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第3部   部門別に見た技術の動向
第6章  機械工業
3  機械工業における技術進歩の動向
(3)  加工技術

機械工業製品の性能本コストを実質的に左右するものはいわゆる生産技術であり,その中心左なるものは加工技術である。加工技術の優劣は一般的には設備,すなわち金属加工機械や工作機械の精度,能率,信頼性などによる,したがって機械工業にとって設備の更新,近代化は大きな関心事であり,その設備を供給する工作機械工業は一国の基本工業とされている。このため,一流工業国はみなその育成と技術向上に努力を払い,優秀な工作機械工業をもっていて,たえず研究によって新機種の創出,精度,能率の向上を図っている。生産技術はこの加工設備の進歩と,実際的製作経験の蓄積が相伴って向上するものである。

精 度

工作機械の精度に関する規格として従来から広く採用されているシュレジンガー規格にかわって,最近その半分の許容誤差しか与えないサルモン規格が世界的に使われはじめているが,これは工作機械工業の技術の向上を示すとともに,需要部門たる機械工業全般の加工精度が向上した結果,加工設備に対する精度上の要求が高度化したことを示すものである。

能 率

戦後の機械加工にみられるいちじるしい傾向は設備の自動化,連続化である。自動化は精度的にも効果をもたらすが,その主な目的は加工能率の向上である。製品,部品の量産と均一性への要求が高くなるにつれ,従来の汎用機にかわって機械設備の主要部分に専用工作機械,多軸機械が使われるようになり,ついでこれら専用機,多軸機をトランスファー(移送)機構によって結んで加工工程を連続化したトランスファーマシンが登場してきた。トランスフファーマシンははじめ,自動車のエンジンブロックの加工に使われ,後には後車軸函,クランクシャフト,ピストンなど各種部品の加工にまでおよび,米国などでは多くのトランスファーマシンのラインが鋳造工程や組立工程と有機的に結びついて,長大な生産工程を形成するものもあらわれ,機械加工のオートメーションとして革命的な威力を発揮するようになった。またトランスファーマシンは自動車関係のみでなく,汎用モーター,ミシン,カメラ,小型発動機などの各種部品の機械加工にも広く採用されるにいたっている。

自動車エンジンブロック加工用トランスファーマシン

トランスファーマシンとは別に,機械加工の自動化として自動旋盤や自動做旋盤も急速に普及し,またいわゆる電子頭脳を工作機械に結びつけたテープコントロールの工作機械が,機械加工のオートメーションとして実用化してきた。これは機械部品の設計図のカーブや熟練工の加工技術を読みとって,磁気テープや穿孔テープに記憶させ,後再生して機械に指令し,図面や熟練工どおりの加工を行わせるもので,はじめ比較的小量生産で均一な精密加工を必要とする航空機部品のフライス加工などに使われていたが,のち次第に一般化してきた。このテープコントロールの工作機械は,トランスファーマシン型のオートメーションが多量生産に適するのと異り,中小規模の生産に適し,かつ多くの利点をもった機械加工のオートメーションとして注目されており,各国とも新しい機種に応用すべく開発に努力しているまた戦後の精密工具,超硬工具のめざましい発達が,機械加工における高速切削,高精度加工の飛躍的な向上をもたらし,製品,部品の大量生産,精度,均一性確保に大きく貢けんした。

加工方法

大量生産,精度および能率の向上,材料,工数の節減などに対する強い要請はまた,機械工業における加工方法にも大きな変革を与えつつある。超仕上加工,放電加工,超音波加工,電解研磨,ケミカルミーリングなどといった新しい技術はそのあらわれであるが,注目すべき傾向としては最近機械加工の方法が切削加工から非切削加工へと進んできたこと,切削加工でも一般に旋削のウエイトが減じて研磨加工のそれが次第に増してきたこと,および機械構造物の組立加工に溶接が圧倒的に進出し,部品,装置の加工にまで広く採用されるようになったことである。

従来,切削加工によっていた分野に,近年精密鋳造,型鍛造,プレス,引抜き,押出し,転造などの非切削加工によるものが急速に進出じてきた。以下にその代表的なものをあげるが,すべて大量生産に適し,高精度,均一性が得られ,しかも機械加工を省略し得る点ですぐれた技術として広く応用されている。

シェルモールド法は,金型のかわりに樹脂と珪砂の混合物を使用して複雑な形の鋳型を量産し,しかも製品は鋳造仕上のまま機械部品となるため,高い能率が得られる。ロストワックス法は機械加工の難しい耐熱鋼,特殊鋼によるジェットエンジンの部品,その他の.精密機械部品の製作に利用されている。ダイキャストはとくに薄肉強靭性を要求されるアルミ合金,亜鉛合金などの非鉄金属の精密鋳造法であるが,最近自動式の高圧鋳造機,做型彫機械,低周波電気炉などの進歩によって,自動車,電気機器,産業機械,カメラ,日用品などの部品製作に広く利用されるようになった。粉末冶金は溶融状態を経ないで金属や非金属を固体に成形する技術で,合金とならない金属同志の結合や,金属と非金属の結合体ができる。これは超硬工具,磁性材料,電気材料,軸受合金など粉末冶金独自の分野のほか,最近ではとくに鉄系の粉末冶金が,従来切削加工,精密鋳造によって造られていた機械部品製造の分野に利用されつつある。このほかプレスの加工速度,精度も,いちじるしく向上し,航空機,自動車,電気機器,産業機械をはじめ,あらゆる機械工業分野に進出している。

このような精密鋳造,その他非切削加工の進歩にともない,切削加工のなかでも研磨加工のウエイトが次第に大きくなってきた。このため,機械工業の設備も旋盤,フライス盤に対する研磨盤の比率が大きくなってきている。プレス加工とともに溶接加工の進出も機械工業全分野に拡大した。とくに電気溶接が高能率で,工数,使用材料の節減などコストにおよぼす効果がきわめて大きいため,船舶,航空機,自動車,鉄道車輛,ディーゼル機関の架構,産業機械,化学装置の組立などに広く採用され,最近は厚板に対する工作も可能となってその効果がさらに大きくなってきた。船舶では全接合線の90〜95%まで溶接によっている。また自動溶接機,溶接棒,自動切断機など溶接設備の技術進歩と,不活性ガスなど特殊フンイキ中における溶接技術の進歩がめざましく,化学装置に必要なステンレス鋼や特殊鋼,あるいはアルミニウムなどの軽合金の溶接にその応用範囲を拡大しつつある。

 以上に述べた設計,材料,加工関係の技術のほかに機械工業製品の性能,コストに大きな影きようをおよぼす技術的要素として,生産技術に属するところの,生産工程を適当に編成し,運営する製造設計および生産管理に関する技術がある。たとえば試作的製品はうまくできるが,量産ベースに乗せると性能や均一性に劣るなどといった例はこの技術の劣勢を物語るものである。製造設計は設計,材料,加工に関する技術のバランスのとれた進歩と製作経験の蓄積とが総合されて進歩するものであり,生産管理技術は機械工業に限らず測定,計測技術あるいは品質管理,検査技術の発達とともに戦後急速に進歩してきた。


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