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第3部   部門別に見た技術の動向
第9章  繊維工業
1  繊維工業の性格と技術的背景

繊維製品の価値,需要は,時代,生活環境によって異なっているとともに,流行を追い,流行をつくり出す人間性に深く根ざしている。したがって,繊維工業の目標も,その時代の人々の嗜好に応じた製品を供給することであり,売行きの良否が技術のバロメーターになる場合が多く,商業的,経験的性格の度合の高い産業であるという特色をもっている。とくに天然繊維の場合,原料繊維の産出が,地理的,気候的条件に制約され,品質は天与のもので加工に限界があるため,天然繊維の加工をもっぱらとした繊維技術は経験的技術の域から抜けきらず,合成繊維が出現してはじめて体系化されたといえる。

一方,繊維原料の合成成功,各種紡糸技術の進歩は,化学工業技術との結びつきの緊密性を示しているが,またその工業化は機械技術に依存するなど,今日の繊維技術は,天然繊維に関する経験的技術に,化学工業技術,機械技術を加えた総合的技術としての性格を生みつつある。このような基盤から数々の新繊維が生れつつあるが,天然繊維自体も旧態にとどまってはおらず,綿,麻のセルローズに化学結合を利用して,合成繊維の長所をもあわせもたせようという研究が進められるなど,既成概念から脱皮しようとする努力が続けられている。さらに,紡績,編織,染色などの加工技術面でも,漸次新繊維に適した技術を,綿,毛における経験を基盤にして確立しつつある。

このような原料繊維に適合した加工技術の研究においては,各用途に応じて繊維製品に要求される性質を究明し,どのように加工すればその要求をみたしうるかという,いわゆる消費科学的配慮が必要とされてきている。

現段階では,どんな繊細でもそれぞれ一長一短があるので,他の繊維の混用により短所をおぎない,より完全な製品とするため,混紡,交織の採用が世界的なすう勢となっているが,これも消費科学面の大きな課題である。


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