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第3部   部門別に見た技術の動向
第4章  電力事業
1  電力技術の3目的
(1)  電力需給の見通しと問題点


産業規模の拡大と国民生活の向上にともなうエネルギ需要は,今後増大の一途をたどることが予想され,その安定した供給を確保することは,わが国の今後の経済成長をばかるうえに基本条件として考えられねばならない重要な問題である。

なかんずく,電力に対する需要はとくに増加がいちじるしいものと見られ,過去の実績によれば,昭和25〜31年度において,電力以外のエネルギ需要の年平均増加率が7.9%であるのに対し,電力の場合は10.2%を示している。また将来についても,新長期経済計画の資料によれば,電力以外のエネルギの推定増加率が7.O〜4.7% * であるのに対して,電力は8.9〜5.8% * の増加率が推定されている。このように,エネルギ需要は2次エネルギの電力ヘ移行する傾向がみられ,昭和31年度実績で全エネルギの35.1%を占めていた電力は昭和50年度においては,40.2%の割合に上昇するものと想定されている。

すなわち,今後のエネルギ供給における電力の受けもつ役割は大きく,この期待にこたえるためにも,その量的確保をはかることが必要であり,こゝに第1の技術に対する課題がある。

わが国は適当な雨量と急峻な地形のため豊富な水力資源に恵まれ,従来は比較的簡易低廉に建設できる流込式水力の開発を主とし,一方火力発電は水力発電の渇水時における補給的役割を果させるいわゆる水主火従の開発方針がとられていた。

しかしながら,比較的豊富であると考えられていた水力資源も相当に開発が進み,さらに用地補償問題や他種利水との競合などにより制約をうけるため,電力需要の急増に応ずるためには,建設費が少く,建設期間の短い火力への依存度を高めるにいたった。


*年平均複利増加率で,前の数値は昭和31〜37年度,後の数値は昭和31〜50年度におけるものである。

さらに最近は,火力発電技術の急速な進歩により,高温,高圧の高能率大容量火力が出現し,大巾に燃料費と人件費を低減せしめたので,火力発電原価は急速に低下し,これまで有利であった水力発電原価とほぼ同程度となってきている。

この高能率新鋭火力は,高負荷率のベースロード運転 * によって,はじめて,高能率が発揮されるものであって,ピークロード * の供給をも受け持たせるといちじるしくその機能を減じ不経済である。したがってピークロードに対しては即応性のある貯水池式ないし調整池式水力で分担せしめる火主水従の併用方式に転換しつゝある。

すなわち,将来の電カエネルギの量的確保は,新鋭高能率火力発電によってベースロードを,貯水池式ないし調整池式水力でピークロードを分担せしめる開発方針のもとに進められるであろうが,こゝに次のような問題点が考えられる。

1)河川勾配が急傾斜のため,流込式水力に恵まれているわが国の自然条件は貯水池式発電には必ずしも有利であるとはいえず,かつ,山間避地の地においても,耕地の開かれているわが国の社会条件からみても,大貯水池式水力として優秀な地点は将来きわめて限定されるであろう。
2)水力資源の有効利用をはかるため,河水の渇水量を使用水量の規準としているごとき,既存の小容量流込式水力発電所などを潰し,河川一貫開発の観点から大容量の貯水池式または調整池式の水力地点に再開発する必要が生じてこよう。
3)水力資源の活用は,河川の上流地域の開発にとゝまらず,ごく下流におけるエネルギをも利用するため,低落差発電所の開発を考究すベきであろう。かかる地点の発電所は,農業用水,工業用水よおび洪水防ぎよなどの他種権益の関連が密接であるので,なるべく総合開発方式をとり,電力としての経済価値を持ちうることが必要である。
4)火力発電が増大する結果,石炭消費量はぼう大となり,将来の火力発電用燃料として,石油に依存する部分が大きくなることが予想される。
5)国内石炭資源の活用のため,産炭地における低質炭の積極的利用をはかるため,低質炭利用発電所に重油を燃焼する技術を確立する必要があろう。
6)電力供給の増加をはかるにあたって輸入石油に依存する必要性が高くなることが予想されるため,原子力発電の実用化が要請されてくる。現在,原子力発電はいまだ技術的に確立されていないが,いずれ将来は新鋭火力なみ,あるいはこれ以下の発電原価までコストダウンすることは必至である。

* 負荷曲線



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