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第3部   部門別に見た技術の動向
第10章  運輸
2  鉄道輸送
(2)  鉄道の近代化

近年におけるわが国経済の急速なる発展とともに,鉄道輸送が大きな隘路として強く叫ばれるにいたった。これに対し,あらゆる施設と車両は最高度の運用がなされているがすでに限界にきており,輸送力を増強するためには,線路の増設,車両の増備などの量的強化とその近代化をはからなければならない。

また,鉄道は陸上輸送機関として独占的な立場をしめていた時代とは違って,飛行機・自動車という有力な交通機関の発達により近代化への努力をさらに促進せしめられる結果となった。そして,近代化をはかり,経営合理化をなしつゝ輸送サービスを向上する施策の根本は,新技術の採用であり,これがための試験研究に力を注ぐことは,さらに重要となってきた。現在,国鉄でとられている近代化計画はつぎのようなものである。

動力

動力の近代化は,電化・ディーゼル化によって行われている。これによってサービス向上のための無煙化,列車頻度の増加,また経営合理化に役立つ,動力費の節約,速度・けん引力・車両運用効率などの向上,保守費の節減がはかられている。

北陸線で運転されているED70型交流電気機関車

電化については,東海道全線が直流1,500V方式によって完成した。また交流電化は,昭和29年仙山線に50サイクル,単相2万V方式により大々的な試験が行われ,昭和32年10月,北陸本線,米原・敦賀間に60サイクル,単相2万V方式で営業運転に入った。これはわが国の特殊条件を考慮して独自の技術により開発したものが多く,その成果はフランスとともに世界で高く評価されている。商用周波数による交流電化は,従来の直流式にくらべて,変電所および電車線がいちじるしく簡素化されるので,図3.41に示すように投下資本の節約が可能となり,また年間経費においても交流式は直流式の約78%である。しかし,わが国における交流と直流の分野は,将来の技術の進歩を考え,経済性を考慮して早急に決定すべき重要な問題である。

図3.41 1km当り電化工事費の比較

ディーゼル化は,戦後の大型バス,トラック用の自動車ディーゼル機関の発達と並行して採用され,トルクコンバータによる総括制御が行われるにいたって,経営合理化,サービス向上のための有利性を実証しつつある。今後は高速度ないし急勾配線用高出力動車の実現により幹線への進出が期待される。また,ディーゼル機関車も亜幹線,入換用として現在さらに改良が加えられ,今後の近代化によって,逐次この数をましていくであろう。

車両

車両の近代化の焦点は,その軽量化であり,これによって,動力費の節減,バネ下重量軽減による線路保守費の節減,列車編成両数の増加,速度向上などが行われている。客車については,木製客車の鋼体化は完成し,軽量客車はすでに量産に入っている。電車関係では,保安上要望されていた不燃性全金属電車,従来の電車より画期的性能向上をみたモハ90,小田急のSE車も出現し,さらに交直両用電車も試作され試験が行われている。また,客車・電車・気動車の乗心地向上のため,振動,騒音防止に効果の大きな空気バネの採用,冷暖房の改善などの対策がとられている。貨車関係では溶接台伜の採用,2段リンク式バネツリ装置をつけた高速貨車,車体の軽量化と量産化のためにプレス構造とし,また荷役の合理化をはかったパレット貨車が完成した。

線路

列車速度の向上,輸送量増大による通過トン数,列車回数の増加が軌道におよぼす影きょうは大きく,線路容量のゆきづまりとともに,その保守の困難性は輸送の隘路であるといわれるまでになっている。これを解決するため長尺軌条・コンクリート枕木・軌条の弾性締結などによって,線路の強化がなされつゝあるが,これにともなってマルチプルタイタンパー・バラストクリーナ・新型ホツパ車などを使用する保守作業の機械化も行われつゝある。高速運転のため弱点となっている分岐器については目下試作研究が進められている。

輸送方式

旅客輸送については,遠距離・近距離・通勤などの輸送目的に応じた輸送方式をとり,それぞれの経済活動にふさわしいスピーデイなサービスを提供すべきである。このためディーゼル動車・電車の輸送分野に果す役割は大きい。とくに電車化は,機関車けん引列車にくらべて動力を分散することができるので,適当な速度性能がえられ,また列車の分割・併合が容易で旅客の地域的,時間的波動に応じた輸送が行われるため,電化即電車化という形で進められ通勤輸送緩和,あるいは都市間交通の合理化を促進している。また現在計画されつゝある東京・大阪間のビジネス特急電車,あるいは東海道新幹線の構想は輸送方式の改善という点からも十分に検討されなければならない。

貨物輸送については,貨物自動車の発達を考慮に入れた協同輸送,貨物駅の集約,また小口貨物のトーベヤーによる運搬,フオークリフト・コンテナー・パレット・ピギーバックなど荷役機械,輸送具の使用,およびこれに適応した専用貨車の製造など,輸送・荷役の合理化によって貨物の速達化をはからなければならない。

フォークリフトによるコンテナーの積込み

保安設備

列車の高速化,輸送力増強のために運転保安度を向上することは,ますます重要になってきている。自動信号化の促進,一部実施されつつある数停車場の信号機転轍器の操作を1ヵ所に集中して行う列車集中制御方式(C.T.C),車内警報装置,自動列車停止装置,列車無線,災害時における通信連絡のためのS.H.F,V.H.Fによる無線化などに対する要望はさらに一段と高まってくるであろう。とくに踏切については,交通量の増大とともに,その事故件数は年々増加しつつあり,これを防止するために立体交叉にすることは理想的ではあるが,このほかの保安装置の強化も,とくに必要となっている。

その他

上述のほか日常業務の近代化としてつぎのようなことがあげられる。全国的組織をもつ国鉄においては,電話のS.H.Fによる地方との即時通話,電信のテレタイプ化,定例事務の機械化,あるいはカーリターダーの自動制御,携帯無線の活用などによるヤード作業の能率化,変電所の無人化,電車線・線路構造の合理化,保守作業の機械化などが順次行われつゝある。


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