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第3部   部門別に見た技術の動向
第5章  金属工業
3  軽金属

軽金属としては,アルミニウム,マグネシウムが工業的に重要で,とくにアルミニウムは,「20世紀の金属」として,鉄に次いで,金属材料の主力となっている。アルミニウムが金属として工業的に生産されるようになったのは20世紀に入ってからであり,これを可能にしたのは,無機化学,電気化学の進歩である。この点鉄,銅,亜鉛などの古くから人類に使用されてきた金属とは異なり,アルミニウムの生産技術は科学の進歩によって確立した近代技術であるという特質をもっている。生産冶金技術では,今日世界的にボーキサイトを原料とし,バイヤー法によるアルミナの抽出精製と溶融塩電解法による金属還元とを組合せた生産方式が確立し,これを根本的に変更するよう新技術はあらわれておらず,技術の努力はこの生産方式の改良に向けられている。世界的にアルミニウムの需要は,従来の航空機材料から,建築,船舶,車輛などの構造材料,日用品,家庭用品に重点が移りつつあり,消費量は増加の一途をたどっている。これとともに鋼材,合成樹脂との競争がはげしくなり,加工技術の面ではアルミニウムの特性を生かしたこれらの多様な用途に適した合金,成型加工などに技術的な努力がはらわれている。

図3.28 アルミニウム生産における原料原単位の推移

わが国のアルミニウム工業はいうまでもなく航空機工業という軍需市場によって,確立し,発展したが,戦後はこれらの市場は全くなくなり,日用品,家庭用品を主体とする国内市場の拡大と海外市場への進出をせまられた。幸にも世界的にアルミニウムの消費は急速に増大し,しかも,産業の独占度が高いため国際市場価格が安定しているという事情と東南アジアからボーキサイトの安定的供給が確保しうるという原料条件に恵まれて,企業の努力はコストの国際水準への切下げに向けられた。このため今日までに生産冶金技術の進歩は目ざましく,労働生産性の点をのぞけば,コスト,品質の両面で国際水準に到達するという成果をあげた。これは,非粉砕非焙焼法,低モル比操業をはじめとする操業法の改善,横型回転式溶解槽,多重効用蒸発罐の採用,電解炉の構造改良など地味ではあるが,着実な技術向上の積みかさねによってもたらされた。

加工技術では,ストリップ・ミル,高性能アルミニウム箔圧延機などの新鋭加工装置が用いられるよ,うになり,また溶解鋳造方式も改良され,面目を一新しつつある。

しかし,世界的に,アルミニウム製錬工場は年間生産能力50〜100万トンヘとますます大規模化する方向にあり,工場規模の小さいわが国では,その規模の差異のコスト面への影きょうは大きくなり,また,今後の生産能力の増大にあたっては,アルミニウム製錬に不可欠な豊富な安い電力を得ることが困難になっている。

したがって,今後製錬では液体を扱うアルミナ工程のオートメーション化,大型電解炉への転換などコスト切下げへのいっそうの技術的努力が必要となろう。また加工では,加工機械の高性能化とともに,溶接,表面処理など関連技術の向上,新合金の開発などが重要な課題となろう。

戦後,マグネシウムは航空機の生産禁止によって,その市場のほとんどを失い,しばらくの間生産は中止されていた。ところが,チタンをはじめとする新金属の登場とともに,マグネシウムはそれらのすぐれた還元剤として,重要な位置におかれることになった。この新しい用途を目ざして,戦前の生産方式とは異り,国内に豊富に存在するドロマイトを原料とするピジョン法(真空蒸溜法)による生産が開始された。さらに,チタン製錬の本格化にともなって,その還元工程で生ずる塩化マグネシウを再製錬することが注目され,電解法による生産がチタン工業に関連して行われるようになった。

現在生産されているマグネシウムは生産冶金技術の進歩によって,戦前より純度がいちじるしく向上したため,腐食に弱いという従来のマグネシウムの欠点がかなり克服されてきた。そこで,新金属の還元剤としてばかりではなく,軽量構造材料としてあたらしい用途を開くことが重要となってきている。このためには,合金,成形加工の面での研究に力を注ぐことが必要であろう。


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