大関心事でなければならない。ビキニ実験直後における降灰等に対する理化学的元素分析は木村,山崎,田島,長沢,河端等の研究室において行われ,その成果は世界の注目するところとなった。その後も空気,食品,土壊,雨水等に対する調査研究が,前記各研究室,三宅,檜山,渡辺,山県,塩川,西脇等,および気象台関係,国,公立試験研究機関によって進められている。近い将来,原子力工業が本格的となり,医・農・工における放射性同位元素の利用もますます盛んになることは明らかであることからしても,環境衛生における障害防止対策はまさに焦眉の急を要するものである。とくに全国的な検査網(モニタリング・システム)の整備強化はゆるがせにできない段階にあるといえよう。

住居衛生の面についても過密住,過密就寝という不健康,不健全な状態がなお多く残されていて,疾病の感染伝播の温床をなしている。

上下水道については,上水道と簡易水道を合せた普及率は,わが国総人口の約30%であって,英95%,米80%,仏60%(いずれも昭和27年度)にくらべて遠くおよばない現状である。下水道にいたっては昭和30年現在10%(昭和25年米60%)に満たない状況で,とくに都市衛生の基本的要件である下水終末処理場を有するのは6都市で,その利用区域はさらにその1部に過ぎない。したがって,上下水道,終末処理場め増設普及が望まれるとともに,既設のものの衛生的維持管理にも一そうの進歩がはかられなければならない。この面では上水道における沈澱池の改良が進められ,下水道には高速散布瀘床法が採用されるなど,衛生工学的改善がみられている。

なお,予防衛生,環境衛生に関する試験研究機関は 表3.28 のとおりであるが,とくに衛生技術者の養成訓練を担当している国立公衆衛生院の業務の重要性が増大しでいる。

表3.28 予防衛生,環境衛生関係試験研究


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ