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第3部   部門別に見た技術の動向
第6章  機械工業
2  機械工業の生産構造と技術の特徴

機械工業の製品は,それぞれ特徴的な形状,材質をもった数多くの部品や材料が,複雑に組立てられることによって作られており,前述したように付加価値率がきわめて高い。機械工業がこのようなアセンブル工業であり,かつ製品の付加価値率が高いということは,生産過程において技術の寄与する機会が多く,したがって技術の優劣が製品の性能,コストなどに端的に現われることを意味している。このため機械工業は技術的に広い基盤と厚い蓄積のある国においてとくに発展する。これは機械工業の生産構造が部品,材料工業を基底に,完成機械工業を頂点とするピラミツド型をなしていることにもよる。このような生産構造であることは,重要な部品,材料を供給する中小機械工業の技術の優劣が,一般的に,完成機械工業の技術とまったく同じ質的重要さをもって,製品の性能,コスト,耐久性に影きょうすることを意味している。中小の部品工業がこのように,生産系列のなかで技術的に重要な地位を占めているところに,機械工業技術の特徴がある。この点,他の産業の大,中小企業がおおむね同一製品を生産して競合的,並列的関係にあることと甚しく異っている。

したがって機械工業の発達のためには,つねに新しい科学技術の成果を吸収して研究を行い,独創性ある製品やプラントをうみだす能力と意欲をもった完成機械工業と,そのような先端部門の発展をより可能にする基礎的な部品,材料工業との,バランスのとれた技術進歩がともなわなければならない。

一般に良い製品を低いコストで生産することが製造工業における技術の目標であり,そのためには,同一製品や同一系統の製品をできるだけ多く生産することによってより可能である。機械工業製品には量産機種と1品生産的機種あるいはプラント類があるが,量産機種はもとより寡産機種であっても,できるだけ同一製品を多く作るとか,構成部品や材料をできるだけ標準化して量産部分を多くするとか,あるいは製作経験を豊富に蓄積することが,技術向上のうえからも,性能,コストの点からもきわめて望ましい。すなわち市場が大きいということは,とくに機械工業の技術進歩のもっとも豊かな土壤というべきものであって,研究はその肥料であるといえよう。研究という肥料も豊かな土壤に施されてこそ十二分に効力を発揮し,土壤もつねに肥料を与えられてこそ肥沃さを保つことができる。機械工業において,完成機械工業部品工業のいづれを問わず,生産分野の画定による専門化,標準化,少機種多量生産などによって製品,部品の安定した市場を確保することが,製品,部品に対する研究密度を高めるみちであって,技術進歩にとってもっとも必要な条件である。

欧米先進諸国の機械工業の場合,その生産構造は長い発達の歴史の過程において形成され,製品や部品の標準化,生産分野の整理などといった社会的分業が健全に進められてきたため,中小の部品,材料工業が安定した市場条件と経営のもとに,つねにすぐれた技術を培養しつつ完成機械工業の生産系列に参加している。しかも機械工業全体として,自動車,産業機械など国民の生活水準に密接に結びついた。民需に裏づけられたものを中心として発展してきた。このような基礎部門の健全さと技術の高さが,大きな民需に支えられた先端部門の,独創を尊ぶ研究,開発力とあいともなったことが,戦後,先進諸国における機械工業の経済的,技術的高度化をきわめて早いテンポで可能にした要因である。

わが国の機械工業は先進諸国にくらべきわめて短期間に成長してきたこと,および一般的にいって,船舶,鉄道車両などの完成機械中心に,軍需を背景として即効的に育成されてきたものが多いため,機械部品,測定器,機械要素,金属加工機械,工作機械などの基礎部門や民需用機械は2次的に扱われ,年産構造上,体制的にも技術的にも弱体のままとりのこされてきた。 表3.32 に示すように,わが国機械工業には国際的にみて,中小規模のものがきわめて多く,基礎部門の平均規模はさらに小さい。わが国のように生産の専門化や製品,部品などの標準化が進んでいない場合には,とくに中小企業では製品に対する研究や技術向上,あるいは設備近代化が行われ難く,中小企業則低生産性,製品の低品質ということになり易い。アセンブル工業の性格をもっ機械工業においては,基礎部門の脆弱性は製品の性能,コストに直接的に悪影きょうを与えることは前述したとおりである。

こんご国内産業としてさらに発展するとともに,輸出産業として国際市場に大きく進出すべき役割を担うわが国機械工業にとって,完成機械工業の技術開発力の不足と,基礎部門の技術的劣勢は克服しなければならない最大の欠陥である。

表3.32 機械工業規模別従業者構成の比較


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