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第3部   部門別に見た技術の動向
第5章  金属工業

産業の発展にともなって,金属材料の使用量は急速に増加し,その使用品種もますます多様化してきている。とくに科学技術の進歩は金属材料の品質の向上をはげしく要求しつつある。しかしながら,一方良質の金属資源は減少し,ますます低品位の原料に依存せねばならなくなり,また金属生産にとって重要な原料であるエネルギは量質ともに劣化しつつある。このように金属工業は需要面では製品の質的高度化と量的増大をますます要求され,一方原料面ではその条件はますます悪化してゆくという状態におかれている。したがって,世界的に金属工業における技術は原料条件の悪化を克服しながら,よりよい性能の金属材料をより多く供給してゆくことを目ざして発展しつつある。

わが国の金属資源は,金属鉱業の項で述べたように,賦存規模が小さく,質も良好ではなく,量も乏しいので,金属工業の原料である金属鉱石は亜鉛を除いては,輸入依存度がきわめて高い。したがって長期間にわたって安定した品質の鉱石を入手できないという不利な条件におかれている。

また重要な原料であるエネルギでは,戦前は有利であった電力も戦後は供給条件が悪くなり,石炭も国内はもちろん,海外においてもその価格は必然的に上昇しつつある。次に企業規模,工場規模の面では,金属工業も,例外なくわが国の産業発展過程の特質を反映して,海外先進国にくらべて小規模であり労働生産性,エネルギの使用効率,原料の完全利用の点から不利となっている。

戦前金属工業は軍需工業として市場の点では,恵まれた位置にあったが,戦後は国内市場が拡大したとはいえ,金属にとって重要な市場である機械工業が弱体であるため,けっして安定したものではない。海外市場への進出はかなり大きなものではあるが,これも安定したものではなく,はげしい競争にさらされている。このような戦後の市場条件は必然的に国際水準へのコスト切下げと品質の向上を要求しており,このことが戦後の技術の重要な発展要因となっている。しかし一方市場が不安定であることは企業が長期的な視野に立って,自力で技術を発展させる努力を減殺させるという反作用をもっていることも否定できない。

このようにわが国の金属工業は個有の不利な経済条件にあるが,それにもかかわらず,戦後の技術の進歩はいちじるしいものがあり,不利な条件を克服する努力は続けられている。

金属工業の技術は,大きく2つに分けて考えることができる。その1つは,金属分を含む原料から金属を分離し,精製し,純金属をつくる技術である。これは一般に製錬技術とか生産冶金技術とかいわれている。もう1つは,生産された金属を市場の要求する品質,形状の金属材料とする技術で,製造冶金技術とか加工冶金技術とかいわれている。

生産冶金技術は高温化学反応や電気化学反応を利用して,原料中の金属成分を金属としてとりだし,不純物を除去する還元分離操作が主体をなしている。

これは反応装置を用いるもので,資本集約的な特質をもち化学工業の技術と共通した性格をもっている。したがって,生産冶金技術の進歩は反応装置の進歩と操業方法の進歩という形をとってあらわれる。

加工冶金技術は主として金属の粗材を機械を用いて塑性変形する,操作が重要な割合を占め,労働集約的な性質をもっており,機械工業の技術によく似た面が多い。したがって加工冶金技術の進歩は主として使用される機械の進歩という形をとっている。


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