ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第3部   部門別に見た技術の動向
第12章  医療衛生部門
4  公衆衛生
(1)  予防衛生,

終戦直後には,社会情勢の変化によってコレラ,発疹チフス,痘瘡,日本脳炎,性病あるいは狂犬病等の流行をみたが,防疫体制の整備,予防接種の強化などによって間もなくその脅威から脱することができた。その後多くの急性伝染病は年を追って激減し,目下の防疫対象は赤痢,インフルエンザ,ジフテリア等にあり,またとくに警戒を要するものとしては急性灰白髄炎(小児まひ)が残されている。

結核についてはしばしば触れたように,死亡数の漸減にもかかわらず,患者数減少の速度がいぜんとして鈍いことは,ますます予防対策の重要性を物語るものといえよう。結核に関する研究は,各大学をはじめとして国立予防衛生研究所,財団法人結核予防会結核研究所,あるいは社団法人北里研究所等において進められていて,その研究水準は国際的にも高く評価されている。とくに,結核予防の重要な手段であるワクチンについては,BCGワクチンの凍結乾燥の研究がすでに戦時中より開始され,昭和23年以降その大量生産と接種が行われている。昭和29,30年の台湾,欧州におけるWHO(世界保健機構)主催の効力比較国際実験に参加して,その優秀性が認められたことは特記に値する。

成人病の予防は現段階ではきわめて困難ではあるが,今後の予防衛生の進むべき新たな,しかも重要な分野でもあることが指摘される。なお,予防衛生の基礎的課題である国民栄養の改善,精神衛生あるいは母子衛生(とくに,未熟児対策)の分野においても,それぞれ研究が進められている。とくに,食中毒原因菌の1つであるボツリヌス菌の発見に成功したことは,食品衛生上の大きな貢けんである。

らいに関する研究は古い歴史を有し,その間けん身的な努力が傾けられてきが,なお,らい菌の純粋培養をはじめとして解決すべき多くの問題が残されている。しかし,治療面では化学療法が相当の効果を収め,また治療後の後まひ処置についても研究成果があがっていることは,この宿命病のために光明を点じたものといえよう。さらに今後とも,世界に誇る光田氏反応につづく業績がわが国よりうまれでることが期待される。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ