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第3部   部門別に見た技術の動向
第12章  医療衛生部門

疾病を予防し,治療し,生活環境をより清潔,衛生的に整備することは,国民生活安定の重要な要件であるといえよう。この予防治療,環境衛生の技術は,医学のみならず歯学,薬学およびこれらに関連のある理工学の総合されたものがその基盤となっている。この章においては,主として医学の発展過程を概観し,その発展によってもたらされた医療,公衆衛生技術の現況について展望しようとするものである。

本論にはいる前に触れておきたいことは,医療衛生の国民経済におよぼす作用である。厚生白書は,「疾病は個人にとって最も大きな不幸の1つであり,社会的にも大きな損失をもたらすものである。とくに今日のわが国においては,疾病と貧困の悪循環の傾向が顕著である。」とし,さらに「近年における医学医術の進歩にともなう医療内容の高度化は,必然的に医療費の高騰をもたらし,個人の手のみによって疾病に対処することは次第に困難になってきた。」と指摘している。

衛生統計資料によれば,昭和30年度医療費総額は2,715億円(1人当り3,041円)で,分配国民所得額6兆7,948億円(1人当り7万6,110円)の4.0%に相当し,29年度にくらべて1人当り医療費は10.2%の増であって,所得の伸びをやや上廻っていることが明らかにされている。

すなわち,国民経済における医療衛生技術の立場にはきわめて微妙なものがある。しかし,死をおそれる人間の本能が,限りなき医学の前進を希求してやまないという人類福祉の大局的見地よりすれば,医療衛生技術の進展を一刻もとめることはできない。したがって,この技術の向上と高騰する医療費との間の調整が,より合理的な医療保障制度の確立と公衆衛生施策の充実とにかかっているということが認識されるのである。


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