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第3部   部門別に見た技術の動向
第6章  機械工業
5  わが国機械工業技術の振興
(4)  研究

こんご,国民経済のなかで担う役割が次第に高まってゆくことの期待されているわが国機械工業の発展のためには,いつまでもその技術的基盤を安易に外国技術に依存していることはきわめて不利なことといわなければならない。とくに輸出産業として伸びてゆくために必要な,輸出機械の機種別構成の高度化にとって,自主的研究による技術の向上は欠くことのできない要件である。また技術進歩のためにはその技術を需要し,技術進歩に刺げきを与えるだけの質的にも量的にも大きな市場が必要である。

4節で述べたわが国機械工業各部門のうちで,世界的にも一応の技術水準にあるグループについても,たとえば,船舶,鉄道車両,ディーゼル機関,水力機器,光学機械などは,戦前から技術進歩に対する国家的需要によって研究が行われ,その基盤が培われてきた。家庭用ミシンも軍事技術の転換に負うところが大きかった。繊維機械はやや事情を異にするが,戦前わが国繊維工業が激しい国際競争に耐えて世界の市場に進出するため,その必要とする優秀な機械設備を常に国内繊維機械工業に求めていたことが繊維機械の技術向上に貢けんした。さらにわが国造船工業は戦前の技術的基盤のうえに,戦後十数次にわたる計画造船という国家的支柱に支えられた市場を背景にして,革命的といわれる各種新技術を吸収し,設備の改善や研究努力を続け得たことが,今日,造船工業発展の導因をなした。

すなわち,これらの例は,一般に後進性を否み得ないわが国機械工業製品のなかにおいても,技術進歩に対する集中的な需要と刺げきが与えられ,自主的研究が活発に行われ得た場合には,二流の技術を保持し得ることを物語っている。外国技術導入はわが国機械工業技術の一般的進歩に貢けんした反面,国産技術進歩に対する需要と刺戟を奪い,わが国産業全般に自主的研究の意欲を失わせたことは否むことのできない事実である。すなわち外国技術導入と国産技術の研究不振とは一部において悪循環を示しはじめている。このような悪循環から脱却して,各部門について自主的研究による技術を育てることが,わが国機械工業振興にきわめて緊要なことである。

わが国で開発した円筒研削盤

従来わが国で後進性のめだっていた工作機械工業には,外国技術導入がほとんど行われず,技術進歩のために3年間に約3億円の国家的助成が行われた。

その結果十分とはいえないまでも,高精度,高能率のボブ盤,6軸自動旋盤,光学式治具中ぐり盤,精密自動旋盤,まがり歯傘歯車歯切盤などのほか,自動定寸,オートサイクルの円筒,平面,内面研削盤など,世界水準に1歩1歩近づく成果をあげている。またいわゆる機械加工のオートメーションとして注目されているテープコントロールの工作機械は,中小規模生産に適したものとして世界的に研究されているが,わが国でも国立研究機関を中心にして独自の研究がなされ,世界の進度に大きなおくれをみせず成功裡に開発が進んでいる。

これらのことは,わが国機械工業技術がこんご全面的に外国技術導入に依存することはやめ,外国技術導入と国産技術の研究不振との悪循環を,少なくとも部分的にでも断って,国産技術進歩のための刺げきと市場を積極的に造成することが有意義であり,かつ適当な体制と助成策が得られれば,わが国にもそれだけの技術開発力を有していることを示唆しているものである。

わが国機械工業の生産体制の改善,基礎分野の設備近代化,技術向上および工作機械技術の進歩などについては,一部すでに具体的に推進されており,こんごともこの面の努力をいっそう強化する必要があるが,これと同時にわが国機械工業技術の真の高度化のため,研究機能の充実による自主的な技術の進歩,技術開発力の涵養が強力になされなければならない。

このような観点から,つぎに機械工業技術振興のために推進すべき若干のものを述べてみる。

生産加工標準設定のための研究

機械工業全般にわたり,大,中小企業を問わずもっとも共通的な技術である切削,研削なとの生産加工の各種条件や基準は,これまで多く経験的にきめられている。これを理論的に解明して標準化し普及することは,わが国機械工業全体の加工能率を飛躍的に向上させるうえにきわめて効果的な方法であり,しかもこんご次第に一般化するであろう機械工業の自動化,オートメーション化を有効ならしめるうえに欠くことのできないことである。

重要技術開発

材料,加工面の技術進歩に対応して,これらの成果を吸収,活用すべき設計技術に関する経験の蓄積や開発力の涵養をはかる必要がある。このため,たとえば,近い将来の原動機として応用領域がきわめて広く,世界的に注目され研究されている各種ガスタービンや,技術革新のホープとされているオートメーション関係の基礎技術,あるいは言語的に不利な条件下にあるわが国にとって有意義な電子翻訳機,その他当該部門の開発,技術進歩によって多くの関連部門の発展,技術向上に貢けんするような重要技術分野において,強力な国家的助成あるいは組織化のもとに,開発を推進する必要があろう。

研究機能の充実

わが国では全産業を通じて一般に研究機能が十分であるとはいえないが,とくに機械工業技術に関する研究機能は甚しく弱体である。これまで述べてきたように,こんごわが国において機械工業の果すべき役割がますます重要さを加えつつあることにかんがみ,生産加工標準の設定,重要技術開発その他多くの基礎的,先端的な技術上の課題を解明するため,大学,国公立,民間における機械工業関係の研究機能の強化,充実を,担当分野に応じてはかることが急務である。

これとともに民間産業においても,外国技術導入依存度を減じ,輸出産業として大きく発展することを目標に,自主的な研究,開発の推進に意欲をもって新たな努力を注ぐべきである。このため協同研究なども真剣にとりあげる必要があろう。とくに研究組合のような組織は,一般に研究機能の低い中小企業の技術進歩の有力な支柱としそ育成することが望ましい。

このほか企業における計測標準の維持を容易ならしめること。JISの普及徹底をはかることなども地味ではあるが是非とも推進する必要があろう。


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